目次
問11:台風に伴う風について
台風に伴う風に関して述べた次の文(a)〜(d)の正誤の組み合わせとして正しいものを, 下記の1〜5の中から 1 つ選べ。
(a) 台風に伴う風は一般に傾度風で近似でき,台風を取り巻く等圧線に沿った流れと なっているが,大気境界層内では地面摩擦の影響により中心に向かう流れが生ずる。
(b) 一般に,ある地点で時間の経過とともに風向が時計回りに変化しているとき, その地点は台風の進行方向の右側にあたる。
(c) 台風中心付近(ただし,台風の眼の中を除く)で,等圧線の接線方向の風速は,対 流圏中層と対流圏界面の間の高度で最も大きくなる。
(d) 台風が北上して温帯低気圧に変わりつつある段階では,強風域が広がったり, 風が中心から離れた場所で最も強くなったりすることがある。

② (a)正, (b)正,(c)誤,(d)正

台風の風についての問題ですが、台風に限らず、北半球の低気圧の風について理解していれば解けますよね。
では順番にいってみよー!
答えは〇!
大気境界層は地上1500mくらいまで。
大気境界層は、対流圏の下層にあって、一番地上の影響を受けやすいところです。
当然風は地表面との摩擦で風向きが変わるので、台風の風がより中心に向かうことになるのです。
ここにも書いてあります。↓
- 「イラスト図解 よくわかる気象学 第2版」の258ページ~
- 「一般気象学 第2版」の147ページ~
台風の進行方向右側にある観測地点で、風向がどう変わるのかを問う問題です。
この手の問題は、イラストに書いちゃう方が早い!ってことで、描きました。




観測地点の風向、「南東→南→南西」と、時計回りになってますね。(*´꒳`*)
台風の等圧線の接線方向の風速で一番強いところはどこかって問題ですよね。
これは「一般気象学 第2版」にそのまんま答えになる図がありました。(238ページ図8.31)

図8.31によると、風が一番強いのは下層〜中層です。
もっと詳しく言うと
「台風の目から100km~200km離れたところの1500~5000mの高度で一番風速が大きい。」
間瀬博文さんの「台風0418号ソングダーの真実」という論文にも同じ図画使われています。
引用:間瀬博文さんの論文「台風0418号ソングダーの真実」
引用:気象庁
上の図のように、台風と温帯低気圧では空間のスケール(この場合は水平スケール)が違います。

一般的に温帯低気圧の方が大きい!
そして温帯低気圧になるってことは、新たにエネルギーが供給されてるわけなので、「強風域が広がることもある」。
そして最大風速を観測する場所も、台風ではないわけなので、中心付近とは限りません。
問12:降水短時間予報について
気象庁は,2018 年 6 月,降水短時間予報の予報時間を 6 時間先までから 15 時間先 までに延⻑した。この降水短時間予報について述べた次の文(a)〜(c)の正誤の組み合わせ として正しいものを,下記の1〜5の中から 1 つ選べ。
(a) 15 時間先までの降水短時間予報は,夜間から明け方に大雨となる見込みを暗くなる 前の夕方の時点で提供することから,早めの防災対応につながることが期待される。
(b) 降水短時間予報は,1時間ごとの1時間降水量を,6時間先までは1km四方で, 7〜15 時間先までは 5km 四方で予報している。
(c) 7〜15 時間先の降水短時間予報は,メソモデルと局地モデルを統計的に処理した結 果を組み合わせて作成している。

① (a)正, (b)正,(c)正

降水短時間予報が6時間から15時間に変わって、朝出かける時も夜寝る時も、予定を立てられるようになって助かります!
台風等により夜間から翌日の明け方に大雨となる可能性がある地域を夕方の時点で把握できるようにすることなどにより、現状より早い段階で市町村長の避難準備・高齢者等避難開始や住民の自主避難の判断を支援するため・・・
引用:気象庁
もう「答えそのまんま」ですね!
夕方の4時に15時間っていうと、翌日の朝7時までのことなので、早い段階で避難所にいく判断もできるわけです。
だから(a)は〇!
降水短時間予報では
1時間ごとの1時間降水量を予想している→〇
気象庁の今後の雨(降水短時間予報)のページに書かれています。
15時間先までの1時間ごとの降水量分布を予測したものを表示します。
引用:気象庁
6時間先までは1km四方で予報している→〇
2018年3月5日から、やってます。
10 分毎更新・1km 格子で 6 時間先までの「速報版降水短時間予報」
引用:気象庁
7〜15時間先までは5km四方で予報している→〇
2018年6月20日から、やってます。
1 時間毎更新・5km 格子で 7~15 時間先までの「降水 15 時間予報」の運用を開始した。
引用:気象庁
こう言う情報って、参考書だけから学ぶのは難しいことも多いです。

日頃から気象庁の発信に注目したり、過去問は新しいもの順にかたっぱしから解くと良いですよ。
この問題の答えは「イラスト図解 よくわかる気象学 専門知識編(202ページ)」にそのまんま書かれています。
7~15 時間先までの「降水 15 時間予報」にはメソモデルと局地モデルを、組み合わせて使っている。
198ページ〜205ページ
問13:竜巻発生確度ナウキャスト&竜巻注意情報について
⻯巻発生確度ナウキャストおよび⻯巻注意情報について述べた次の文(a)〜(d)の正誤 の組み合わせとして正しいものを,下記の1〜5の中から 1 つ選べ。
(a) ⻯巻発生確度ナウキャストは,⻯巻等の激しい突風が今にも発生する(または発生 している)可能性の程度を推定するもので,発生確度を 10km 格子単位で解析し,1 時間後までの予測を 10 分毎に更新して発表する。
(b) 発生確度2は,発生確度1と比べると適中率は高いものの捕捉率は低く,見逃し が多いため,⻯巻注意情報は発生確度 1 が現れた地域に対して発表する。
(c) ⻯巻発生確度ナウキャストは,気象ドップラーレーダーによるメソサイクロンの検 出結果を利用している。
(d) 気象庁の現業数値予報モデルは,⻯巻やメソサイクロンのような小さなスケール の現象を予測することができないため,⻯巻発生確度ナウキャストは数値予報の結 果を利用していない。

③ (a)正(b)誤(c)正(d)誤

「竜巻発生確度ナウキャスト」は、「レーダー・ナウキャスト」でみれます。
「イラスト図解 よくわかる気象学 専門知識編」の195ページにも記載がありますが、気象庁でも詳しく解説されています。
竜巻発生確度ナウキャストは、竜巻の発生確度を10km格子単位で解析し、その1時間後(10~60分先)までの予測を行うもので、10分ごとに更新して提供します。
引用:気象庁

ついでに「発生確度1と2について、おさらいしよう!
発生確度1とか2って、表にするとわかりやすいです。
発生確度 | 予測の適中率 | 捕捉率 |
---|---|---|
発生確度1 | 1~7%程度 | 80% |
発生確度2 | 7~14%程度 | 50~70% |
- 「適中率」→竜巻などが発生すると言う予測を出した時に、実際に竜巻などの激しい突風が発生した割合
- 「捕捉率」→実際に竜巻などの激しい突風が発生した場合に、事前に竜巻注意情報が発表されていた割合
ややこしいけど、ちゃんと理解できるところまで落とし込んでくださいね!
この問題で問われているのは、竜巻発生確度ナウキャストという予報は、データに気象ドップラーレーダーのメソサイクロン 検出結果を使っているのか?です。
答えは〇!
気象庁によると、気象ドップラーレーダーから、竜巻が発生しそうな「可能性」のデータを使っているとのことです。
詳しくはこちら→気象庁
竜巻発生確度ナウキャストでは、数値予報の結果を利用しています。
数値予報では、竜巻のようなスケールの小さい予想はできません。
でも竜巻が発生しやすい条件(発達した積乱雲が発生しやすい)の予想はできるわけです。
だから、竜巻発生確度ナウキャストでは、数値予報の結果を利用しています。
詳しくはこちら→気象庁
195ページ
問14:降水予報の的中率・見逃し率
表は,予報区 A,B における,1 日〜5 日の 1mm 以上の降水の有無の予報および実 況を示したものであるが,予報区 A の 2 日の予報のデータが空欄になっている。この期 間の予報区 A の見逃し率が予報区 B の見逃し率と等しいとき,次の文(a)〜(c)の正誤の 組み合わせとして正しいものを,下記の1〜5の中から 1 つ選べ。
(a) 予報区Aの2日の予報は,「〇」である。
(b) この期間の降水の有無の適中率は,予報区Aの方が高い。
(c) この期間の降水の有無の空振り率は,予報区Aの方が高い。


③ (a)正, (b)誤, (c)誤

この問題は、算数の推理算と、高校で習う確率統計のようですね。
まずは用語をまとめて頭をスッキリさせますよ。
用語 | 意味 | 式 |
---|---|---|
適中率 | 現象のある・ないの予想が実際に起きた・なかった割合 | 予想が適中した回数/予想した回数 |
空振り率 | 現象があると予想したのに、実際にはなかった割合 | 現象があると予報したのになかった回数/予想した回数 |
見逃し率 | 予想してなかったのに現象が起きた割合 | 現象なしと予想したのに現象があった回数/予想した回数 |

見逃し率は、予想してなかった現象が起きた割合のことですよね。
予報区Bでは、予想してなかったのに現象が起きたのが1回。
じゃあ、空欄に入るのは、「〇」ですね!
現象があってもなくても、予想通りになっている割合が「適中率」。
ということは、予報区AとBは、適中率は同じです。
現象(1mm以上の降水)があると予報だしたのに、実際にはなかった回数は…
予報区AもBも1回ずつです。
だからAもBも同じ!
304ページ〜307ページ
問15:大気と海洋の特徴について
図 A は,ある年の 2 月の月平均 500hPa 高度(実線)と平年差(塗りつぶし)であり,図 B は,月平均海面気圧(実線)と平年差(塗りつぶし)である。これらの図から読み取れる大 気と海洋の特徴について述べた次の文章の空欄(a)~(c)に入る語句の組み合わせとして正 しいものを,下記の1~5の中から 1 つ選べ。
図 A では,アリューシャン列島の東で正偏差,北米北部で負偏差,北米南東部で正 偏差の波列パターンがみられる。これは, (a) が発生しているときに現れやすいパタ ーンである。また,ヨーロッパから極東域にかけては,ヨーロッパ付近で負偏差,西 シベリアから中央シベリアにかけて正偏差,極東域で負偏差の波列パターンがみられ, これは (b) と呼ばれる。
図 B では,地上のアリューシャン低気圧の勢力は中心の東側で平年よりも (c) なっ ており,(a) が発生しているときの特徴がみられる。


④ (a)ラニーニャ現象,(b)ユーラシアパターン,(c)弱く

500hPa高度の平年偏差・・・ものすごく馴染みがなくて、勉強が辛くなる部分ですよね!
でも何度も参考書や気象庁の解説を読めば、そのうちわかるようになるので頑張ろう!
エルニーニョ 現象が起きている冬季、絶対ではないですが、500hPaの高度偏差は、PNA(Pacific North American)パターン、またはWP(Western Pacific)パターンとなることがあります。
それぞれの特徴をまとめました。↓
- 極東域(アリューシャン列島あたり)負の偏差
- 北米北部あたりで正の偏差
- 北米南東部あたりで負の偏差

- 日本の北あたりで負の偏差
- 日本の本州以南あたりで正の偏差

図Aでは、
- 極東域(アリューシャン列島あたり)正の偏差
- 北米北部あたりで負の偏差
- 北米南東部あたりで正の偏差
とPNAパターンの逆になっているので、答えは「ラニーニャ現象」ですね。
詳しくはこちらで学べます→気象庁
そもそも選択肢にある「北極振動」と「ユーラシアパターン」ってなんじゃいな?ってことで、まとめます。
北極振動 | 北半球の循環の卓越する変動パターン (いくつかのパターンがある) 主に高緯度側と中緯度側で正負が分かれる。 | |
ユーラシアパターン | ヨーロッパからユーラシア大陸をまたぐ大きな破裂パターン。 典型的なパターンは、ヨーロッパと東アジアで負偏差、西シベリアでは正偏差。 ![]() |
問題文には
- ヨーロッパで負
- 西シベリア〜中央シベリアで正
- 極東で負
ってことなので、北極振動の「高緯度側と中緯度側で分かれる」じゃなくて「ユーラシアパターン」ですね。
絶対ではないんですが・・・
ラニーニャ現象が起きている時、冬にアリューシャン低気圧が弱区なるパターンがあります。
アリューシャン低気圧が弱くなるのは、偏西風の蛇行が日本の東海上で低気圧を弱める・・・低気圧を強めない流れになるんです。

逆にエルニーニョ との時は、アリューシャン低気圧は強められる傾向があります。
だから(c)は「弱く」ですね!
「気象予報士ハンドブック(418ページ〜421ページ)」でも解説されていますが・・・

「気象予報士ハンドブック」、値段が高いんですよ。(私は割引がある時に買いました)
財布に余裕があれば買っても良いと思いますが、受験に必須ではないです。
参考書籍
自分の記憶が間違ってたら、読んでくださったあなたにもご迷惑になるので、一応参考書籍というか、自宅にある本で確認しつつ書きました。
最後に・・・
僭越ですが、私の解答方法をまとめました。
なんていうか、一般知識の問題と違って、専門知識の問題は疲れますね。
問題文を読んでも目が滑ると言うか、軽く読んだくらいでは、内容が頭に入ってこないです。
でも今は試験勉強にもお金がかからなくなって、最高な時代だと思います。
過去問を解く時も、わからない言葉や内容は、検索すればだいたい見つかりますから。

私は検索する時、「〇〇(わからないこと) 気象庁」と検索します。
情報の出どころが気象庁なら、試験対策としては確かな情報だし、カラーの図解も多いのもいいですね。
過去問でわからなかったところは、必ずノートなどにまとめるのをおすすめです。
あなたの合格を祈ってますよー(≧∇≦)/
実技試験の過去問解説はこちら↓

第54回気象予報士試験【学科・一般知識】の過去問解説はこちら

【過去問】第53回気象予報士試験・学科・一般を、私だったらこう解きます!ってのをまとめています。

第52回気象予報士試験【学科・一般知識】の過去問解説はこちら

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