目次
問10:成層圏のオゾンについて
成層圏のオゾンについて述べた次の文(a)~(d)の正誤の組み合わせとして正しいものを,下記の①~⑤の中から1つ選べ。
(a)高度 20km~ 60km における気温の経度平均が夏極に近いほど高温であるのは,オゾンの紫外線吸収に伴う加熱量がより多くなるからである。
(b)オゾンは主として高緯度の成層圏で生成され,蓄積される。
(c)北半球の中高緯度のオゾン全量は,冬から春にかけた時期が他の時期よりも多い。
(d)南極では,極渦が弱い年ほど成層圏が低温になりやすく,オゾンホールが発達する傾向がある。

② (a)正, (b)誤, (c)正, (d)誤
高度約25kmを中心にオゾンを多く含む層をオゾン層といいます。

そして紫外線によるオゾンが発生・消滅の反応の際に、熱を放出するのでオゾン層から成層圏界面(約50km)までの高度では気温が高くなります。
また夏極ほど太陽光が強くなりますよね。
だから(a)の「高度 20km~ 60km における気温の経度平均が夏極に近いほど高温であるのは,オゾンの紫外線吸収に伴う加熱量がより多くなるからである。」は正しい!
オゾンは酸素分子と紫外線によって生まれます。

だから紫外線が降り注ぐ量が多い低緯度で、オゾンが多く生成されるわけです。
というわけで、(b)の「オゾンは主として高緯度の成層圏で生成され,蓄積される。」は誤り!
低緯度で生成されたオゾンは成層圏下部の大気の流れにのって高緯度方向に運ばれ、蓄積されます。

その結果、冬極の春頃でオゾン量が最大となるのです。
(オゾンの輸送は冬季に最も活発)
だから(c)の「北半球の中高緯度のオゾン全量は,冬から春にかけた時期が他の時期よりも多い。」は正しい〜。
極域の成層圏では、冬季にとても気温が低い低気圧(極渦)ができ、オゾンホールが発生しやすくなります。
その仕組みはこんな感じ↓
極域成層圏雲:水蒸気や硝酸などが凝結してできる雲。

極渦が強いほど冬極の成層圏の気温は安定して下がり、オゾンホールが発達しやすくなります。
だから(d)の「南極では,極渦が弱い年ほど成層圏が低温になりやすく,オゾンホールが発達する傾向がある。」は誤り。

問11:エルニーニョ現象発生時の天候の特徴
エルニーニョ現象発生時の天候の特徴について述べた次の文章の下線部(a)~(d)の正誤の組み合わせとして正しいものを,下記の①~⑤の中から1つ選べ。
エルニーニョ現象が発生しているときは,ペルーやコロンビアなどの南米北部では,平均気温が平年に比べて(a)低い傾向が,また,インドネシアやオーストラリア北部などの西部太平洋熱帯域では,降水量が平年に比べて(b)多い傾向がみられる。
日本では,西日本の夏季(6~8月)において平均気温が平年に比べて(c)高い傾向が,東日本の冬季(12~2月)では,平均気温は平年に比べて(d)高い傾向がみられる。

⑤ (a)誤, (b)誤, (c)誤, (d)正
エルニーニョ発生時のペルー,コロンビアなどの沿岸では海水温が平年より高くなっています。
だから気温も平年より高くなるってことで・・・(a)の「低い傾向」は間違い。
またエルニーニョが発生している時、大気の対流活動が活発になる地域が平年より東に移動する傾向があるとされています。
ということは、太平洋の西サイドにあるインドネシアやオーストラリア北部などの西部太平洋熱帯域では、降水量が平年に比べて少なくなる(傾向がある)ので、(b)の「多い傾向がみられる。」は誤り。
一方、エルニーニョ現象の日本付近への影響として、太平洋高気圧の張り出しが弱くなる傾向があります。
だから日本では、西日本の夏季(6~8月)において平均気温が平年に比べて低い傾向となります。
というわけで(c)の「高い傾向」は誤り。
さらに冬季、西高東低の気圧配置が弱まり、気温は平年より高めになる傾向があるので(d)の「高い傾向がみられる。」は正しい。

問12:予報業務許可事業者への罰金
気象の予報業務の許可を受けている者(「予報業務許可事業者」という)に罰則が適用される事例について述べた次の文(a)~(d)の正誤について,下記の①~⑤の中から正しいものを1つ選べ。
(a)予報業務許可事業者が,当該予報業務の目的及び範囲に係る気象庁の警報事項を予報業務の利用者に伝達することを怠った。
(b)気象庁長官による予報業務の改善命令を受けた予報業務許可事業者が,改善命令に違反して業務を行った。
(c)予報業務許可事業者が,予報業務のうち現象の予想を気象予報士以外の者に行わせた。
(d)予報業務許可事業者が,気象庁長官の認可を受けずに予報業務の範囲を変更して業務を行った。
①(a)のみ誤り
②(b)のみ誤り
③(c)のみ誤り
④(d)のみ誤り
⑤ すべて正しい
①(a)のみ誤り

気象業務法の第七章ですね。
予報業務許可を得た事業者は、当該予報業務の目的及び範囲に係る気象庁の警報事項を当該予報業務の利用者に迅速に伝達するように努めなければなりません。(「義務」ではなく「努力義務」)
でも「迅速に伝達できなから」という理由での罰則はありません。
だから(a)の「予報業務許可事業者が,当該予報業務の目的及び範囲に係る気象庁の警報事項を予報業務の利用者に伝達することを怠った。」は誤り。

迅速に伝達せず業務改善命令を受け、その命令にも従わなければ罰則もあるかも。
でもこの問題文には当てはまりません〜
上の吹き出しでも書きましたが、改善命令に違反した業務を行なった場合、30万円以下の罰金に処せられます。(第七章 第四十七条)
だから(b)の「気象庁長官による予報業務の改善命令を受けた予報業務許可事業者が,改善命令に違反して業務を行った。」は正しい。(罰則が適用される)
予報業務許可を受けた事業者が、現象の予想を気象予報士以外に行わせると、50万円以下の罰金に処せられます。(第七章 第四十六条)
だから(c)の「予報業務許可事業者が,予報業務のうち現象の予想を気象予報士以外の者に行わせた。」は正しい。(罰則が適用される)
予報業務許可事業者が予報業務の目的又は範囲を変更しようとするときは、気象庁長官の認可を受けなければなりません。(第三章 第十九条)
この第十九条の規定に違反して認可を受けないで予報業務の目的又は範囲を変更した者は、50万円以下の罰金に処せられます。(第七章 第四十六条)
だから(d)の「予報業務許可事業者が,気象庁長官の認可を受けずに予報業務の範囲を変更して業務を行った。」は正しい。(罰則が適用される)
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