学科一般~過去問私的解説&ヒント~第57回気象予報士試験

4:大気の熱力学

問題文

大気中の温度や水蒸気圧などについて述べた次の文(a)~(d)の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の①~⑤の中から1つ選べ。ただし、大気では静力学平衡が成り立っているものとする。

(a)空気塊が内部に含まれる水蒸気を凝結させながら断熱的に上昇するとき、凝結熱による加熱で温位と相当温位はともに上昇する。

(b)空気塊が内部に含まれる水蒸気を凝結させながら断熱的に上昇するとき、空気塊の高度1kmあたりの気温の低下率は、上空ほど小さい。

(c)飽和水蒸気圧は、同じ温度であれば気圧に比例し、気圧の低い上空ほど値が小さい。

(d)乾燥空気塊が断熱的に下降するとき、空気塊の高度1kmあたりの温度の上昇率は、気圧によらない。

⑤ (a)誤, (b)誤, (c)誤, (d)正

(a)相当温位

そもそも相当温位は「空気塊の含んでいる水蒸気を全て凝結させ、その潜熱を足した温位」のことをいうので、一定です。(→用語集「相当温位」

だから(a)の「空気塊が内部に含まれる水蒸気を凝結させながら断熱的に上昇するとき、凝結熱による加熱で温位と相当温位はともに上昇する。」は誤り!

(b)湿潤断熱減率のまま

空気塊は水蒸気を凝結させながら断熱的に上昇するということなので、湿潤断熱減率に沿って気温は下がっていきますよね。

エマグラムで湿潤断熱線を見ると、直線ではなくややカーブした曲線です。

しかも気温減率が上空ほど大きくなる方に曲がってます。

エマグラム(湿潤断熱線)

だから(b)の「空気塊が内部に含まれる水蒸気を凝結させながら断熱的に上昇するとき、空気塊の高度1kmあたりの気温の低下率は、上空ほど小さい。」は誤り!

(c)飽和水蒸気圧と気圧の関係

飽和水蒸気圧は、温度のみに依存します。

だから(c)の「飽和水蒸気圧は、同じ温度であれば気圧に比例し、気圧の低い上空ほど値が小さい。」は誤り!

(d)乾燥断熱線に沿う

乾燥空気塊を断熱的に下降させる場合、乾燥断熱線に沿って空気塊の気温は上昇する・・・ってだけの話で、気圧は関係ないですね。

だから(d)の「乾燥空気塊が断熱的に下降するとき、空気塊の高度1kmあたりの温度の上昇率は、気圧によらない。」は正しい!

ここに書いてあるよ

5:降水過程

問題文

雲や降水の形成に寄与する凝結核と氷晶核について述べた次の文(a)~(d)の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の①~⑤の中から1つ選べ。

(a)一般的に、氷晶核として働くエーロゾル粒子の数の方が、凝結核として働くエーロゾル粒子の数よりもずっと多い。

(b)大気中で凝結核として働くエーロゾル粒子の単位体積当たりの数は、海洋上の方が大陸上よりも多い。

(c)水溶性のエーロゾル粒子が凝結核となって形成された雲粒は、大気の相対湿度が100%未満でも水滴として存在できる場合がある。

(d)氷晶核として働くエーロゾル粒子を含んだ雲粒は0℃以下の気温になるとほとんどの場合凍結し始める。

⑤ (a)誤, (b)誤, (c)正, (d)誤

(a)凝結核と氷晶核の数

「一般的にいって、氷晶核は凝結核の数より少ない」です。

だから(a)の「一般的に、氷晶核として働くエーロゾル粒子の数の方が、凝結核として働くエーロゾル粒子の数よりもずっと多い。」は誤り!

(b)海洋上と陸上の凝結核の数

凝結核となるエーロゾル粒子の単位体積あたりの数は、陸上の方が多いです。

海洋上 < 陸上

だから(b)の「大気中で凝結核として働くエーロゾル粒子の単位体積当たりの数は、海洋上の方が大陸上よりも多い。」は誤り!

(c)相対湿度と水滴

(c)水溶性のエーロゾル粒子が凝結核となって形成された雲粒は、大気の相対湿度が100%未満でも水滴として存在できる場合がある。」は正しい!

(d)雲粒が凍る温度

氷晶核として働くエーロゾル粒子を含んでいても、0℃以下だからって必ず凍結し始めるわけじゃないです。

雲頂温度 ー10 ℃でも、氷晶は50%とか・・・

だから(d)の「氷晶核として働くエーロゾル粒子を含んだ雲粒は0℃以下の気温になるとほとんどの場合凍結し始める。」は誤り!

気象学の本をよく読み込んでおこう〜

ここに書いてあるよ

6:大気における放射

問題文

緯度による日射量の違いについて述べた次の文章の下線部(a)~(c)の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の①~⑤の中から1つ選べ。ただし、sin30°=0.5,  sin60°=0.87とする。

太陽からの光が地球の赤道面となす角度δは夏至の日に23.5°、(a)春分と秋分の日には0°になる。北半球の緯度φの地点の南中時における太陽の高度角αは

α = 90° ー φ + δ

で表される。雲のない冬至の日の太陽の南中時に地表面が受ける日射量は、北緯6.5°の熱帯の地点の方が北緯36.5°の中緯度の地点よりも(b)43.5%大きい。緯度による日射量の違いは(c)ハドレー循環などの大規模な大気循環の駆動源である

② (a)正, (b)誤, (c)正

(a)は正しいです。

で!(b)はもう少し数字が大きくなるはずなので違いますね。

冬至の日のそれぞれの太陽高度角「α」は「 α = 90° ー φ + δ 」より

緯度6.5度

α = 90° ー 6.5° ー 23.5°

 = 60°

日射量は高度角90°の 87%(sin60°=0.87より)

緯度36.5度

α = 90° ー 36.5° ー 23.5°

 = 30°

日射量は高度角90°の 50%(sin30°=0.5より)

単純に「0.5」を43.5%大きくしたら、0.7175 なので、緯度6.5°では「緯度36.5°の43.5%」より日射量が多いと言えます。

試験本番では(b)が正しいか誤りかだけ分かればいいので、正確に計算しなくてOKですよ。

(c)は問題文の通りです。

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