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晴野の個人的なまとめノートですが、公開しています。
誤りなどのご指摘は、ありがたいので遠慮なくご連絡ください。
そもそも高解像度降水ナウキャストと、降水短時間予報ってどんな予報だったか?や
そういえば「高解像度」じゃない降水ナウキャストは?とか
気象庁のホームページで「高解像度降水ナウキャスト」や「降水短時間予報」という表示はないけど、これらの予報はどこで利用されてるの?など・・・気象予報士試験のための学科・専門知識で勉強していて、ややこしいな〜と思う部分をまとめておきたいと思います。
とことん高解像度降水ナウキャスト
| 予測期間 | 30分先まで | 1時間先まで |
|---|---|---|
| 空間解像度 | 陸上と沿岸の海上では 250m 格子 その他の海上では 1km 格子 | 1km |
| 発表頻度 | 5分ごと | 左に同じ |
| 予測手法 | 外挿と数値予報の組み合わせ (予想時間が短いため 外挿がメイン) | 左に同じ |
| 技術的特徴 | 実況外挿法が中心 | 左に同じ |
| 情報の提供名 | 「雨雲の動き」 | 左に同じ |
1. 独自の「解析値」を作成
高解像度降水ナウキャストは、予測の初期値として、従来の降水ナウキャストのように既存の1kmメッシュのレーダーエコー強度(レーダーのみの解析値)をそのまま使うのではなく、250mメッシュでの予測を行うために、観測データから自ら作成した高解像度の「解析値」を使用します。
2. 利用される主な観測データ
この「解析値」(実況降水分布)を作成するために、以下の高解像度で立体的な観測データが利用されます。
- 気象ドップラーレーダー(気象庁)
- XバンドMPレーダ雨量計(国土交通省:XRAIN)
- Cバンドレーダ雨量計(国土交通省)
- 全国の地上雨量計(アメダス、国土交通省、地方自治体など)
- ウィンドプロファイラやラジオゾンデの高層観測データ
3. 「解析雨量」との関係
高解像度降水ナウキャストの「解析値」は、上記の様々なレーダーと雨量計のデータを組み合わせて、面的にきめ細かく降水量を解析している点で、「解析雨量」の高度化・高解像度版とも言えるものです。
つまり、高解像度降水ナウキャストの初期値は、単なる既存の「解析雨量」を読み込んでいるのではなく、「解析雨量」のコンセプト(レーダーと雨量計の合成)に基づき、250mメッシュの極めて高精細な初期場をリアルタイムで作成している、ということになります。
高解像度降水ナウキャストは、以下の複数の手法を組み合わせることで、積乱雲の発生を捉えようとしています。
1. 対流予測モデルの導入
予測の後半(予測時間が長くなるにつれて)では、実況補外だけでなく、対流予測モデルの技術を部分的に取り入れます。
- 地表付近の要素の利用: 地表付近の風、気温、水蒸気量の分布から、積乱雲の発生のきっかけ(トリガー)となる現象を推定し、発生位置を予測する手法です。
- 降水の3次元予測: 降水を3次元的に予測する技術を導入し、単に水平的な動きだけでなく、積乱雲の発達・衰退の傾向を予測に反映させます。
2. 微弱エコーの検出
- 先行現象の利用: 積乱雲が発生する直前には、上空で雨粒の核となる微弱なエコー(レーダーに写る非常に弱い降水域)が出現することがあります。
- 高解像度降水ナウキャストでは、この微弱なレーダーエコーの位置と動きを検出し、微弱なエコー同士が交差したり、他の要因と組み合わさったりする際に、その後の積乱雲の発生を予測する手法も使われています。
⚠️ 現状と限界
高解像度降水ナウキャストは、これらの技術により「急な強い雨」の実用的な予測を実現していますが、積乱雲がもたらす現象は空間的・時間的に極めて狭い範囲で、短い時間に大きく変化する特性があります。
そのため、現状では、積乱雲の発生・発達・消滅の全てを極めて高い精度で完全に予測できるレベルには至っていないことも、気象庁の資料で言及されています。
しかし、これらの高度な予測技術により、従来の予測よりはるかに詳細で精度の高い情報が提供され、防災・減災に役立てられています。

積乱雲の発生予測に関しては、「予測してます!」とまでは言えないが、予測に向けて積極的に努力しています。
私が受験した当時、必死に覚えた「降水ナウキャスト」、今(2025年)はありません。
以前提供されていた解像度が1km四方の従来の降水ナウキャストは、現在は提供されていません。
気象庁は、2014年8月7日より、より精度の高い「高解像度降水ナウキャスト」の提供を開始し、これに伴い従来のサービスは終了しました。
今の降水ナウキャストに「高解像度」とついているのは、以前の「降水ナウキャスト」と区別するためです。
とことん降水短時間予報
| 予測期間 | 6時間先まで | 7時間先から15時間先まで |
|---|---|---|
| 空間解像度 | 1km | 5km |
| 発表頻度 | 10分ごと | 1時間ごと |
| 予測手法 | 解析雨量(実況降水分布)のデータを用いて、降水域の動きを延長(外挿)することで作成 | 主に数値予報モデルの結果を統計的に組み合わせることで作成 |
| 予測の基盤 | 実況補外型予測(解析雨量ベース)と数値予報モデルのブレンド | 数値予報モデル(MSM)の結果の統計的組み合わせ |
| 情報の提供名 | 「今後の雨」 | 左に同じ |
1. 初期値は「解析雨量」
気象庁が30分間隔で解析している、気象レーダーの観測値を地上雨量計(アメダスなど)で補正した、1km四方の高精度な面的な降水分布データである解析雨量です。
この解析雨量データは、予測を開始する時点の実況(今の雨の降り方と分布)を最も正確に把握するために使われます。
2. 初期予測は「実況補外」
この解析雨量を初期値として、降水短時間予報の初期段階(特に3時間程度まで)では、実況補外(外挿)という手法で雨の動きが予測されます。
解析雨量から降水域の移動ベクトル(速度と方向)を算出し、そのベクトルに従って降水域が移動・変形すると仮定して予測を行います。(実況補外)
この手法は、予測時間が短いほど、観測された雨雲の動きを忠実に再現できるため、非常に高い精度を発揮します。
3. 高解像度降水ナウキャストとの違い(補足)
高解像度降水ナウキャスト(最大90分先、250mメッシュ)の場合、初期値として使われるのは、「解析雨量」の概念を踏襲しつつ、より多くのレーダー情報(XRAINなど)を組み合わせて250mメッシュで作成された独自の「解析値」です。
しかし、降水短時間予報(1~6時間先)においては、気象庁が正式に発表している1kmメッシュの「解析雨量」が初期値の主軸となります。
6時間先までの時間帯は、短時間で局地的な現象(積乱雲など)の予測精度を最大限に高めることに重点が置かれています。
技術的なポイントは「ブレンド」
短時間(1~3時間):解析雨量を基にした実況補外(外挿)のウェイトを大きくすることで、観測された雨雲の動きと強さを忠実に再現します。
長時間(3~6時間):数値予報モデル(MSM)の結果のウェイトを徐々に上げていき、大気の物理法則に基づいた新しい雨の発生や衰退の傾向を取り入れます。
高解像度: 1kmメッシュの予測が可能です。
この時間帯は、長時間にわたる降水傾向と不確実性の把握に重点が置かれています。
技術的なポイントは「アンサンブルの統計処理」
7時間先になると、実況補外の精度はほとんど期待できなくなります。
そのため、メソ数値予報モデル(MSM)を複数の初期値で計算したアンサンブル予報の結果を利用します。
これらの複数の予測結果を統計的に処理することで、最も可能性の高い降水分布や降水の不確実性を考慮した予測を作成します。
低解像度: 予測時間が長くなるにつれて発生する誤差を考慮し、解像度は5kmメッシュに落とされます。
この区切りは、「実況データが持つ優位性が失われ、数値モデルの物理法則と統計的処理の優位性が上回る境目」として設定されています。
高解像度降水ナウキャストと降水短時間予報の違いまとめ
| 項目 | 高解像度降水ナウキャスト | 降水短時間予報 |
|---|---|---|
| 予測期間 | 1時間先まで | 15時間先まで |
| 空間解像度 | 250m (30分先まで) 1km(30分先から) | 1km(6時間先まで) 5km(7時間先から) |
| 発表頻度 | 5分ごと | 10分ごと (※7時間先からは1時間ごと) |
| 技術的特徴 | 観測データに基づく非常に精密な移動予測(実況外挿法が中心)。 | 観測データに加え、時間の経過とともに数値予報モデルの結果を積極的に利用。 |
| 情報の提供名 | 「雨雲の動き」 | 「今後の雨」 |

この辺の勉強はややこしい!頭の中を整理するのは大事だよね!
この分野でまたメモしたい事があれば、その都度追記して行きますが、今日のところはこれで終わり。
ここから追記。
「雨雲の動き」と「今後の雨」の使い分け
気象庁のホームページで提供されている「雨雲の動き」と「今後の雨」は、一般の利用者にとっては提供される情報の内容と技術的な背景の違いが分かりにくく、混同されやすいと思います。
なので、両者の違いを以下の3つの視点から明確にしてみます。
①予測時間とデータの性質による違い
最も大きな違いは、予測の長さと、使われているデータの内容です。
| 項目 | ☔️ 雨雲の動き(高解像度降水ナウキャスト) | 💧 今後の雨(降水短時間予報・降水15時間予報) |
|---|---|---|
| 予測時間 | 最大90分先まで(実質1時間先までが主体) | 最大15時間先まで(長時間) |
| 技術的基盤 | 実況(レーダー)と外挿が主体 | 数値予報モデルの結果が主体(実況補外とブレンド) |
| 目的 | 局地的な急な雨(ゲリラ豪雨)の監視と予測 | 広域的な、数時間後のまとまった雨の予測 |
| 解像度 | 250m〜1kmメッシュ(高精細) | 1km〜5kmメッシュ(広域) |
伝えたいこと
雨雲の動き:「今、どこに雨雲があって、数分後にどう動くか」という極めて短い時間の実況と予測。非常に精度が高い。
今後の雨:「数時間後、その場所でどれくらいの雨が予想されるか」という時間的な余裕を持った予測。
②予測手法(技術的な違い)
両者は予測の初期値と予測手法が根本的に異なります。
A. 雨雲の動き(ナウキャスト)
- 初期値: 多数のレーダー(XRAIN含む)と雨量計で解析した高精細な実況(解析値)。
- 予測手法: 実況補外(外挿)が主。観測された雨雲の形や動きを、そのままの勢いで延長します。
- 技術的特徴: **積乱雲の「発生」を捉えるための数値予報的な技術も一部取り入れられていますが、「移動の再現性」**に最も重点が置かれています。
B. 今後の雨(降水短時間予報)
- 初期値: 解析雨量(気象庁レーダーとアメダスの合成)
- 予測手法: 実況補外と数値予報モデルの結果を時間に応じてブレンドします。
- 技術的特徴:
- 短時間: 外挿が主で、実況の動きを再現します。
- 長時間: 数値予報モデルが主となり、大気の物理法則に基づいて、地形の影響や大気全体の不安定さから新しい雨がどこで発生するかを予測します。
③推奨される使い分け
状況に応じて使い分けると効果的。
急な外出や避難判断時:
- 「雨雲の動き」を見るべきです。
- 「あと30分でここに雨雲が来るか」といった、差し迫った危険や行動の判断に活用します。
長期的な計画や防災準備:
- 「今後の雨」を見るべきです。
- 「夕方までに雨が止むか」「明日の朝にかけて大雨になるか」といった、数時間先の予測と、それに伴う防災行動の検討に活用します。

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