学科一般~過去問私的解説&ヒント~第56回気象予報士試験

問4:雲粒の成長

問題文

雲の中の水滴の成長について述べた次男文(a)~(d)の正誤の組み合わせとして正しいものを.下記の①~⑤の中から1つ選べ。

(a)水蒸気の凝結による水滴の成長過程では,水滴の半径が小さいほど単位時間の半径の増加率は大きい。

(b)水滴同士が衝突・併合して成長する過程では,一般に水滴が大きく成長するにつれて単位時間の半径の増加率は小さくなる。

(c)暖かい雨の形成過程における水蒸気の凝結と水滴同士の衝突・併合による水滴の成長はともに遅く,水滴が成長して降水がはじまるまでに1時間以上かかる。

(d)積乱雲の中では強い鉛直流の中で短時間のうちに水滴が大きく成長し,水滴の直径が 10mm を超えることがある。

③ (a)正, (b)誤, (c)誤, (d)誤

水滴の成長過程は、次の順序で進みます。

水滴の成長過程
  1. 凝結過程
  2. 衝突・併合過程

凝結過程では、水滴の半径が急激に成長(半径の増加率が大きい)し、時間と共に水滴の半径の成長は緩やかになる(半径の増加率は小さくなる)。

水滴の凝結過程

だから(a)の「水蒸気の凝結による水滴の成長過程では,水滴の半径が小さいほど単位時間の半径の増加率は大きい。」は正しい!

ここに書いてあるよ

水滴の衝突・併合過程では、大きさと落下速度の違う水滴たちが衝突することで水滴が成長します。

水滴の場合はとっても軽いものなので、水滴が大きい(重い)ほど落下速度は速くなり、他の水滴と衝突・併合する回数が増えます。

その結果、単位時間当たりの水滴半径増加率は大きくなるわけです。

水滴の衝突・併合過程

だから(b)の「水滴同士が衝突・併合して成長する過程では,一般に水滴が大きく成長するにつれて単位時間の半径の増加率は小さくなる。」は誤り!

暖かい雨の形成過程では、水蒸気の凝結と水滴同士の衝突・併合による水滴の成長は速く,水滴が成長して降水がはじまるまでに30分ちょいの計算になる。

だから(c)の「暖かい雨の形成過程における水蒸気の凝結と水滴同士の衝突・併合による水滴の成長はともに遅く,水滴が成長して降水がはじまるまでに1時間以上かかる。」は誤り!

ここに書いてあるよ

「一般気象学(第2版)」 p91 ~

【オンスク.JP】 「気象予報士講座」第4章 2

雲の中の雨粒は、半径が大きくなるにしたがって表面張力の影響が弱くなります。

さらに水滴の形も振動するようになり、加えて雨粒同士が衝突することで、落下しながら分裂していくのです。

そんなわけで実際に観測された雨粒で一番大きいのは 直径約 8mm。

この大きさを超える雨粒は、地上で観測されていないそうです。

だから(d)の「積乱雲の中では強い鉛直流の中で短時間のうちに水滴が大きく成長し,水滴の直径が 10mm を超えることがある。」は誤り!

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問5:大気の温室効果の原理

問題文

地球大気の温室効果の原理について述べた次の文章の下線部(a)~(d)の正誤の組み合わせとして正しいものを,下記の①~⑤の中から1つ選べ。ただし,以下の条件が満たされているものと仮定する。

  • 太陽放射は大気層を完全に透過する。
  • 地表面は黒体で全ての放射を完全に吸収する。
  • 大気は地表面からの黒体放射を完全に吸収する。
  • 大気の温度は一様であり,大気および地表面は放射平衡状態にある。

地球に大気がないときの,地表面が受け取る太陽放射量と放射平衡状態にある地表面温度を絶対温度 T0 とする。図のように大気がある時には,大気上端の放射収支から,大気の上向の長波放射量は (a)地表面が吸収する太陽放射量と等しい。一方,地表面の放射収支から,太陽放射量と大気の下向き長波放射量の和は地表面からの黒体放射量と等しい。また,黒体放射量は絶対温度の (b)4乗に比例する。これらより,大気の温度は(c)21/4 T0 となり,地表面温度は (d) T0 となる。

② (a)正, (b)正, (c)誤, (d)誤

情報を整理しよう。

はれの
はれの

大気がなかった場合、太陽放射が全て地表面に届く。

地表面温度はT0

太陽放射強度はσT04

ですね。▶︎ステファン・ボルツマンの法則

次に・・・

大気の気温を Ta とし
地表面温度を Tg とすると

次の図のように考えられます。

大気上端の放射収支

σT04 = σTa4

地表面の熱収支

σT04σTa4 = σTg4

以上のことから・・・

太陽放射量と大気の上向の長波放射量は釣り合うはずなので、 (a)の「地表面が吸収する太陽放射量と等しい。」は正しい!

また、ステファン・ボルツマンの法則より、黒体温度は黒体放射量は絶対温度の4乗に比例する ので (b)も正しいです。

Ta (大気の温度)を T0 で表すと、「Ta = T0 」になります。
だから(c)の「21/4 T0 」は誤り。

また、Tg地表面の温度)を T0 で表すと、「Tg = 21/4 T0 」になります。
だから (d) の「T0 」は誤り。

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問6:地衡風の風速を求める式

問題文

北緯 30° と北緯 45° の2つの地点で,いずれも東向きで風速 100m/s の地衡風が吹いているとする。

この2つの地点で,水平気圧差が 4hPa となる南北方向の距離をΔY 30 ,ΔY45  としたとき,ΔY 30ΔY45 の比(ΔY 30ΔY45 )の値として最も適切なものを,下記の①~⑤の中から1つ選べ。ただし,2つの地点で大気の密度は等しく,地表の摩擦の影響は無視できるとし,sin30°=1/2, cos30°=1.7/2, sin45°=1/1.4, cos45°=1/1.4とする。

① 0.6
② 0.7
③ 1
④ 1.4
⑤ 1.7

④ 1.4

え、cos って使います?フェイク?

はれの
はれの

とりあえず地衡風の式がわかっていれば計算するだけですね。

▶︎地衡風の式

緯度30°
緯度45°
はれの
はれの

この段階では計算はしなくていいです。

上の式の比を出せばいいので・・・

ΔY 30ΔY45 = 2 / 1.4 となります。

2 / 1.4 を計算すると、答えは1.42…なので四捨五入して、答えは「1.4」になります。

ここに書いてあるよ

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