学科一般~過去問私的解説&ヒント~第56回気象予報士試験

問7:温度風の関係

問題文

図は地表面から高度 0.0001hPaまでの1月の平均気温(K)の緯度高度分布であり,経度方向に一様な東西風(地衡風)が吹いているものとする。南北温度傾度から温度風の関係を考慮して,図中のア~エで示すの箇所における東西風の西風成分の鉛直方向の変化の組み合わせとして適切なものを,下記の①~⑤の中から1つ選べ。なお,西風成分の鉛直方向の変化は,高度が高くなるにつれて西風成分が大きくなる場合を正とする。

① (a)正, (b)負, (c)正, (d)

温度風の関係を考慮して地衡風の西風成分が高度とともに高くなる場合を「正」,その逆を「負」で表現すればいいってことですね。▶︎温度風の関係

ということは・・・

はれの
はれの

この図は東側から見た図なので

  • 南半球
    正→左側が低温&右側が高温
    負→左側が高温&右側が低温
  • 北半球
    正→左側が高温&右側が低温
    負→左側が低温&右側が高温

もう答えはわかりますよね!(о´∀`о)

  • ア:南半球で「左側が低温&右側が高温」→正
  • イ:南半球で「左側が高温&右側が低温」→負
  • ウ:南半球で「左側が低温&右側が高温」→正
  • エ:北半球で「左側が高温&右側が低温」→正
ここに書いてあるよ
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問8:発達期の温帯低気圧

問題文

北半球における発達期の温帯低気圧について述べた次の文(a)~(d)の正誤の組み合わせとして正しいものを,下記の①~⑤の中から1つ選べ。

(a)低気圧周辺の相対的に高温の領域では北よりの風で上昇流,低温の領域では南寄りの風で下降流となっている。

(b)地上の低気圧の中心は上層の気圧の谷の東側にある。

(c)低気圧は南北温度傾度の大きい偏西風帯で発達し,熱を高緯度に運んでいる。

(d)低気圧の発達には水蒸気の凝結による熱エネルギーの供給が不可欠である。

⑤ (a)誤, (b)正, (c)正, (d)誤

発達中の温帯低気圧では・・・

相対的に高温の領域って前線の南側ってことですよね?

ということは「南寄りの風」でしょうから、(a)の「低気圧周辺の相対的に高温の領域では北よりの風で上昇流,低温の領域では南寄りの風で下降流となっている。」は誤りですね。

発達期の温帯低気圧なので、地上の低気圧の中心と上層の気圧の谷を結ぶ軸は西に傾いています。

だから(b)の「地上の低気圧の中心は上層の気圧の谷の東側にある。」は正しい!

低気圧は南北温度傾度の大きい偏西風帯で発生します。
そして低緯度の熱を高緯度に運んでいます。

だから(c)の「低気圧は南北温度傾度の大きい偏西風帯で発達し,熱を高緯度に運んでいる。」は正しい!

温帯低気圧は、相対的に冷たい空気と暖かい空気の位置エネルギーを運動エネルギーに変えて発達します。

理論上全く水蒸気がなかったとしても、温帯低気圧は発達できるのです。

だから(d)の「低気圧の発達には水蒸気の凝結による熱エネルギーの供給が不可欠である。」は誤り!

はれの
はれの

水蒸気の凝結による熱エネルギーの供給が不可欠なのは、熱帯低気圧ですね。

ここに書いてあるよ
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問9:積乱雲

問題文

孤立した積乱雲と複数の積乱雲が組織化したマルチセル型のメソ対流系を比較して述べた次の文章の下線部(a)~(d)の正誤の組み合わせとして正しいものを,下記の①~⑤の中から1つ選べ。

孤立した積乱雲は,発生から衰弱までの時間が一般的に(a)10分間から20分間程度である。このように寿命が短い主な理由は,積乱雲の発達が進むとともに,積乱雲の内部において(b)降水粒子の荷重や融解・蒸発にともなう冷却により,上昇流が維持できなくなるためである。

組織化されたマルチセル型のメソ対流系は,孤立した積乱雲が発生するときよりも,一般風の鉛直シアーが(c)小さいときに形成されることが多い。マルチセル型のメソ対流系では,(d)対流系内の積乱雲の下降流域から吹き出した気流が周辺の高温高湿な気流とぶつかって空気を持ち上げ,新たな対流雲が発生・発達して積乱雲に成長し,世代交代が持続的に起きる。この結果,マルチセル型のメソ対流系は孤立した積乱雲より長寿命となる。

③ (a)誤, (b)正, (c)誤, (d)

孤立した積乱雲の発生から衰弱までにかかる時間は、30分〜60分です。

だから(a)の「10分間から20分間程度である。」は誤り!

積乱雲が30分〜60分で衰弱する理由は、次のようなものです。

  • 降水粒子が落下の際に、周囲の空気を引きずり下ろす。
  • 落下する降水粒子(氷)が解ける際に、周囲の空気を冷やす。
  • 雲底下の空気は飽和していないから、降水粒子が蒸発するときに周囲の空気を冷やす。

だから(b)の「降水粒子の荷重や融解・蒸発にともなう冷却により,上昇流が維持できなくなるためである。」は正しい。

はれの
はれの

ちなみに、孤立した積乱雲が発達するときは、鉛直シアが弱い(小さい)ときです。

逆に鉛直シアが強い(大きい)ときに発達するのが、マルチセル型のメソ対流系です。

だから(c)の「小さいときに形成されることが多い。」は誤り!

マルチセル型のメソ対流系ができるしくみは、すでに発達した積乱雲からの冷たい下降流が、周囲の暖湿な空気を押し上げて新たな積乱雲を発生させるというものです。

だから(d)の「対流系内の積乱雲の下降流域から吹き出した気流が周辺の高温高湿な気流とぶつかって空気を持ち上げ,」は正しい!

ここに書いてあるよ

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