学科専門~過去問私的解説&ヒント~第57回気象予報士試験

ここでわかること

令和4年1月の第57回気象予報士試験の学科専門知識の問題を、 晴野 はれの だったらこう解く!という考え方や解き方をまとめています。

あなたが次に似たような問題を解く時、「ヒント」となるような内容を目指してます!!!

問1から順番に見る

はれの
はれの

この記事は、令和4年1月の第57回気象予報士試験の学科専門の問題と解答を持っている人向けの内容です。

※私個人の試験問題を解く時の思考例です。(気象業務支援センターとは関係ございません。)

もし第57回気象予報士試験の学科一般の問題と解答を持っていなければ、まずこちらでダウンロードしてください。

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問1:ラジオゾンデ(高層気象観測)

問題文

気象庁が行っているラジオゾンデを用いた高層気象観測について述べた次の文(a)〜(c)の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の①〜⑤の中から1つ選べ。

(a)ラジオゾンデ観測における高度は、気球に充填する水素やヘリウムの量から計算される上昇速度と放球後の経過時間から求めている。

(b)昼間のラジオゾンデ観測では、日射の影響により温度計センサーが大気の温度よりも高い値を示すことがあるが、発表される気温の観測値には日射の影響は補正されていない。

(c)ラジオゾンデ観測においては、気温が一定の基準値以下に低下すると湿度の正確な測定が難しくなることから、基準値以下の気温での湿度データは使われない。

④ (a)誤,(b)誤,(c)正

(a)観測高度の求め方

ラジオゾンデの観測高度の求め方は、GPSゾンデならGPS信号で高度を求めます

GPSゾンデではない場合、気圧・気温・湿度を用いて測高公式で計算して求める・・・と「イラスト図解 よくわかる気象学・専門知識編」に書かれています。

「GPSゾンデには気圧計がない」と気象庁のHPにありました。

いずれにしても、気球のガスから計算するのではないので、(a)の「ラジオゾンデ観測における高度は、気球に充填する水素やヘリウムの量から計算される上昇速度と放球後の経過時間から求めている。」は誤り!

(b)日射の影響

ラジオゾンデの温度センサーは直射日光により上昇した値を補正しています。

だから(b)の「昼間のラジオゾンデ観測では、日射の影響により温度計センサーが大気の温度よりも高い値を示すことがあるが、発表される気温の観測値には日射の影響は補正されていない。」は誤り!

(c)湿度測定の限界

ラジオゾンデは気温ー40℃以下(だいたい300hPaから上層)では、正確な値を観測できないので、湿度を観測していません。(第52回の試験で似たような内容の出題がありました。)

だから(c)の「ラジオゾンデ観測においては、気温が一定の基準値以下に低下すると湿度の正確な測定が難しくなることから、基準値以下の気温での湿度データは使われない。」は正しい!

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問2:推計気象分布

問題文

気象庁が発表している推計気象分布は、観測データ等により天気,気温,日照時間のきめ細かな分布を算出して視覚的に把握しやすくした情報で、アメダスなどの観測所のない場所の状況も把握できる。推計気象分布について述べた次の文(a)〜(d)の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の①〜⑤の中から1つ選べ。

(a)推計気象分布では、天気,気温,日照時間の分布が、1kmメッシュの細かさで発表され、1時間毎に更新されている。

(b)推計気象分布では、観測所を含むメッシュの値は、そこでの観測データとは必ずしも一致しない。

(c)天気の推計気象分布は、気象衛星ひまわりによる雲の観測データから晴れかくもりかを判定し、解析雨量を用いて降水の有無を判断している。

(d)気温の推計気象分布は、アメダスなどの気温を用いているが、標高による気温の違いは考慮されていない。

① (a)正,(b)正,(c)正,(d)誤

推計気象分布は2016年(平成28年)3月15日から開始されたサービスです。

(a)解像度と更新頻度

推計気象分布で予報される項目は次の通り。

  • 天気 5 種類(晴れ、くもり、雨、雨または雪、雪)
  • 気温 0.5 ℃毎
  • 日照時間 0.2 時間(12分)毎

解像度は1km四方のメッシュ

更新頻度は1時間毎

だから(a)の「推計気象分布では、天気,気温,日照時間の分布が、1kmメッシュの細かさで発表され、1時間毎に更新されている。」は正しい!

(b)観測所の値

気象庁の推計気象分布の解説ページによると、「観測所を含むメッシュの値は、そこでの観測データとは必ずしも一致しません。」と、そのまんまの文章で書かれています。

特定の地点を対象としているわけではなく、当該メッシュの平均値なんです。

だから(b)の「推計気象分布では、観測所を含むメッシュの値は、そこでの観測データとは必ずしも一致しない。」は正しい!

(c)気象衛星と解析雨量の利用

推計気象分布は晴れか曇りかの判定を、気象衛星ひまわりの雲の観測データから行っています。

降水の有無は、解析雨量を利用して判断します。

だから(c)の「天気の推計気象分布は、気象衛星ひまわりによる雲の観測データから晴れかくもりかを判定し、解析雨量を用いて降水の有無を判断している。」は正しい!

(d)標高による気温の違い

推計気象分布は、アメダスの気温観測値などを用いています。

そして標高による気温の違いも考慮されています。

だから(d)の「気温の推計気象分布は、アメダスなどの気温を用いているが、標高による気温の違いは考慮されていない。」は誤り!

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問3:気象レーダー

問題文

気象庁が行っている気象レーダー観測およびそのデータの利用について述べた次の文(a)〜(d)の正誤について、下記の①〜⑤の中から正しいものを1つ選べ。

(a)気象レーダーの発する電波は大気の屈折率の分布状態に応じて曲げられ、通常の伝搬経路から大きく外れることがあり、降水の全くないところに強いエコーが現れる場合がある。

(b)山岳や地表の構造物などに電波が当たって反射され、降水のないところに強いエコーが現れることがあるが、地形のように動かないものが原因のグランドクラッタについては、降水エコーと区別して取り除く処理が行われている。

(c)気象レーダーで降水エコーが観測されていても、降水粒子が落下途中で蒸発して地上まで到達せず、直下の地上では降水が観測されないことがある。

(d)気象レーダーでは、電波が発射されてから反射されて戻ってくるまでの経路上に強い降水がある場合、その場所で電波が減衰してしまい、それより遠方では実際の降水よりも弱く観測されることがある。

① (a)のみ誤り
② (b)のみ誤り
③ (c)のみ誤り
④ (d)のみ誤り
⑤  すべて正しい

⑤  すべて正しい

(a)エンゼルエコー

問題文に登場する「異常伝搬(通常の経路から大きく外れる伝搬)」では、送信電波が曲げられて山やビルなどに当たって反射することを指します。

そして降水がないのに強いエコーが現れる場合があるのです。

だから(a)の「気象レーダーの発する電波は大気の屈折率の分布状態に応じて曲げられ、通常の伝搬経路から大きく外れることがあり、降水の全くないところに強いエコーが現れる場合がある。」は正しい!

(b)グランドエコー

グランドクラッタは、電波が山岳や地形によって散乱されるグランドエコーのことですよね。

これらは動かないものが原因のエコーなので、降水エコーと区別でき、取り除けます。

だから(b)の「山岳や地表の構造物などに電波が当たって反射され、降水のないところに強いエコーが現れることがあるが、地形のように動かないものが原因のグランドクラッタについては、降水エコーと区別して取り除く処理が行われている。」は正しい!

はれの
はれの

ただし、大型の風車の羽・風で揺れる樹木・スキー場のリフトなどの動くものが原因の場合、完全に取り除くことは難しい場合があります。

(c)地球は丸い

イメージ図

レーダーの電波は下方にずれながら進みますが、地表面の曲率の方が大きいので、後方ほど観測される高度は高くなります。

だから(c)の「気象レーダーで降水エコーが観測されていても、降水粒子が落下途中で蒸発して地上まで到達せず、直下の地上では降水が観測されないことがある。」は正しい!

(d)後方の降水

イメージ図

前方にも後方にも降水域があった場合、しかも前方の降水が強かったら、前方の降水域でレーダーの電波が多く反射されるわけで・・・。

ということは、後方の降水域まで届く電波は少なくなるわけで・・・。

だから(d)の「気象レーダーでは、電波が発射されてから反射されて戻ってくるまでの経路上に強い降水がある場合、その場所で電波が減衰してしまい、それより遠方では実際の降水よりも弱く観測されることがある。」は正しい!

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