令和 5 年 1 月の第 59 回気象予報士試験の学科一般知識の問題を、
あなたが次に似たような問題を解く時、「ヒント」となるような内容を目指してます!!!

この記事は、令和 5 年 1 月の第 59 回気象予報士試験の学科一般の問題と解答を持っている人向けの内容です。
※私個人の試験問題を解く時の思考例です。(気象業務支援センターとは関係ございません。)
もし第 59 回気象予報士試験の学科一般の問題と解答を持っていなければ、まずこちらでダウンロードしてください。
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目次
問1:気温の鉛直分布(大気の鉛直構造)
地球大気の平均的な気温の高度分布について述べた次の文(a)〜(c)の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の①〜⑤の中から1つ選べ。
(a)中間圏では、気温は高度が上がるとともに低下し、中間圏界面で極小となっている。
(b)成層圏では、オゾンが太陽からの紫外線を吸収して大気を加熱しており、オゾンの数密度が極大となる高度で気温も極大となっている。
(c)対流圏の気温減率は、放射や対流など様々な過程が関わり決まっているため、放射収支のみを考慮した計算から求められる気温減率よりも大きくなっている。

③ (a)正,(b)誤,(c)誤

鉛直方向の気温分布についての問題ですね。
基礎中の基礎の内容なので、秒で解いてやってください!
中間圏は高度が上がるとともに気温が低下し、中間圏海面付近で最も気温が低くなります。
だから(a)は正しい!
成層圏ではオゾンが紫外線を吸収して大気を加熱しているのはその通り…なんですが
気温の極大はオゾンの数密度が極大になる高度ではありません。
オゾンの数密度が極大となるのは成層圏中層。
気温が極大となるのは成層圏界面付近となります。

だから(b)の「成層圏では、オゾンが太陽からの紫外線を吸収して大気を加熱しており、オゾンの数密度が極大となる高度で気温も極大となっている。」は誤り!
対流圏は放射や対流などさまざまな過程が関わり、気温分布が決まっているわけですが・・・
もし!放射収支のみで気温分布が決まったら〜
地表面の暖かい空気が対流で上昇したりしないわけなので、高度が高くなるとともに、もっと気温は下がると考えられます。

タワマンの上層階はめっちゃ寒くて不人気になるかもw
そんなわけで、気温減率は放射収支のみより、対流がある方が小さくなります。
だから(c)は誤り!

問2:湿球温度(熱力学)
大気中の水蒸気量の指標のひとつである湿球温度について述べた次の文章の下線部(a)〜(c)の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の①〜⑤の中から1つ選べ。
湿球温度計に通風される未飽和の空気(温度T0)の混合比をw1、湿球を通過した空気の混合比をw2とし、w1、w2それぞれを飽和混合比とする温度をT1、T2とすると、(a)T1は仮温度、T2は湿球温度で、(b)T1 < T2である。
混合比の差Δw= w 2 – w1に相当する水の蒸発によって温度が変化していることから、蒸発の潜熱をL、定圧比熱をCpとすれば、(c)L Δw = Cp (T0 –T2 )という関係が成り立つ。

③ (a)誤,(b)正,(c)正
w2を混合比とする時のT2が湿球温度なのはいいとして、T1が「仮温度」って・・・違いますね。
仮温度は、「仮想の空気の温度のことで、湿潤空気と同じ密度(重さ)を乾燥空気であらわした場合の温度のこと」なので、(a)は誤りです。
「飽和混合比」って、飽和している空気の混合比ってことですね。
普通に考えて、湿球を通過した後のw2の方がw1より混合比が大きいはず。
ということは、w1 < w2です。
このw1 と w2を飽和混合比とする空気塊の気温を比べるには、エマグラムで考えてみるとわかりやすいかな。

エマグラムより、2つの空気塊の気圧が等しいなら、混合比が大きい方が気温が高いです。
だから(b)の「T1<T2」は正しいでしょう。
- 混合比の差Δw = w2 – w1
- 蒸発の潜熱 = L
- 定圧比熱 = Cp
上記を式にすると

だから(c)は正しい!

「一般気象学(第2版)」 p 62
問3:気温と混合比と気圧
地点A、B、Cにおける地上(高度0m)から高度1000mまでの気層の気温の平均値がそれぞれ TA、TB、TC、混合比がそれぞれqA、qB、qCであり、また、TA<TB=TCかつ qA=qB<qC となっている。各地点の地上気圧が等しいとき、地点A、B、Cにおける高度1000mの気圧PA、PB、PCの大小関係として正しいものを下記の①〜⑤の中から1つ選べ。ただし、いずれの地点でも大気は静力学的平衡の状態にあり、重力加速度は一定とする。

① PA<PB<PC

「大気は静力学的平衡の状態にあり、重力加速度は一定」ということは、ややこしいことはなしで単純に考えてねってことですね。
ではまず、A、B、Cの気柱を想像します。

気圧はその上にある空気の重さのことですよね。
問題文に「各地点の地上気圧が等しい」とあるので、各地点の上にある空気の重さは等しいわけです。
でも地上から高度1000mまでの空気の重さに差があれば、高度1000mにおける気圧も各地点で違いがあることになります。
ということは、地上から高度1000mまでの気柱A、B、Cの重さを比べれば答えは出るはず。
わかっていることは・・・
- qA = qB → 混合比は等しい。
- TA < TB → 気柱Aより気柱Bの方が気温が高い。

ということは、地上高度1000mまでの空気は、気柱Aより気柱Bの方が軽いことがわかります。

地上での気圧は同じなので、高度1000mでの気圧は「 PA < PB 」ということがわかりました。
次に気柱BとCを比較します。
- TB = TC → 気温は等しい。
- qB < qC → 気柱Bより気柱Cの方が混合比が大きい。
気温が等しく、混合比に差があるとは、どのような空気なのか、想像しましょう。
混合比は湿った空気中の乾燥空気1kgあたりの水蒸気量(g)のことですが・・・
空気というものは、水蒸気が増えれば軽くなるのです。
イメージ図↓

混合比は単位容積あたりの水蒸気密度と乾燥空気密度の比なので、気温が等しいのに混合比が大きいということは、気柱Cの方が水蒸気量が多いということです。
そして気柱Cは、相対的に、水蒸気が多い分だけ乾燥空気の割合が少ないことになります。
混合気体としてイメージする方がわかりやすいかな。
乾燥空気の分子量(1モルあたりの質量)は約29(窒素:酸素=4:1)にプラスして、分子量18の水蒸気も混合気体の仲間として考えてみましょう。

地上では気柱BもCも気圧は等しいし高度1000mまで気温も等しいので、混合比が相対的に大きい気柱Cは、気柱Bより乾燥空気の量が少なくなるんです。

ということは、分子量の小さな水蒸気が多い分、気柱Cの重さは軽くなります。
その結果、高度1000mにおける気圧は、気柱BよりCの方が大きくなるので「 PB < PC 」。
よって、答えは①の「 PA < PB < PC 」

アボガドロの法則とか、復習しておくといいね。

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