令和3年1月の第55回気象予報士試験の学科一般知識の問題を、晴野(はれの)だったらこう解く!という考え方や解き方をまとめています。
あなたが次に似たような問題を解く時、「ヒント」となるような内容を目指してます!!!

この記事は、令和3年1月の第55回気象予報士試験の学科一般の問題と解答を持っている人向けの内容です。
※私個人の試験問題を解く時の思考例です。(気象業務支援センターとは関係ございません。)
もし第55回気象予報士試験の学科一般の問題と解答を持っていなければ、まずこちらでダウンロードしてください。
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問1:大気の構造について
大気の構造について述べた次の文(a)〜(d)の正誤の組み合わせとして正しいものを, 下記の1〜5の中から 1 つ選べ。
(a) 水蒸気を除いた乾燥空気における窒素,酸素,アルゴンの存在比は,地上から高 度約 80 km の中間圏界面付近までほぼ一定である。
(b) 成層圏界面付近で気温が極大になるのは,主にオゾンが太陽からの紫外線を吸収 して大気を加熱するからである。
(c) 対流圏界面の高さは,平均的には低緯度より高緯度のほうが高い。
(d) 対流圏の温度減率は,平均的には約9.8°C/kmである。

② (a)正, (b)正, (c)誤, (d)誤
乾燥空気(水蒸気を除いた空気)の組成は、高度約80kmまで変わりません。

高度約80kmは、中間圏界面(中間圏の一番上)付近だね。

だから(a)の「水蒸気を除いた乾燥空気における窒素,酸素,アルゴンの存在比は,地上から高度約 80 km の中間圏界面付近までほぼ一定である。」は正しい!⭕️

「一般気象学(第2版)」 p13, p24
成層圏の気温を上昇させているのは、大気中のオゾンが紫外線を吸収していることで間違いないので・・・
(b)の「成層圏界面付近で気温が極大になるのは,主にオゾンが太陽からの紫外線を吸収 して大気を加熱するからである。」は正しい!⭕️

ちなみに、オゾン層のある高度じゃなくて、成層圏界面で気温が極大になる理由は2つ!
- 紫外線の量が一番多いのは界面付近だから。
(下層にいくほど紫外線の量は減少する。) - 空気は密度が小さいほど、小さな熱量で気温が上昇するから。

対流圏の気温は、低緯度が高くて高緯度が低いですよね?
そして気温が低ければ空気の密度は大きくなるし、気温が高ければ空気の密度は小さくなります。

おまけに(?)低緯度の方がより高い高度まで大気の対流活動があるため、低緯度の方が対流圏界面の高度は高くなります。
(c)の「対流圏界面の高さは,平均的には低緯度より高緯度のほうが高い。」は誤り!❌
対流圏の平均的な温度減率は約6.5℃/kmです。

約9.8°C/kmなのは、乾燥空気の気温減率ね。
大気が水蒸気を含んでいれば、水蒸気の凝結の際に放出される熱が加わり、気温減率は下がります。
だから(d)の「対流圏の温度減率は,平均的には約9.8°C/kmである。」は誤り!❌

問2:気圧が下がった時の水蒸気圧
標高 0m(気圧 1000hPa)の地点において気温 25°C,相対湿度 50%の空気塊を,標高 1000m(気圧 900hPa)まで断熱的に持ち上げた時の空気の相対湿度に最も近いものを下 記の1〜5の中から 1 つ選べ。なお,乾燥断熱減率,湿潤断熱減率はそれぞれ 10°C/km, 5°C/km とし,温度と飽和水蒸気圧の値は表のとおりとする。

① 61%
② 68%
③ 84%
④ 93%
⑤ 100%
③ 84%

1000hPaが900hPaに変化しているのがポイントです!
標高 0m(気圧 1000hPa)の地点で
- 気温 25°C
- 相対湿度 50%
この空気塊の水蒸気圧は 31.7×1/2 = 15.85hPa。
全体の気圧が900hPaに下がってるので、水蒸気圧も下がってるはず。
ということは、15.85 × 900/1000 = 14.265 hPa。
1000m(900hPa)まで、とりあえず乾燥断熱減率に沿って気温を低下させていくと・・・
25℃ – 10℃ × 1km = 15℃
15℃での飽和水蒸気圧は、17.0hPa なので14.265 hPaより大きいです。
だからこの空気塊は飽和していないでしょう。(→乾燥断熱減率だけで計算したのはOKってこと。)

(14.265 / 17.0)× 100 = 83.91% 約84%

分圧を思い出して考えてみるといいよ!

▶︎▶︎▶︎用語解説「分圧」
問3:力学・熱力学への理解
大気の法則や関係式の組み合わせに関する次の文章の空欄(a),(b)に入る語句の組み 合わせとして適切なものを,下記の1〜5の中から 1 つ選べ。
力学や熱力学の法則や関係式を組み合わせることにより,気象に関する物理量の重 要な関係を導くことができる。たとえば,熱力学第一法則と静力学平衡の式などを組 み合わせることによって (a) を導くことができる。また,温度風の関係は,地衡風平衡と (b) を組み合わせることにより導くことができる。

① (a)乾燥断熱減率, (b)静力学平衡の式
まずはおさらい!
(a)の選択肢にあるワードの意味はこれ↓
- 乾燥断熱減率←乾燥空気が断熱的に上昇した場合の気温減率のこと。
- 大気の状態方程式←気体の状態方程式のこと。
- 連続の式←水平発散(収束)と鉛直収束(発散)が連続していることを表す式のこと。
次に問題文にある「熱力学第一法則」と「静力学平衡の式」についておさらい〜
ΔQ = ΔW + ΔU
- ΔQ:加えた熱量
- ΔW:外部に対する仕事(体積変化)= αΔp
- ΔU:内部エネルギー(温度変化)= CpΔГ
加えた熱量は「内部エネルギーの増加」と「外部に対する仕事」に使われます。
ΔP = ーρgΔZ
- ΔP:気圧差(Pa)
- ρ:密度(kg/m3)
- g:重力加速度(9.8m/s2)
- ΔZ:高度差(m)
「鉛直方向の気圧傾度」と「大気の重さ」の2つのバランスを表す鉛直方向の関係式です。
この熱力学の第一法則の式の右辺に静水圧平衡(静力学平衡)の式を代入して、ΔQをゼロにすれば、乾燥断熱減率Гdを求められるっていう・・・

この深い深いお話は「一般気象学」でもやや端折られて書かれているので、深追い不要と認識してます!
↑要するに私の脳みそでは限界越してます。
難しくてわかんねーよ!って方も
- 熱力学の第一法則(熱とエネルギーのこと)
- 静力学平衡の式(鉛直方向の力のこと)
と考えると「答えは乾燥断熱減率だろーなー」ってわかるんじゃないでしょうか。( ˊᵕˋ ; )

「一般気象学(第2版)」 p53
「温度風の関係」とは、水平温度傾度と地衡風の関係のことで
「空気に水平方向の温度差がある場合、地衡風が高度と共に強く変化すること」をいいいます。
そして温度風の関係は,地衡風平衡と 静力学平衡の式を組み合わせることにより導くことができます。
つまり、静力学平衡の式から鉛直方向のことを理解し
地衡風平衡の式から水平方向のことを理解できるわけです。
「温度風の関係」について、詳しくは用語解説ページへ▶︎▶︎▶︎「温度風の関係」

「一般気象学(第2版)」 p145
問4:雲の中の水晶・雪の結晶について(降水過程)
雲の中の氷晶や雪の結晶について述べた次の文(a)〜(d)の正誤の組み合わせとして 正しいものを,下記の1〜5の中から 1 つ選べ。
(a) 大気中の氷晶のほとんどは,−40°C前後の低温の雲の中で不純物を含まない水滴 が凍結して生成される。
(b) 過冷却の雲の中で水滴よりも氷晶の方が速やかに成⻑する要因は,0°C以下では氷 の表面に対する飽和水蒸気圧が水の表面に対するそれよりも小さいからである。
(c) 氷粒子が落下しながら過冷却雲粒を捕捉して成⻑する過程では,氷粒子の質量が 増加するほど,氷粒子の単位時間あたりの質量増加量は減少する。
(d) 雲内で氷晶が成⻑して雪の結晶となるとき,結晶の形は,周囲の気温に依存する が空気の過飽和度には依存しない。

④ (a)誤, (b)正, (c)誤, (d)誤
純粋な過冷却水滴は、温度が – 33 〜 – 41℃ の範囲で自ら凍結して氷晶となります。(不純物がない状態)
でも不純物を含まない純粋な氷晶を有する雲って、現実には巻雲などの一部の雲だけなんですよね。

一般的な雲では、- 33 〜 – 41℃みたいに温度が低くなくても、氷晶核のおかげで氷晶ができます。
だから(a)の「 大気中の氷晶のほとんどは,−40°C前後の低温の雲の中で不純物を含まない水滴 が凍結して生成される。」は誤り!

「一般気象学(第2版)」 p93
水に対する飽和水蒸気圧と氷に対する飽和水蒸気圧では、同じ温度の場合
氷に対する飽和水蒸気圧の方がやや小さいです。
水に対する飽和水蒸気圧 > 氷に対する飽和水蒸気圧


飽和水蒸気圧が小さい方の氷が、先に成長するんですね。
だから(b)の「 過冷却の雲の中で水滴よりも氷晶の方が速やかに成⻑する要因は,0°C以下では氷の表面に対する飽和水蒸気圧が水の表面に対するそれよりも小さいからである。」は正しい!

氷粒子は落下しながら過冷却雲粒(水滴)を取り込み成長するとき、氷粒子の質量は大きくなります。
つまり重くなるわけなので、重力の影響で落下スピードが増すんです。
落下スピードが増していくと、過冷却雲粒(水滴)を取り込む数も増えます。
その結果、時間当たりの質量増加量は増える・・・というわけです。
だから(c)の「 氷粒子が落下しながら過冷却雲粒を捕捉して成⻑する過程では,氷粒子の質量が 増加するほど,氷粒子の単位時間あたりの質量増加量は減少する。」は誤り!

「一般気象学(第2版)」 p98
結晶の形は、気温と氷過飽和水蒸気密度に依存します。

「一般気象学」の図4.11がわかりやすいよ!
例えば、水について飽和しているときは
- 0 ~ ー4 ℃:板状
- ー4〜ー10℃:柱状
- ー10〜ー22℃:板状
だから(d)の「 雲内で氷晶が成⻑して雪の結晶となるとき,結晶の形は,周囲の気温に依存する が空気の過飽和度には依存しない。」は誤り!

「一般気象学(第2版)」 p96
問5:地球の大気に関わる放射について
地球の大気に関わる放射について述べた次の文(a)〜(d)の正誤について,下記の1〜 5の中から正しいものを 1 つ選べ。
(a) 太陽放射エネルギーの約半分は可視光線域に含まれるが,太陽放射エネルギーの スペクトルのピークは紫外線域にある。
(b) 宇宙から大気層に下向きに入ってくる⻑波放射はなく,また宇宙へ上向きに出て いく短波放射もない。
(c) アルベドは大気上端における上向きの⻑波放射エネルギーを下向きの短波放射エ ネルギーで割った値である。
(d) 北半球の夏至の日の 24 時間に大気上端の水平な単位面積に入射する太陽放射エ ネルギー量は,北極点の方が赤道上の地点よりも多い。
① (a)のみ正しい
② (b)のみ正しい
③ (c)のみ正しい
④ (d)のみ正しい
⑤ すべて誤り
④ (d)のみ正しい
太陽放射の約半分は可視光線域なのは、その通り!
残りの半分は赤外線域と紫外線域と考えていいですが、大部分は赤外線域です。
太陽放射の紫外線域は約7%。
だから(a)の「 太陽放射エネルギーの約半分は可視光線域に含まれるが,太陽放射エネルギーの スペクトルのピークは紫外線域にある。」は誤り。

正しくは「可視光線域」ですね。

「一般気象学(第2版)」 p115
短波放射・長波放射っていうのは相対的な表現で
地球放射に対して太陽放射が短波放射と表現され、太陽放射に対して地球放射が長波放射と表現されるわけです。
で!

太陽の日差しでジリジリする暑さ(熱さ?)って、あれは波長の長い方の電磁波なんだよ。
だから(b)の「 宇宙から大気層に下向きに入ってくる⻑波放射はなく,また宇宙へ上向きに出て いく短波放射もない。」は誤り!
「アルベド」は反射放射量を入射放射量で割った値。

だから(c)の「 アルベドは大気上端における上向きの⻑波放射エネルギーを下向きの短波放射エ ネルギーで割った値である。」は誤り!

「一般気象学(第2版)」 p114, p128
北半球が夏至の時、北極では一日中地平線から23.5°の高さに見えます。

この日、地球上で一番1日あたりの受ける太陽エネルギーが多いのは北極になるんです。(一般気象学:図5•5参照)
だから(d)の「 北半球の夏至の日の 24 時間に大気上端の水平な単位面積に入射する太陽放射エ ネルギー量は,北極点の方が赤道上の地点よりも多い。」は正しい!

「一般気象学(第2版)」 p109
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