学科専門~過去問私的解説&考察~第61回気象予報士試験・問9

9:発達中の温帯低気圧

北半球の偏西風帯における、東進する発達中の温帯低気圧について述べた次の文(a)~(d)の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の①~⑤の中から1つ選べ。

(a)温帯低気圧の発達には、水蒸気の凝結によって放出される潜熱の補給が不可欠である。

(b)温帯低気圧の進行方向前面では暖かい空気が上昇し、後面では冷たい空気が下降することにより、温帯低気圧の運動エネルギーが増大している。

(c)2つの異なる等圧面の鉛直方向の間隔(高度差)は、地上の温帯低気圧の東側では西側に比べて大きい。

(d)温帯低気圧に伴う温暖前線では、寒冷前線と比較して層状性の雲が形成されやすく、乱層雲などから降水がもたらされる。

③ (a)誤,(b)正,(c)正,(d)正

(a)発達するために必要なもの

水蒸気の凝結によって放出される潜熱で発達するのは熱帯低気圧ですね。

温帯低気圧の発達には「有効位置エネルギー」から「運動エネルギー」に変換されることが不可欠です。

よって(a)の「温帯低気圧の発達には、水蒸気の凝結によって放出される潜熱の補給が不可欠である。」は誤り。

(b)運動エネルギー

温帯低気圧の進行方向前面では暖かい空気が上昇し、後面では冷たい空気が下降することにより、有効位置エネルギーが運動エネルギーに変換され、発生・発達のエネルギーとなります。

よって(b)の「温帯低気圧の進行方向前面では暖かい空気が上昇し、後面では冷たい空気が下降することにより、温帯低気圧の運動エネルギーが増大している。」は正しい。

(c)等圧面の鉛直方向の間隔

「2つの異なる等圧面の鉛直方向の間隔(高度差)とは、要するに気柱の気温差と考えて良いでしょうね。

地上の温帯低気圧の東側で鉛直方向の間隔(高度差)が西側に比べて大きいということは、東側の方が気柱の気温が高いということです。

北半球では地上低気圧の東側で暖気が北上し、寒気の上に昇ります。
また西側で寒気が南下し、暖気の下に潜り込みます。

以上のことから、(c)の「2つの異なる等圧面の鉛直方向の間隔(高度差)は、地上の温帯低気圧の東側では西側に比べて大きい。」は正しい。

(d)温暖前線の雲

温暖前線に伴う代表的な雲は、次のような雲です。

  • 巻雲
  • 巻層雲
  • 高積雲
  • 高層雲
  • 乱層雲

温暖前線は寒冷前線と比較すると前線面の傾きは緩やかです。

また、一般的に温暖前線の降水は、高層雲や乱層雲などの層状雲からもたらされます。

よって(d)の「温帯低気圧に伴う温暖前線では、寒冷前線と比較して層状性の雲が形成されやすく、乱層雲などから降水がもたらされる。」は正しい。

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