学科専門~過去問私的解説&ヒント~第56回気象予報士試験

ここでわかること

令和3年8月の第56回気象予報士試験の学科専門知識の問題を、 晴野 はれの だったらこう解く!という考え方や解き方をまとめています。

あなたが次に似たような問題を解く時、「ヒント」となるような内容を目指してます!!!

問1から順番に見る

はれの
はれの

この記事は、令和3年8月の第56回気象予報士試験の学科専門の問題と解答を持っている人向けの内容です。

※私個人の試験問題を解く時の思考例です。(気象業務支援センターとは関係ございません。)

もし第56回気象予報士試験の学科一般の問題と解答を持っていなければ、まずこちらでダウンロードしてください。

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問1:降水の観測や雨量計

問題文

気象庁が行っている地上気象観測における降水の観測や雨量計について述べた次の文(a)〜(d)の正誤について下記の①から⑤の中から正しいものを1つ選べ。

(a)「降水量」とはある時間内に地表の水平面に降った雨・雪などの量であり、降水が地中にしみ込んだり他の場所に流れ去ったりせずに地表面上を覆ったとしたときの水の深さ(雪などの固形降水の場合は融かして水にしたときの深さ)で表す。

(b)アメダスでは雨水が転倒マスに一定量(0.5mm相当)入ると転倒する構造の雨量計を用いて転倒した回数から雨量を観測している。

(c)雨量計に隣接して建物や高い樹木などがあるような環境では、雨滴や切片の捕捉率が下がるなどして、観測精度が低下する。

(d)雪などの固形降水が積もって地面を覆っている状態を「積雪」といい、稀に夏季にひょうが積もって「積雪」となることがある。

① (a)のみ誤り
② (b)のみ誤り
③ (c)のみ誤り
④ (d)のみ誤り
⑤  すべて正しい

④ (d)のみ誤り

「降水量」とは、降った雨が土にしみ込まないと仮定して所定の時間で単位面積あたりに何ミリメートルの深さ(高さ)まで降水が溜まるのか、を意味します。▶︎用語集「降水量」

だから(a)の「『降水量』とはある時間内に地表の水平面に降った雨・雪などの量であり、降水が地中にしみ込んだり他の場所に流れ去ったりせずに地表面上を覆ったとしたときの水の深さ(雪などの固形降水の場合は融かして水にしたときの深さ)で表す。」は正しい。

気象庁で使用しているアメダスの転倒ます型雨量計の「ます」の容積は 0.5 ミリ相当となっています。

だから転倒ますの転倒回数で 0.5ミリずつ観測した降水量が増えていきます。

  • 転倒 1 回 → 0.5 ミリの降水量
  • 転倒 2 回 → 1 ミリの降水量

だから (b) の「アメダスでは雨水が転倒マスに一定量(0.5mm相当)入ると転倒する構造の雨量計を用いて転倒した回数から雨量を観測している。」は正しい。

降水量の観測は、地形や周囲の構造物によって発生する「風の乱れ」の影響を受けやすいです。

特に隣接して高い樹木や建物があると、風と共に降水も遮られてしまう可能性があり、観測精度は低下します。

だから (c) の「雨量計に隣接して建物や高い樹木などがあるような環境では、雨滴や切片の捕捉率が下がるなどして、観測精度が低下する。」は正しい。

「雪などの固形降水物が自然に積もって地面を覆っている状態」を「積雪」というのはその通り。

でも「夏季のひょうや氷あられ」は、積もっても「積雪」とはいいません。

だから (d) の「雪などの固形降水が積もって地面を覆っている状態を「積雪」といい、稀に夏季にひょうが積もって「積雪」となることがある。」は誤り。

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問2:気象ドップラーレーダー

問題文

気象庁が行っている気象ドップラーレーダーを用いた観測について述べた次の文章の下線部(a)〜(d)の正誤について、下記の①〜⑤の中から正しいものを1つ選べ。

気象ドップラーレーダーは、アンテナを回転させながら電波(マイクロ波)を発射し、半径数百kmの範囲内に存在する雨や雪を観測している。
(a)発射した電波が反射して戻ってくるまでの時間から雨や雪までの距離を測り、戻ってきた電波の強さから雨や雪の強さを観測する。
また、(b)戻ってきた電波の周波数のずれを利用して、雨や雪の動き(動径方向の降水粒子の動き)を観測し、降水域の大気の流れを捉えることができる。
また、最近導入された二重偏波気象ドップラーレーダーは、(c)水平方向と垂直方向に振動面を持つ電波(それぞれ水平偏波、垂直偏波という)を用いることで、(d)雲の中の降水粒子の種別の判別や降水の強さをより正確に推定することができる。

① (a)のみ誤り
② (b)のみ誤り
③ (c)のみ誤り
④ (d)のみ誤り
⑤  すべて正しい

⑤  すべて正しい

気象ドップラーレーダーは、発射した電波が戻ってくるまでの時間から雨や雪までの距離を測ります。→だから(a)は正しい〜。

また、戻ってきた電波の強さから雨や雪の強さを観測します。

さらに、戻ってきた電波の周波数のずれ(ドップラー効果)を利用して、雨や雪の動き(降水域の風)を観測します。→だから(b)は正しい!

気象庁では令和 2 年 3 月から、二重偏波気象ドップラーレーダーを導入しました。

二重偏波気象ドップラーレーダーは、水平方向に振動する電波(水平偏波)と垂直方向に振動する電波(垂直偏波)を用いています。→だから(c)も正しい!

水平偏波と垂直偏波を用いる二重偏波気象ドップラーレーダーは、雲の中の降水粒子の種別判別や降水の強さをより正確に推定することが可能です。→だから(d)も正しいのですー!!!!

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問3:低気圧の風

問題文

下図は2月のある日の12時の地上天気図であり、図ア〜エは、その日の6時~12時に(a)〜(c)を含む4地点のウィンドプロファイラによって観測された高層風の時系列である。
天気図中に示した地点(a)〜(c)に対応する高層風の時系列の組み合わせとして適切なものを、下記の①~⑤の中から1つ選べ。

② (a)ア,(b)ウ,(c)イ

この問題は、「低気圧のどの位置でどんな風が吹いているのか」を立体的に理解しているかの確認問題ですかねー。

まず(a)は、低気圧中心の北西側なので、地上付近では東寄りの風から北寄りの風に変化してるんじゃないかな?(北東風)

低気圧の中心以北でも上空なら南寄りの風向になるし(低気圧が近づいてくるならなおさら南寄りの風向だよね。)→【ア】が候補に上がります。

(b)は、低気圧中心の南東側で温暖前線と寒冷前線の間なので、地上では強い南寄りの風が吹くかな。

そして地上では6時間の間に南東から南西の風に変化してるはず。(南西風)→【ウ】が候補に上がります。

最後に、(c)は低気圧中心の北東側です。

この低気圧が6時間前にどんな形だったかは知りませんが、全く同じ形だったと仮定して…

この低気圧が北東に進んでいるので、(c)の少し北東側ではどんな風なのか考えて6時間で風を想像します。

で、私の想像では…地上では南寄りの風から南東の風に変化してるんじゃないかなって思います。(南東風)→【イ】が候補に上がります。

ここでは、ほとんど地上の風のことしか考えていませんでしたが、【ウ】は上空に向かって風向のシアが小さいし、(b)以外なかったです。( ˊᵕˋ ; )

さらに以下の情報も考慮できます。

  • 【ア】と【エ】は下層から上層に向かって風向が反時計回りに変化してるので「寒気移流」→低気圧の西側(後面)。
  • 【イ】と【ウ】は下層から上層に向かって風向が時計回りに変化してるので「暖気移流」→低気圧の東側(前面)。

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