目次
問4:数値予報の誤差
数値予報の誤差について述べた次の文(a)~(c)の下線部の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の①~⑤の中から1つ選べ。
(a)数値予報モデルの初期値として利用される解析値の精度は、モデルの格子点の位置によらず、空間的に一様であると見なしてよい。
(b)数値予報モデルの予測の誤差は、一般に予測時間が長くなるにつれ増大する。この予測誤差の成長の程度は、同じモデルであれば気象場によらず常に同程度となる。
(c)数値予報モデルの変更によって予測の平均誤差(ME)がゼロに近づいた場合、二乗平均平方根誤差(RMSE)も必ず減少する。

⑤ (a)誤,(b)誤,(c)誤
数値予報のモデルの初期値は、第一推定値と観測値を元に客観解析した値を初期値化して求められます。
(a)は、この「客観解析の値の精度がモデルの格子点の位置によらず空間的に一様であると見なしてよい」かどうかを問うていると思うんですが・・・客観解析に使われる観測されたデータは空間的にもバラバラです。

第一推定値も利用して解析値を算出するんですが、観測地点が少ない地域(海上など)だとやっぱり精度は落ちるとかありますよね。
だから(a)の「数値予報モデルの初期値として利用される解析値の精度は、モデルの格子点の位置によらず、空間的に一様であると見なしてよい。」は誤り。
数値予報の予測誤差の成長度が「同じモデルだったら気象場によらず常に同程度」?????
いや、そんなことないと思う。
予測してから時間の経過に伴い増大する予測誤差は「非線形性の誤差」です。

現実の気象場では、初期時に存在しない新たな力学的な流れが発生します。
初期時に存在しない新たな力学的な流れは、大気の運動が持つカオス的なものです。
「カオス的な誤差」は「地形などによる系統的な誤差」と違って、常に同程度ではありません。
また予想の対象(何を予測するか)によっても、予測誤差は違ってきます。
だから(b)の「数値予報モデルの予測の誤差は、一般に予測時間が長くなるにつれ増大する。この予測誤差の成長の程度は、同じモデルであれば気象場によらず常に同程度となる。」は誤り。
ご存知の通り平均誤差(ME)は「+」と「ー」が打ち消し合ってしまいます。▶︎平均誤差(ME)
でも二乗平均平方根誤差(RMSE)は違いますよね。▶︎二乗平均平方根誤差(RMSE)
だから(c)の「数値予報モデルの変更によって予測の平均誤差(ME)がゼロに近づいた場合、二乗平均平方根誤差(RMSE)も必ず減少する。」は誤り。

問5:気象庁の数値予報モデル
気象庁の数値予報モデルについて述べた次の文(a)~(c)の下線部の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の①~⑤の中から1つ選べ。
(a)メソモデルは非静力学モデルであるが、用いられている格子間隔では、個々の積雲の振る舞いを十分表現することができないため、積雲対流パラメタリゼーションを用いている。
(b)メソモデルは全球モデルに比べ分解能が高いが、大気境界層中の様々な渦の振る舞いを充分表現することができないため、大気境界層過程のパラメタリゼーションを用いている。
(c)局地モデルは非静力学モデルであり、メソモデルに比べ格子間隔が小さいため、水平スケールが数kmの個々の積乱雲の予測が可能であり、集中豪雨などの局地的な激しい現象を主な予測対象としている。

② (a)正,(b)正,(c)誤
メソモデルの格子点間隔(5km)では、個々の積雲の振る舞いを表現できません。
でも「積雲対流パラメタリゼーション」として見積もられているので、全く考慮されてないわけではないんですよね。
だから(a)の「メソモデルは非静力学モデルであるが、用いられている格子間隔では、個々の積雲の振る舞いを十分表現することができないため、積雲対流パラメタリゼーションを用いている。」は正しい。
大気境界層で起きている現象のスケールは、メソモデルだけではなく現在の数値予報モデルの分解能よりもかなり小さいです。
だから大気境界層内の様々な渦による効果はパラメタリゼーションの対象となっています。

もちろんメソモデルでもパラメタリゼーションで大気境界層内の効果を見積もっています。
そんなわけで(b)の「メソモデルは全球モデルに比べ分解能が高いが、大気境界層中の様々な渦の振る舞いを充分表現することができないため、大気境界層過程のパラメタリゼーションを用いている。」は正しい。
局地モデルはメソモデルより格子点間隔が小さいですが、水平スケール 10km以上の現象でないと表現できません。
個々の積乱雲の水平スケールは、大きくても水平スケール 10kmくらいなので、局地モデルでも表現するのは難しいです。
だから(c)の「局地モデルは非静力学モデルであり、メソモデルに比べ格子間隔が小さいため、水平スケールが数kmの個々の積乱雲の予測が可能であり、集中豪雨などの局地的な激しい現象を主な予測対象としている。」は誤り。

イラスト図解 よくわかる気象学【専門知識編】p 241〜
問6:数値予報モデルの格子点値
気象庁が作成している数値予報モデルのプロダクト(ここではガイダンスに加工される前の格子点値をさす)の利用にあたって、留意すべき事項について述べた次の文(a)~(c)の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の①〜⑤の中から1つ選べ。
(a)出力される 格子点値は、格子点に対応する地点の値をピンポイントで表しているのではなく、その格子点付近の空間の代表的な値を表している。
(b)出力される降水量は、予想対象時刻における降水強度を表している。
(c)出力される地上における気温や風などの物理量は、実際の地形ではなく、モデル地形に対して算出される。

② (a)正,(b)誤,(c)正
格子点値はその地点の値ではなく、その周辺の代表となる値なので(a)の「出力される 格子点値は、格子点に対応する地点の値をピンポイントで表しているのではなく、その格子点付近の空間の代表的な値を表している。」は正しい。
出力される降水量は「積算降水量」のことなので、降水強度のことじゃないですね。
だから(b)の「出力される降水量は、予想対象時刻における降水強度を表している。」は誤り。
数値予報はモデルは「モデルの地形」がある前提のものであって、算出の結果出てくる格子点値が「モデルの地形」に対して算出されるのは当然のことですね。
だから(c)の「出力される地上における気温や風などの物理量は、実際の地形ではなく、モデル地形に対して算出される。」は正しい。

イラスト図解 よくわかる気象学【専門知識編】p 214〜
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