令和2年1月の第53回気象予報士試験の学科・予報業務に関する専門知識を、晴野(はれの)だったらこう解く!という私の「考え方や知っていること」を共有します。
おすすめテキスト「イラスト図解 よくわかる気象学 専門知識編」の何ページに書かれているかもメモしているので、勉強の際に役立ちます。

令和2年1月の第53回気象予報士試験の学科・予報業務に関する専門知識の問題と解答を持っている人向けの内容です。
※私個人の試験問題を解く時の思考例です。(気象業務支援センターとは関係ございません。)
もし第53回気象予報士試験の学科一般の問題と解答を持っていなければ、まずこちらでダウンロードしてください。
\ まずは過去問と解答をダウンロードしてね! /
目次 非表示
- 問1:地上観測・風の観測について
- 問2:地上観測・観測機器と項目について
- 問3:地上観測・ウィンドプロファイラについて
- 問4:数値予報の計算手法CFL条件
- 問5:天気予報ガイダンスについて
- 問6:数値予報プロダクトの利用について
- 問7:北半球の寒冷低気圧について
- 問8:積乱雲とそれに伴う現象について
- 問9:気象衛星の可視画像と赤外画像の見方
- 問10:温位・相当温位・飽和相当温位について
- 問11:台風に伴う風について
- (c)【台風の風】等圧線の接線成分を鉛直断面図で見ると・・・
- 問12:降水短時間予報について
- 問13:竜巻発生確度ナウキャスト&竜巻注意情報について
- 問14:降水予報の的中率・見逃し率
- 問15:大気と海洋の特徴について
- 参考書籍
- 最後に・・・
問1:地上観測・風の観測について
気象庁が行っている風の地上気象観測について述べた次の文章の下線部(a)~(c)の正 誤の組み合わせとして正しいものを,下記の1~5の中から 1 つ選べ。
地上気象観測では,風速は (a)前 5 分平均値であり,日最大風速は該当日における, 1 分ごとに算出した風速の最大値である。
図は,ある地点の瞬間風速の時系列を示したものであり,8 時 51 分~9 時 5 分,9 時6分~9時8分,9時9分~9時20分それぞれの期間における任意の時刻の前1分 平均値は,4.0m/s,10.0m/s,5.0m/s である。
このとき,9 時 10 分の風速は (b)8.0m/s である。また,この日,この図の時間帯に 日最大風速が観測されたとすると,その起時は (c)9 時 8 分である。


⑤(a)誤,(b)誤,(c)誤

風速の問題は昔からよく出題されます。
気象庁の「よくある質問集」にも書かれていますよ。→気象庁
風速系のワードをまとめた表です。↓
風速(平均風速) | 観測時刻までの10分間の平均風速 |
瞬間風速 | 3秒間(0.25秒間隔の計測)の平均値 (値は12個) |
最大風速 | 10分間の平均風速の中で最も大きな値 |
最大瞬間風速 | 瞬間風速(3秒間平均風速)の最も大きな値 |
日最大瞬間風速 | 1日の中で最も大きな最大瞬間風速 |
日最大風速 | 1日の中で最も大きな最大風速(10分間の平均風速) |
8時の風速は、7時50分から8時0分までの「10分間の平均値」です。
私の計算方法はこちら↓

風速は6.0m/s という計算結果になりました。
起時ってちょっと一般には聞き馴染みないですよね。

例えば「降水の起時」なら、「降水が終わった時刻」のことなので、風速でも「終わりの時刻」という考え方でいいはずです。
風が、15分間4.0m/sで吹き→3分間10.0m/sで吹き→12分間5.0m/sで吹いているので、この時間帯で最も平均風速が大きくなるのは
9時5分から9時15分
ですよね!
ということは、「起時」は
9時15分!
18ページに、詳しく書かれています。
ただ「起時」については書かれてないです。
問2:地上観測・観測機器と項目について
気象庁で使用している電波や光を利用した観測機器(a)~(c)と、これらを用いて行う観測対象ア~オの組み合わせとして適切なものを、下記の①~⑤の中から1つ選べ。


②
- (a)ドップラーレーダー→降水強度の分布
- (b)ブリューワー分光光度計→上空のオゾン量
- (c)シーロメーター→雲底の高さ

観測機器のオタク度を測られるような問題でしたね…。
観測機器 | 観測対象 |
---|---|
ドップラーレーダー | 降水強度の分布 |
ブリューワー分光光度計 | 上空のオゾン量 |
シーロメーター | 雲底の高さ |
引用:気象庁
設置数 | 全国に20か所設置 |
観測項目 | 全方位において、半径数百kmの雨や雪の強さ・降水域の風を観測 |
観測方法 | アンテナを回転させながら、全方位にマイクロ波の電波を発射し、反射して戻ってくる電波を受信して観測する。 |
利用先 | ・防災情報 ・降水短時間予報 ・降水ナウキャストなど |
これは気象予報士を目指すなら、知っておきたい必須の観測機器です。
引用:気象庁
設置場所 | 世界中の100以上の地点 |
観測項目 | 主に紫外線(オゾン) |
観測時間 | 紫外域日射観測は、日の出前30分から日の入後30分までの毎正時 |
受験勉強的には、ブリューワー分光光度計について、深掘りしなくても良いと思うんだけど・・・
- ブリューワー分光光度計
- ドブソン分光光度計
がオゾンの観測をしてるってことは、覚えておいてください。
引用:那覇航空測候所
シーロメーターは、雲底の高さを測定して航空機の着陸を助けるために、空港で使われています。
地上からレーザーを発射して、雲に当たったレーザーが帰ってくるまでの時間で雲底の高さを測定しているのです。

ちなみに、シーロメーターの上部にあるトゲトゲは、鳥除けだそうです。(о´∀`о)
76ページ
178ページ
問3:地上観測・ウィンドプロファイラについて
気象庁のウインドプロファイラについて述べた次の文(a)~(d)の正誤について、下記の①~⑤の中から正しいものを1つ選べ。
(a)上空に向かって発射された電波が、大気の乱れ等で散乱されて戻ってきたときの電波の強度の情報を利用して、上空の風向風速を測定する装置である。
(b)雨が降っている場合、大気の乱れによる散乱よりも雨粒による散乱が強いため、測定された鉛直方向の速度は雨粒の下降速度を捉えたものとなる。
(c)大気が乾燥しているときは電波の減衰が少ないので、高気圧の圏内では観測可能な高度が高くなる傾向がある。
(d)鉛直方向の分解能が高いので、接地境界層内の風の詳細な鉛直構造を把握するのに適している。

② (b)のみ正しい!

ウィンドプロファイラの特徴を表にまとめました。↓
観測項目 | 上空の水平流や縁直流(風) |
観測方法 | 上空に電波を発射して、反射して戻ってきた電波を受信・分析して観測している。(ドップラー効果を利用) |
観測地点 | 全国に31カ所 |
空気の湿度が高い時の特徴 | 水蒸気によって電波が散乱されやすくなり、上空約5kmまで観測できる。 |
空気が乾燥している時の特徴 | 空気が湿っている時より、観測できる高度が低い。 |
雨が降っている時の特徴 | 電波がよく散乱されるので、雨が降っている時の方が高いところまで観測できる。(上空約7~9km) |
苦手なこと | 雨が降っている時の、鉛直方向の風の観測 |
ウィンドプロファイラは上空の水平流や縁直流(風)を測定する装置で
雨が降ってる時に測定できる下降流は、実際の下降流というより雨粒の下降速度だし
空気中に水蒸気が少ない時は、あまり高いところまで観測できないし
だから詳細な鉛直構造の把握なんて、そんなに得意じゃない。
と私・晴野は理解してます!
183ページ〜185ページ
問4:数値予報の計算手法CFL条件
数値予報の計算手法について述べた,数式を含む次の文章の空欄(a)~(d)に入る語句 の組み合わせとして正しいものを,下記の1~5の中から 1 つ選べ。
数値予報において、安定な計算を行うための条件にCFL条件と呼ばれるものがあり、以下の式で表される。

この条件によると,例えば,格子間隔が 2km で風速が 50 m/s の風が吹く場合,積 分時間間隔は (c) より短くする必要がある。また,計算領域や鉛直方向の層数などの 他の条件を変えずに水平分解能を2倍にするためには,(d) の計算量が必要となる。

⑤
- (a)格子間隔
- (b)積分時間間隔
- (c)40秒
- (d)8倍
CFL条件・またはクーラン条件と言いまして・・・コンピュータが安定な計算をするための条件のことです。

- ΔX:格子点間隔
- Δt:タイムステップ(積分時間間隔)
- C:流れの速さ
コンピュータで安定な計算をするために、このCFL条件を満たさなければなりません。
CFL条件で言えること | タイムステップに上限がある。 ΔX/ΔtはCより大きくなければならない。 |
CFL条件の式で出来ること | タイムステップの大きさを求めることができる。 |
(a)と(b)はそのまんま答えれるとして、(c)は算数の問題です。


答えは40秒より小さいって出ましたね。
単純に水平分解能が2倍になった時、3次元だとどうなるか?って問題ですよね。
縦×横×高さが2倍ずつ増えるので、私は
2×2×2=8
と計算しました!
228ページ〜223ページ
問5:天気予報ガイダンスについて
気象庁の天気予報ガイダンスについて述べた次の文(a)〜(c)の下線部の正誤の組み合 わせとして正しいものを,下記の1〜5の中から 1 つ選べ。
(a) 天気予報ガイダンスの主な役割として,数値予報による予測値を補正することや, 数値予報が直接予測しない要素の予測値を作成することが挙げられる。
(b) 降水量ガイダンスでは,頻度バイアス補正と呼ばれる手法により,予測降水量の 頻度分布が実況降水量と同様の頻度分布になるように予測値を補正している。その 効果が期待できるのは主に,激しい雨のような発生頻度の少ない現象に対する補正 についてである。
(c) ガイダンスを作成する際に利用される手法の 1 つである層別化は,時刻,季節な どにデータを分けて学習して,係数を求め,予測に利用する手法である。これによ り,例えば数値予報モデルが昼と夜で異なるバイアスを持つ場合も,そのバイアス 特性に応じた適切な誤差の補正が期待できる。

① (a)正,(b)正,(c)正

天気予報ガイダンスとは、「予報支援資料」のこと。
例えば・・・
- 降水量
- 降水確率
- 最高(最低)気温
などです。
天気予報ガイダンスの特徴は
- 数値予報では十分表現できない地形的な効果を、関係式の中に取り込むことができる。
- 天気の予報(カテゴリー予報)だけでなく、気温や降水量の予報(量的予報)にも十分利用できる。
- 数値予報では直接予測できない「降水確率」などを計算できる。
要するに、「予測値と観測値の誤差」を取り入れていくことで、予報値を修正できるし、数値予報が直接予報できないような確率予想の計算だってできちゃうってこと。
「バイアス」は「偏り」のことですが・・・
降水量ガイダンスの頻度バイアスとは、発生頻度は低い大雨などの重要な予報の精度を上げるために、発生頻度が他と同じになるように補正すること。
この気象庁のpdfに記載されています。→高解像度全球モデル
層別化は
- 場所
- 対象時刻
- 予報時間
- 季節
などで起きる数値予報の誤差をいい感じの精度にするために、予測式の係数を変えることを言います。

「昼と夜でバイアス(偏り)があっても補正できる」ってことですね!
気象庁の資料にも書いてあります。→ガイダンス
ガイダンスについては280ページ〜290ページに書かれていますが、ここの知識だけで(b)と(c)を解くのは難しいですね。
▼問6以降は次のページをご覧ください。