令和3年8月の第56回気象予報士試験の学科一般知識の問題を、
あなたが次に似たような問題を解く時、「ヒント」となるような内容を目指してます!!!

この記事は、令和3年8月の第56回気象予報士試験の学科一般の問題と解答を持っている人向けの内容です。
※私個人の試験問題を解く時の思考例です。(気象業務支援センターとは関係ございません。)
もし第56回気象予報士試験の学科一般の問題と解答を持っていなければ、まずこちらでダウンロードしてください。
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問1:大気の鉛直構造(計算問題)
気圧の平均的な高度分布は,地上(高度0m)で1000hPa,高度約5kmで500hPa,約10kmで250hPa, 約15km で125hPaというように,ほぼ一定の高度間隔ごとに一定の比率で減少している。このとき大気全体の質量の99.9%が含まれる地上からの平均的な高度として最も適切なものを,下記の①~⑤の中から1つ選べ。
① 約 24km
② 約 32km
③ 約 48km
④ 約 64km
⑤ 約 96km
③ 約 48km

いきなり指数関数の問題?!
この問題は、テキストを暗記してなくても解けますね。
気圧は「その上にある空気の重さ」のことなので、「大気全体の質量の99.9%が含まれる」というのは「その上の気圧が 1hPaってことだと思います。
だからこの問題で問われているのは、気圧が 1hPaになるのは高度何kmくらいなん?ってこと。
与えられた条件は、「高度が 5km上昇するにしたがって気圧が 1/2 になる」。
そこでグラフにしてみると、下のようになります。

この問題を読んで、私は下の式を考えました。
気圧 = 1000 × 1/2a = 1000/2a
高度 = a × 5km
気圧が 1hPaになるためには、上の式からの 2a が限りなく 1000 に近くなればいいので・・・
2 の10乗が 1024 。2 の 9乗はその半分の 512。

ということは、2の9乗から10乗の間に答えがあると考えました。
2の9乗から10乗の間の高度は、( 9 × 5 )km ~ ( 10 × 5 )km だから45km ~ 50km。
解答の選択肢の中では、③の約 48kmが当てはまります。
だから答えは③!

「一般気象学(第2版)」 p23 表 2.1
問2:持ち上げ凝結高度・温度を計算しよう
湿潤大気中で空気塊を持ち上げたときの気温等の変化いついて述べた文章の空欄(a),(b)に入る数値の組み合わせとして最も適切なものを,下記の①~⑤の中から1つ選べ。ただし,乾燥断熱減率は10℃/km,湿潤断熱減率は5℃/kmとする。
地上(高度 0km )で気温が25℃,高度 3km で気温が 5℃ の大気中において,周囲の空気と混ぜ合わせずに断熱的に地上から上昇した空気塊の自由対流高度が 3km となった。
このとき,持ち上げ凝結高度は(a)km,そこでの空気塊の温度は(b)℃となる。

② (a) 1, (b) 15

自由対流高度の説明図からわかりますよね ♪

(a)で答えるのは a km。
(b)で答えるのは、高度 a kmにおける気温です。

高度 a kmまでは乾燥断熱減率にしたがって気温が下がり
↓
高度 a kmから自由対流高度までは湿潤断熱減率で気温が下がり
↓
高度 3km で気温は5℃です。

計算式は次のようになります。
5 = 25 – ( 10 × a )- { 5 × ( 3 – a )}
= 25 – 10a – (15 – 5a )
= 25 – 10a – 15 + 5a
= 10 – 5a
a = 1
よって、(a)は1km。
高度 1kmでの気温は
25 – ( 10 × 1 ) = 25 – 10 = 15 ℃
よって、(b)は 15 ℃。

問3:水蒸気圧と混合比
気圧850hPa,温度 5℃ の空気塊の飽和水蒸気圧をA,飽和混合比を B とする。このとき,次の文(a)~(c)の正誤の組み合わせとして正しいものを,下記の①~⑤の中から1つ選べ。
(a)気圧800hPa,温度 5℃ の空気塊の飽和水蒸気圧は A よりも大きい。
(b)気圧850hPa,温度 10℃ の空気塊の飽和混合比は B よりも大きい。
(c)気圧900hPa,温度 5℃ の空気塊の飽和混合比は B よりも大きい。

④ (a)誤, (b)正, (c)誤
混合比については、エマグラムを見たら感覚を掴めると思います。
飽和混合比は、気温が同じなら気圧が低いほど高くなります。

水蒸気の密度と乾燥空気の密度の混合比です。
気温が同じなら・・・
- 気圧が高い方が、飽和混合比は低くなる。
- 気圧が低い方が、飽和混合比は高くなる。
気圧が同じなら・・・
- 気温が高い方が、飽和混合比は高くなる。
- 気温が低い方が、飽和混合比は低くなる。
一方、飽和水蒸気圧は気温で変化しますが、気圧では変わらないです。
飽和水蒸気圧が気圧と関係ないって理由は、飽和水蒸気圧の計算式を見てみるとわかるかな。

- T:温度(K)

expっていうのは、指数関数(exponential)のこと。
「expA」は、eのA乗って意味です。
そんなわけで、気温が同じなら異なる気圧でも、飽和水蒸気圧は同じはず。
以上のことがわかっていれば、問題は解けますね。(о´∀`о)
- (a)気圧800hPa,温度 5℃ の空気塊の飽和水蒸気圧は A よりも大きい?
- 誤:温度が同じなら気圧が低くなっても飽和水蒸気圧は同じなので誤り。
- (b)気圧850hPa,温度 10℃ の空気塊の飽和混合比は B よりも大きい?
- 正:同じ気圧で温度が高いと飽和混合比は大きくなる。
- (c)気圧900hPa,温度 5℃ の空気塊の飽和混合比は B よりも大きい?
- 誤:同じ温度の場合、気圧が高くなると飽和混合比は小さくなる。

雑な説明で恐縮ですが・・・
気圧が同じで気温が高い場合、空気の密度は小さく(隙間があるってこと)、含有可能な水蒸気の量は増えます。
一方、気温が同じで気圧が大きければ、空気の密度が高いイメージなので(隙間が少ないってこと)、含有可能な水蒸気の量が減ります。

「一般気象学(第2版)」 p59~63
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