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問6:角運動量保存則
ハドレー循環の上層風のように赤道から極向きに移動する空気塊を想定し,その運 動について述べた次の文章の空欄(a),(b)に入る適切な式と数値の組み合わせを,下記 の1〜5の中から 1 つ選べ。
ただし,赤道における地球の自転速度を 470 m/s, cos30°=0.87,1/cos30°=1.15 とする。
緯度φにあって,質量 m,東⻄方向の速度 U をもつ空気塊に対する角運動量保存則 は,地球の半径と自転角速度をそれぞれR,Ωとすると,(a)= 一定,と表現できる。 赤道上空で地表面に対し相対的に静止していた空気塊が角運動量を保存しながら北 緯30°まで北上した時の地表面に対する東⻄風速は,この式に基づくと約 (b)m/sと なる。
⑤ (a) m R cosφ(ΩR cosφ+U ) , (b) 130
角運動の保存則とは、「回転する物体の回転半径と回転速度をかけた数値は言ってに保たれる」という法則。
この問題の場合、次の3つをかけた数値が一定になるってことです。
- 質量
- 半径
- 速度
※「 U 」は東西方向の速度
与えられた条件はこれ↓
- 赤道における地球の自転速度 = ΩRcos0° = ΩR = 470m/s
- cos30° = 0.87
- 1/cos30° = 1.15
「赤道における地球の自転速度」=ΩR
のことですね!
では計算してみましょう〜
「赤道上空で相対的に静止している空気の角運動量」=「赤道上空で静止している空気を緯度30°まで北上させた場合の空気の角運動量」だから
mR×ΩR=mRcos30°(ΩRcos30°+U)
ΩR=cos30°(ΩRcos30°+U)
ΩR×1/cos30°=ΩR×cos30°+U
U=ΩR×1/cos30°ーΩR×cos30°
=ΩR(1/cos30°ーcos30°)
=470m/s(1.15ー0.87)
=470m/s × 0.28
=131.6
答えは約130m/s!
「一般気象学(第2版)」 p137
問7:風ベクトル
図は北半球の同じ緯度にある地点 A,地点 B,地点 C それぞれの 850hPa と 700hPa の高度の風について,横軸 u を東⻄方向の東向き成分,縦軸 v を南北方向の北向き成分 としてベクトルで示したものである。
この図について述べた次の文(a)〜(d)の正誤の組 み合わせとして正しいものを,下記の1〜5の中から 1 つ選べ。
ただし,風は地衡風と し,850hPa から 700hPa にかけての風向の変化は 180°以内とする。
(a) 地点Aでは,850hPaで地点B,Cに比べ最も水平気圧傾度力が大きい。
(b) 地点 B では,850hPa と 700hPa の間の平均気温は水平移流により上昇傾向にある。
(c) 地点Cでは,850hPaから700hPaにかけて寒気移流場である。
(d) 地点A〜Cのうち,850hPaと700hPaの間の平均気温の水平傾度が最も大きいの は地点 A である。
③ (a)正, (b)誤, (c)正, (c)誤
850hPa面の地点Aでは、B,Cに比べてベクトルの矢印が大きいですよね。
矢印の長さは風速の強さ(大きさ)を表してます。
風が強いってことは、水平気圧傾度力も大きいってことなので・・・
(a)の「 地点Aでは,850hPaで地点B,Cに比べ最も水平気圧傾度力が大きい。」は正しい!
地点Bでは上空に向かって、風向のベクトルが反時計回りに変化しているので、寒気移流ですよね。
寒気移流=平均気温は水平移流により下降傾向
だから(b)の「 地点 B では,850hPa と 700hPa の間の平均気温は水平移流により上昇傾向にある。」は誤り!
▶︎▶︎▶︎用語解説「温度風」
上空に向かって風向のベクトルが順転(逆転)に変化してれば、暖気移流(寒気移流です。
風向のベクトル | 温度移流 |
---|---|
上空に向かって順転(時計回り) | 暖気移流 |
上空に向かって逆転(反時計回り) | 寒気移流 |
だから(c)の「 地点Cでは,850hPaから700hPaにかけて寒気移流場である。」は正しい!
平均気温の水平傾度の比較方法は、温度風のベクトルの大きさでできます。
温度風のベクトルが大きいってことは、その空気の層で水平温度傾度が大きいわけだからね。
だから(d)の「 地点A〜Cのうち,850hPaと700hPaの間の平均気温の水平傾度が最も大きいの は地点 A である。」は誤り!
最も水平傾度が大きいのは地点 C ですね。
「一般気象学(第2版)」 p146
問8:大気の熱輸送
図は,年平均した大気による熱の北向き輸送量の緯度分布を示したものである。
この 図について述べた次の文章の空欄(a)〜(e)に入る語句や記号の組み合わせとして正しい ものを,下記の1〜5の中から 1 つ選べ。
大気による顕熱輸送はほぼ極向きであり,高緯度ではその輸送量は極に近づくほど 小さくなっている。つまり高緯度の大気を (a) していることがわかる。図のB,Cの 緯度付近を極大・極小とする大気による顕熱輸送は,主に (b) によって担われ,A, D の緯度付近を極大・極小とする大気による顕熱輸送は,主に (c) によって担われて いる。一方,大気による潜熱輸送をみると,図の (d) 付近では蒸発した水蒸気が南北 両方向へ輸送され,図の (e) 付近では水蒸気が収束している。
① (a)加熱, (b)ハドレー循環, (c)傾圧不安定波, (d)PとR, (e)Q
年平均した大気の熱輸送の緯度分布を、北向きで示した図を見ながら答えます。
選択肢を見ると「加熱」または「冷却」。
問題文は「高緯度の大気を〜」なので、大気の熱輸送で高緯度の大気を冷却しているわけもなく、「加熱」に決まってるよね!
図のB,Cを見ると、次のことがわかります。
- 北半球低緯度で1回目の北向き熱輸送のピーク
- 南半球低緯度で1回目の南向き熱輸送のピーク
低緯度にみられる極向きの熱輸送といえば!
ハドレー循環ですね!
おまけ
ウォーカー循環 | 赤道付近の対流圏に存在する、大規模な東西方向の循環 |
傾圧不安定波 | 偏西風帯の波動 |
「一般気象学(第2版)」 p171, 254, 187, 287
「イラスト図解 よくわかる気象学(第2版)」p291, 312
(b)でハドレー循環を選んでるので、(c)は消去法で「傾圧不安定波」しかないんですが・・・
極循環よりやや低緯度(緯度50°くらいがピーク)では、主に波動による熱輸送により、高緯度側へ熱が運ばれます。
「主に波動による熱輸送」が「傾圧不安定波」のことです。
「温帯低気圧が南北の温度差を低減させてくれてる」=「傾圧不安定はによって〜」って覚えればOK!
「一般気象学(第2版)」 p191
問題文に「(d) 付近では蒸発した水蒸気が南北両方向へ輸送され…」とあるので
破線が「北半球は北方向・南半球は南方向」に潜熱の輸送が始まるところを答えます。
PとRですね!
問題文より「(e) 付近では水蒸気が収束している。」なので・・・
輸送方向から考えてみると簡単♪
南向きの潜熱輸送と北向きの線熱輸送に挟まれているところ↓
収束しているのはQですね!
問9:大気境界層の特徴
一般風の弱い晴れた日中における,平坦で地表面状態が一様な陸上の大気境界層の 一般的な特徴について述べた次の文(a)〜(d)の正誤の組合せとして正しいものを,下記 の1〜5の中から 1 つ選べ。
(a) 接地境界層を除く大気境界層内では,大気が上下によく混合されているので,風 速は鉛直方向にほぼ一様になる。
(b) 水蒸気は地表面から大気に供給されるので,相対湿度は接地境界層の上端から大 気境界層の上端まで高度とともに次第に減少する。
(c) 接地境界層内では,温位が高度とともに減少する絶対不安定な状態が持続するこ とがある。
(d) 大気境界層内の気温は日の出から午後にかけて上昇するが,大気境界層の上端の 高度は,この間ほとんど変化しない。
③ (a)正, (b)誤, (c)正, (c)誤
大気境界層での風速の変化を思い出してみよう!
この大気境界層内で晴天日の正午、風速の鉛直分布はどんなだったか覚えていますか?
だから(a)の「 接地境界層を除く大気境界層内では,大気が上下によく混合されているので,風速は鉛直方向にほぼ一様になる。」は正しい!
「一般気象学(第2版)」 p155
※用語解説「混合比」
大気境界層内の湿度(混合比)は、下のように混合層では一様。
そして気温は上層ほど低くなるので、飽和水蒸気圧は上層ほど減少します。
ってことは相対湿度は高度とともに増加するってことですよね。
だから(b)の「 水蒸気は地表面から大気に供給されるので,相対湿度は接地境界層の上端から大気境界層の上端まで高度とともに次第に減少する。」は誤り!
混合層内は、空気がよくかき混ぜられていて、温位はほぼ一様です。
でも接地層では、暖かくなった地表面によって暖められ続けるために、接地層内での下層と上層で温度差が大きくなっています。
下層から上層まで熱が伝わるのが間に合ってないイメージです。
だから(c)の「 接地境界層内では,温位が高度とともに減少する絶対不安定な状態が持続することがある。」は正しい!
大気境界層の上端の「高度が変わるんかい・変わらんのかい」問題。
移行層は、上にある自由大気に押しつぶされたり、下から混合層の対流が入り込んだり、さまざまな変化が見られます。
だから(d)の「 大気境界層内の気温は日の出から午後にかけて上昇するが,大気境界層の上端の 高度は,この間ほとんど変化しない。」は誤り!
「一般気象学(第2版)」 p155
「イラスト図解 よくわかる気象学(第2版)」p258 ~ 260
問10:成層圏突然昇温について
成層圏突然昇温について述べた次の文章の空欄(a)〜(c)に入る語句の組み合わせと して適切なものを,下記の1〜5の中から 1 つ選べ。
北半球では, (a) は通常,成層圏から中間圏の北極周辺は低気圧になり,北半球高 緯度では⻄風が卓越している。成層圏突然昇温は,この季節に北極周辺の成層圏を中 心に気温が短期間に急激に上昇する現象である。この現象は (b) により励起されたプ ラネタリー波の伝搬が原因となっており,地衡風平衡の状態が崩れて生じた下降流に よる断熱圧縮で引き起こされる気温の上昇は (c) ほど早く始まる。
② (a)寒候期, (b)地形等の効果, (c)上層
▶︎▶︎▶︎用語解説「成層圏突然昇温」
問題文に「成層圏突然昇温は,この季節に北極周辺の成層圏を中 心に気温が短期間に急激に上昇する現象である」って書いてあります。
ということは、(a)で問われているのは「成層圏突然昇温が寒候期なのか・暖候期なのか」です。
成層圏突然昇温は、「西風が吹く冬〜春先」なので
「寒候期」!
(b)で問われているのは、「成層圏突然昇温はプラネタリー波の伝搬が原因だけど、そもそもプラネタリー波の原因は何?」です。
プラネタリー波の原因は次のもの。
- 大規模山脈など
- 大陸と海洋の温度差など
そして答えの選択肢は2つ。
- 電離層の変動
- 地形等の効果
はい、答えは「地形等の効果」ですね!(о´∀`о)
(c)で問われているのは、「断熱圧縮で起きる気温の上昇は、上層から起きているのか?・下層から起きているのか?」です。
昇温は上層から下層に移動していくので、答えは「上層から」ですね!(о´∀`о)
「一般気象学(第2版)」 p260 ~ 264
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