令和4年1月の第57回気象予報士試験の学科一般知識の問題を、
あなたが次に似たような問題を解く時、「ヒント」となるような内容を目指してます!!!

この記事は、令和4年1月の第57回気象予報士試験の学科一般の問題と解答を持っている人向けの内容です。
※私個人の試験問題を解く時の思考例です。(気象業務支援センターとは関係ございません。)
もし第57回気象予報士試験の学科一般の問題と解答を持っていなければ、まずこちらでダウンロードしてください。
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目次
問1:中層大気の気温・等圧面高度
中層大気の1月の月平均の気温や等圧面高度などについて述べた次の文(a)~(d)の下線部の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の①~⑤の中から1つ選べ。
(a)高度10~20km付近では経度平均した気温が最も低いのは赤道付近である。
(b)高度20~50km付近では高度が高いほど気温が高く、オゾンの数密度も大きい。
(c)高度70~90km付近における経度平均した気温は、大まかにみると、北極付近で最も高く、南極付近で最も低い。
(d)北半球の高度20~50km付近では、等圧面上の等高度線は北極を中心としたほぼ同心円状になっている。

① (a)正, (b)誤, (c)正, (d)誤
高度10~20km付近っていうと、対流圏界面から成層圏ですね。

対流圏界面は赤道付近が一番高度が高くなっています。
そんなわけで気温分布は赤道付近ほど低くなってます。(一般気象学 p 251 図 9.1 参照)
赤道付近の圏界面が極の方より高くなるのは、対流活動が盛んだからです。
だから(a)の「高度10~20km付近では経度平均した気温が最も低いのは赤道付近である。」は正しい!
成層圏では圏界面付近で最も気温が高くなりますが、オゾン数密度が一番多いのは、成層圏の中層です。
成層圏の気温を上げているのは太陽の紫外線です。
太陽の紫外線は上層の方が多く、下層の方が少なくなります。
だから(b)の「高度20~50km付近では高度が高いほど気温が高く、オゾンの数密度も大きい。」は誤り!

第54回,第55回の試験でも出題されている内容ですね。

高度70~90km付近は、中間圏から熱圏です。
「一般気象学」と「イラスト図解 よくわかる気象学」に掲載されている、1月における中層大気の気温分布図にあるように、高度70〜90km付近の経度平均の気温分布は、北極側の方が高くなっています。
中層大気では夏極で上昇流,冬極で下降流が存在します。
そして上昇流が存在しているところでは断熱膨張により気温が下がり、下降流が存在するところでは断熱圧縮により気温が上がります。
だから(c)の「高度70~90km付近における経度平均した気温は、大まかにみると、北極付近で最も高く、南極付近で最も低い。」は正しい!

「一般気象学」p259を読んでいると出てくるのですが・・・北半球の夏の典型的な例が図とともに解説されています。
- 典型的な夏型:北極には高気圧がある。
全域で東風。 - 典型的な冬型:低気圧の中心は北極から外れる。
アリューシャン列島の上に高気圧が現れる。
全体的に見れば西風。
北極には高気圧があり、全域で東風&等圧線も等高度線も美しい同心円を描いています。
一方冬の場合は、等圧線,等高度線は同心円を描いていません。
問題文では1月のことだと言っているので、(d)の「北半球の高度20~50km付近では、等圧面上の等高度線は北極を中心としたほぼ同心円状になっている。」は誤り!
※この夏と冬の違いを生み出しているのは、対流圏から伝播するプラネタリー波。

「一般気象学(第2版)」 p259
問2:対流圏と成層圏の気温・風速
対流圏と成層圏の経度平均した7月の月平均の気温及び風速の東西成分について述べた次の文章の空欄(a)~(c)に入る語句の組み合わせとして適切なものを、下記の①~⑤の中から1つ選べ。
成層圏の気温は、オゾンの紫外線吸収に伴う加熱量の違いから、(a)の方が高い。
南北両半球の中緯度の風速の東西成分の鉛直分布を対流圏から上部成層圏まで高度に沿ってみていくと、南北両半球ともに対流圏界面付近で西風が極大となり、下部成層圏には西風の弱い高度があって、そこから上空に向かって北半球では(b)、南半球では(c)おおむね高度が高いほど強くなっている。

④ (a)南極よりも北極, (b)東風に変わり, (c)西風のまま
成層圏の気温は、受け取る紫外線量の違いのため、夏半球の方が気温が高くなります。
問題文には7月と書いてあるので、7月の夏半球…北半球→「北極の方が気温が高い」と考えます。
だから(a)は「南極よりも北極」。
続いて、「一般気象学」,「よくわかる気象学」にも掲載されている東西風の図から、次のことがわかります。
- 夏冬両半球ともに対流圏界面付近で西風極大
- 下部成層圏では弱い西風
- 上空に向かって夏半球で東風が強い
- 上空に向かって冬半球で西風が強い
ここから(b)は「東風に変わり」,(c)は「西風のまま」となります。
このような風向の変化は、温度風の関係によると考えられます。
夏半球では下層では極側より赤道側の方が気温が高く、上層では赤道側より極側の方が気温が高くなっていることから、7月の北半球では上空へ向かって西風から東風に変化しているわけです。

問3:大気の熱力学~条件付き不安定~
気温減率が一定で条件付き不安定の状態にある地上から高度1.5kmまでの大気について述べた次の文章の空欄(a), (b)に入る不等式と語句の組み合わせとして適切なものを、下記の①~⑤の中から1つ選べ。ただし、乾燥断熱減率は10℃/km、湿潤断熱減率は5℃/kmとする。
この大気において、高度500mで気温が20℃とすると、高度1.5kmにおける気温Tの範囲は(a)である。また、高度500mの空気塊の持ち上げ凝結高度が高度1kmとすると、この高度500mの空気塊を温度が0.5℃降下するまで断熱的に持ち上げたとき、空気塊は(b)。

全員正解(①)
気温減率が一定で、かつ、条件付き不安定の状態の大気において、高度500mで20℃。
じゃあ高度1.5kmでは?というのが(a)で問われていること。
なんだけど!
条件付き不安定の条件は、大気成層の気温減率が湿潤断熱減率より大きく、乾燥断熱減率より小さいということを意味するので(→用語集「条件付き不安定」)、不等号「≦」ではだめなんです。
「 10℃ < T < 15℃ 」だったらOK。
だからこの問題は、全員正解となったのでした。
(b)は「下降し始める」のか「上昇を続ける」のかを考える問題ですね。
500mの空気塊の持ち上げ凝結高度は1km。
ということは1kmまでは、乾燥断熱減率に従って気温が下がりますよね。
乾燥断熱減率は – 10℃/km だから、気温が0.5℃降下するのは断熱的に 550m まで上昇させたときです。
そして持ち上げてあげなくても空気塊が上昇していく高度は「自由対流高度」といって、「持ち上げ凝結高度」よりも高いわけで。
特に計算する必要もなく、この場合の空気塊は「下降し始める」ですね。
結論、正解はないですが、あえて選ぶなら①

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