令和 5 年 1 月の第 59 回気象予報士試験の学科専門知識の問題を、
あなたが次に似たような問題を解く時、「ヒント」となるような内容を目指してます!!!

この記事は、令和 5 年 1 月の第 59 回気象予報士試験の学科・専門知識の問題と解答を持っている人向けの内容です。
※私個人の試験問題を解く時の思考例です。(気象業務支援センターとは関係ございません。)
もし第 59 回気象予報士試験の学科・専門の問題と解答を持っていなければ、まず気象業務支援センターでダウンロードしてください。
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目次
問1:地上気象観測
気象庁が行っている地上気象観測の手法について述べた次の文(a)〜(c)の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の①〜⑤の中から1つ選べ。ただし、標高の高い地点についてはこの限りではない。
(a)観測地点の海面気圧は、その地点の気圧と気温の値および気圧計の平均海面からの高さを静力学平衡の式と気体の状態方程式に基づいた換算式に代入して求め、観測値としている。
(b)観測地点の気温は、観測データの面的な均一性を保つ目的で、下層大気の標準的な気温減率を用いて平均海面の高さの気温に補正して、観測値としている。
(c)地上 10m より高いところで測定した観測地点の風速は、地表面の摩擦を考慮した換算式により地上 10m の高さの風速に換算して、観測値としている。

③ (a)正, (b)誤, (c)誤
「観測地点の海面気圧は、その地点の気圧と気温の値および気圧計の平均海面からの高さを静力学平衡の式と気体の状態方程式に基づいた換算式に代入して求め、観測値としている。」は、問題文の通りです。
ただし、海抜800mを越えたデータは誤差が大きくなるため、更正しません。

気温は海面更正しません。
だから(b)の「観測地点の気温は、観測データの面的な均一性を保つ目的で、下層大気の標準的な気温減率を用いて平均海面の高さの気温に補正して、観測値としている。」は誤り。
ただ、ラジオゾンデなどの高層観測の場合、日射補正します。

風速の観測の場合、測器の設置条件は「地上10mが望ましい」ですが・・・
気圧のような更正はしません。
だから(c)の「地上 10m より高いところで測定した観測地点の風速は、地表面の摩擦を考慮した換算式により地上 10m の高さの風速に換算して、観測値としている。」は誤り。
地上10mでの観測が不可能な場合は
- 測風塔
- 屋上
などで、設置台の上に2m以上の支柱をつけて測器を設置するなど、周囲の地形や建物に影響されないようにします。
観測値を利用する場合は、どんなところで観測されたのかを考慮しなくちゃね。

問2:メソサイクロンの風向
気象庁の気象ドップラーレーダーで降水を伴った低気圧性の渦(メソサイクロン)を観測したとき、アンテナを一定の仰角で走査して得られるドップラー速度分布を表した模式図として最も適切なものを、下図の①〜⑤の中から1つ選べ。なお、レーダーはマークの位置にあるものとする。

⑤
低気圧性の渦(メソサイクロン)の風向のイメージです。↓

選択肢の図、それぞれに風向を書き込むと、以下のようになります。

答えは⑤です。
でも②も低気圧性の渦じゃないのかと思う人もいるかもしれませんが・・・

②は渦というより、シアラインかな。
問3:ウィンドプロファイラ観測
気象庁が行っているウィンドプロファイラ観測について述べた次の文(a)〜(c)の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の①〜⑤の中から1つ選べ。
(a)ウィンドプロファイラの観測局から上空の5方向に向けて電波を発射し、大気中の風の乱れなどによって散乱され戻ってくる電波の周波数のずれから、上空の風向・風速を測定している。
(b)ウィンドプロファイラで温暖前線の通過を観測すると、地表付近に南寄りの風が入り始め、時間とともにその層が上空に向かって厚くなる様子を捉えることができる。
(c)雨が降っている場合、大気による電波の散乱よりも雨粒による散乱の方が強いため、ウィンドプロファイラの観測したデータは雨粒の動きを捉えたものとなる。

② (a)正, (b)誤, (c)正
ウィンドプロファイラは上空5方向に向けて電波を発射して、戻って来る電波の周波数のずれから、上空の風向・風速を観測しています。
だから(a)は正しい!

ウィンドプロライラは地上から上空をレーダーで観測しているとイメージしてください。
その上で、温暖前線の通過をウィンドプロファイラで観測した場合のイメージ図です。↓

上の図より、温暖前線が通過した場合、ウィンドプロライラでは「地表面に南寄りの風が入り始め、時間とともにその層が上空に向かって薄くなると捉えることができます。
だから(b)の「ウィンドプロファイラで温暖前線の通過を観測すると、地表付近に南寄りの風が入り始め、時間とともにその層が上空に向かって厚くなる様子を捉えることができる。」は誤り!

大気が電波を散乱することによって風の動きを捉えているウィンドプロライラなんですが・・・
大気の粒子よりずっと大きな降水の粒子がある場合、降水粒子による電波の散乱の方が大気による散乱より大きいため、観測データは降水粒子の動きを捉えたものになります。
だから(c)の「雨が降っている場合、大気による電波の散乱よりも雨粒による散乱の方が強いため、ウィンドプロファイラの観測したデータは雨粒の動きを捉えたものとなる。」は正しい。

イラスト図解 よくわかる気象学【専門知識編】p 179 ~
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