学科専門~過去問私的解説&考察~第61回気象予報士試験・問2

2:ウィンドプロファイラ

気象庁が行っているウィンドプロファイラ観測について述べた次の文(a)~(d)の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の①~⑤の中から1つ選べ。

(a)ウィンドプロファイラは、上空に向かって発射された電波が大気の乱れ等で散乱されて戻ってきた時の電波の強度の情報を利用して、上空の風向風速を測定する装置である。

(b)雨が降っている場合、大気の乱れによる電波の散乱よりも雨粒による散乱の方が強いため、測定された鉛直方向の速度は雨粒の落下速度を捉えたものとなる。

(c)上空の大気が湿っているほど、電波が水蒸気によって減衰する量が多くなることから、観測可能な高度は低くなる傾向がある。

(d)ウィンドプロファイラの観測データは、大気現象の監視や大気の立体構造の把握に利用されるとともに、数値予報の初期値作成にも利用されている。

④ (a)誤,(b)正,(c)誤,(d)正

(a)観測方法

ウィンドプロファイラは発射した電波と大気に散乱されて戻ってきた電波の周波数の変化から、上空の風向・風速を観測しています。

だから(a)の「電波の強度の情報を利用して、上空の風向風速を測定する装置である。」の部分が誤りですね。

(b)雨が降っている場合

降水粒子は大気の粒子よりずっと大きな粒子です。

だから雨が降っている場合、雨粒による電波の散乱の方が大気による散乱より大きくなります。

その結果、観測データは降水粒子の動きを捉えたものになってしまうので・・・

(b)の「雨が降っている場合、大気の乱れによる電波の散乱よりも雨粒による散乱の方が強いため、測定された鉛直方向の速度は雨粒の落下速度を捉えたものとなる。」は正しい!

(c)大気の乾湿と観測高度

この内容、実技試験でも問われましたね。

上空の大気が乾燥していると散乱して戻ってくる電波が少なくなるので、正しいデータを得られにくくなります。

(c)の「上空の大気が湿っているほど、電波が水蒸気によって減衰する量が多くなることから、観測可能な高度は低くなる傾向がある。」は逆です。だから誤り。

(d)観測データの利用

(d)の「ウィンドプロファイラの観測データは、大気現象の監視や大気の立体構造の把握に利用される」はその通り。

また、観測データはラジオゾンデ観測データとともに、数値予報モデルの初期値として利用します。

だから「観測データは数値予報の初期値作成にも利用されている。」も正しい!

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