令和2年8月の第54回気象予報士試験の学科一般知識の問題を、晴野(はれの)だったらこう解く!という考え方や解き方をまとめています。
あなたが次に似たような問題を解く時、「ヒント」となるような内容を目指してます!!!

この記事は、令和2年8月の第54回気象予報士試験の学科一般の問題と解答を持っている人向けの内容です。
※私個人の試験問題を解く時の思考例です。(気象業務支援センターとは関係ございません。)
もし第54回気象予報士試験の学科一般の問題と解答を持っていなければ、まずこちらでダウンロードしてください。
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目次
問1:大気の構造についての問題
図は標準的な大気における気温の鉛直分布を示したものである。
図A~Dの矩形で示された高度における気層の特性について述べた文(a)~(d)の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の①~⑤の中から1つ選べ。
(a)気層Aでは、大気が波長の短い紫外線などを吸収して、高度が高いほど気温も高い。
(b)電離層は紫外線の作用により形成され、その大部分は気層Bの中にある。
(c)気層Cのオゾン数密度は、大気層全体の中でも最も大きい。
(d)気層Dにおける気温の平均的な鉛直分布は、放射のバランスと対流による大気の鉛直混合および水蒸気の凝結過程によりほぼ決まる。


答えは・・・③!
(a)正
(b)誤
(c)誤
(d)正

一つずつ説明しますね!
【(a)気層Aでは、①大気が波長の短い紫外線などを吸収して、②高度が高いほど気温も高い。】について
気層Aは、熱圏です。
熱圏では、紫外線によって電子が原子核から離れる「電離」が起こっています。
この「電離」が起きると気温が上昇するので、上層ほど高温になっています。

だから①も②も正しい!
(b)①電離層は紫外線の作用により形成され、②その大部分は気層Bの中にある。
電離層は紫外線によって作られるので①は正しい。
その電離層は熱圏にあるので、②は誤り!
(c)気層Cのオゾン数密度は、大気層全体の中でも最も大きい。
気層Cは成層圏界面です。
オゾン数密度が一番多いのは、成層圏の中層だから誤り!
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(d)気層Dにおける気温の平均的な鉛直分布は、放射のバランスと対流による大気の鉛直混合および水蒸気の凝結過程によりほぼ決まる。
対流圏の気温分布のしくみですね。
これは正しい!

問2:気体の全圧・分圧
気温、気圧、相対湿度が、それぞれ27℃、1008hPa、50%の大気における乾燥空気の分圧として、最も適切なものを、下記の①~⑤の中から1つ選べ。ただし、水蒸気の気体定数を461Jkg-1K-1、27℃における飽和水蒸気密度を26gm-3とする。
①1005hPa
②1000hPa
③995hPa
④990hPa
⑤985hPa
答えは④の990hPa!

乾燥空気の分圧は?という問題なので
【水蒸気を含む空気の気圧(全圧)】から【水蒸気の気圧(分圧)】を引けばいいんですね!
条件はこれ
- 水蒸気の気体定数→461Jkg-1K-1
- 27℃における飽和水蒸気密度→26gm-3
- 相対湿度→50%
水蒸気の気圧を求める式は、普通の気体の状態方程式でOK。
p=ρRT(気体の状態方程式)
- ρ:気体の密度→13gm-3(26gm-3の50%)
- R:気体定数→461Jkg-1K-1
- T:絶対温度→(27+273)K
上の条件から
水蒸気の気圧=13gm-3×461Jkg-1K-1×(27+273)K
=13 g/m3 × 461 J/kg・K × ( 27 + 273 ) K
=13 × 461 × 10-3 × ( 27 + 273 ) J/m3
=1797.9 J/m3
水蒸気の分圧は、1797.9 Pa なので
約 17.979 hPa = 約 18 hPa です。
【水蒸気を含む空気の気圧1008hPa】から【水蒸気の分圧18hPa】を引くと・・・

1008hPaー18hPa=990hPa!

「一般気象学(第2版)」 p42〜
問3:空気塊の温位と相当温位
図は、ある未飽和の空気塊を、1000hPaの高度Aから断熱的に持ち上げた時の温位の高度変化を、周囲の大気の温位の高度分布とともに、横軸を温位、縦軸を気圧として示したものである。
空気塊は高度Bで飽和し、高度Cで周囲の大気と温位が等しくなっている。

この空気塊に関する次の文(a)~(d)の正誤について下記の①〜⑤の中から正しいものを1つ選べ。
ただし、空気塊は周囲の大気と混合しないものとする。
(a)空気塊の温度は、高度Aから高度Bまで乾燥断熱減率にしたがって下降する。
(b)高度Aと高度Bにおける空気塊の水蒸気の混合比は同じ値である。
(c)高度A、高度B、高度Cにおける空気塊の相当温位は全て同じ値である。
(d)図の範囲内では、高度Cより上の高度で空気塊は下向きの力を受ける。

答えは④の「(d)のみ誤り」!
高度Aから高度Bまでは、温位が変化なしなので、水蒸気の凝結はありませんね。
だから(a)の「空気塊の温度は、高度Aから高度Bまで乾燥断熱減率にしたがって下降する。」はその通りです。
高度Aから高度Bまでは、温位が変化なし→水蒸気の凝結はなし→空気塊の水蒸気の混合比は同じ。
だから(b)の「高度Aと高度Bにおける空気塊の水蒸気の混合比は同じ値である。」はその通り!
任意の空気塊の相当温位は、水蒸気の凝結前でも凝結後でも変わらないし、なんなら水蒸気の凝結の有無なんて関係ないですよね。
だから(c)の「高度A、高度B、高度Cにおける空気塊の相当温位は全て同じ値である。」はその通り!
高度Cより上では
空気塊の温位>周囲の空気の温位
なので、空気塊は↑向きの力を受けるはず!
だから(d)の「図の範囲内では、高度Cより上の高度で空気塊は下向きの力を受ける。」は間違い!

問4:温度風の関係
図は、北緯30°に位置する点Aおよび点Bの、850hPa面と500hPa面における風を表したものであり、各図の風ベクトルは同じ縮尺で描いてある。
850hPaでは、点A、点Bともに同じ強さの南風である。
点Bにおける850hPaと500hPaの間の平均気温(K)の温度勾配の大きさは、点Aの温度勾配の大きさの半分で、勾配の向きはいずれも同じである。
この時点Bの500hPaの風ベクトルとして正しいものを下図の中の①~⑤の中から1つ選べ。
ただし、ここでは温度風の関係が成立するものとする。

答えは②!
求めるのは点Bの500hPaでの風ベクトル。
与えられた条件は
- 850hPaでは、点A、点Bともに同じ強さの南風
- 850hPaと500hPaの間の平均気温の温度勾配は、点Bは点Aの半分
- 点Bと点Aの平均気温の温度勾配の向きは同じ
- 温度風の関係が成立する
850hPaと500hPaの間の平均気温の温度勾配は、点Bは点Aの半分なので…
点Bの500hPaでの温度風の強さは、点Aの500hPaでの風の半分。
点Bと点Aの平均気温の温度勾配の向きは同じなので…
点Bと点Aの温度風の向きは同じ。

ホドグラフで温度風(ベクトル)を描いてみましょう!
まず点Aの風のベクトル。

点Aの温度風はこうなる。

点Bは点Aと温度風の向きは同じで、強さは半分なので…こうなる。

だから答えは②ですね!

「温度風の関係」というのは、温度の水平傾度のために、地衡風が高度と共に変わる(強くなる)こと!

問5:霧について
霧について述べた次の文(a)~(d)の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の①~⑤の中から選べ。
(a)エーロゾルの有無は霧の発生に影響を及ぼさない。
(b)初夏から釧路沖で発生する海霧は、海面水温より冷たい空気が、オホーツク海などから流れてきて発生することが多い。
(c)放射霧は雲の少ない夜間から明け方にかけ発生しやすいが、風が強いと発生しにくい。
(d)温暖前線に伴い長時間降雨があり、地表面近くに湿った冷気があるところへ、上空の暖気から比較的高温の雨粒が落下して蒸発すると、前線霧が発生することがある。

答えは⑤! (a)と(b)が誤りで、(c)と(d)が正しいです!

では1つずつ検証していきましょう〜
霧は地表面付近にあるってだけで雲と同じもの。
だから当然霧の発生は、エーロゾルの有無に影響されます!
だから(a)の「エーロゾルの有無は霧の発生に影響を及ぼさない。」は誤り!
初夏に釧路沖で発生する海霧は、オホーツク海の流氷が溶けた冷たい海水の上に、湿った暖かい空気が流れることによって発生します。
だから(b)の「初夏から釧路沖で発生する海霧は、海面水温より冷たい空気が、オホーツク海などから流れてきて発生することが多い。」は逆なので、誤り!
放射霧がよく発生するのは、風が弱く雲のない夜間または明け方なので
(c)の「放射霧は雲の少ない夜間から明け方にかけ発生しやすいが、風が強いと発生しにくい。」は正しい!
前線霧は、湿度が高くなったところへ、上空の暖気から暖かい雨が降った時に発生します。
だから(d)の「温暖前線に伴い長時間降雨があり、地表面近くに湿った冷気があるところへ、上空の暖気から比較的高温の雨粒が落下して蒸発すると、前線霧が発生することがある。」は正しい!

湿度でムンムンしてるのを想像しますね〜

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