目次
問10:成層圏
成層圏の大気の特徴について述べた次の文(a)〜(d)の正誤について、下記の①〜⑤の中から正しいものを1つ選べ。
(a)成層圏では、成層が安定なために大規模な擾乱はほとんど見られない。
(b)南半球の夏の成層圏の高度約20~50kmでは、ほぼ全域で東風が卓越している。
(c)北半球の夏には、北極周辺に低気圧が位置し、アリューシャン列島の上空には高気圧が形成される。
(d)北半球の夏の下部成層圏で気温が最も高いのは赤道付近である。

② (b)のみ正しい
成層圏では数日間で40℃くらい気温が上昇するような現象が起きたり、約26ヶ月周期で西風が東風に変わるなど、対流圏とはまた違った擾乱がいくつもあります。
だから(a)の「成層圏では、成層が安定なために大規模な擾乱はほとんど見られない。」は誤り。
南半球が夏になる時期で。
成層圏の高度約20~50kmというと、成層圏中層〜上層ですね。
はい、東風が卓越しています。
これは温度風の関係で、南半球では気温の高い方が進行方向左側になる向きで風が吹くからだと「よくわかる気象学」で説明されていました。
確かに「一般気象学」図9.1(「よくわかる気象学」では370ページの図)でもわかるように、1月における高度約20~50kmでは、南極の上空が最も気温が高くなっています。
だから(b)の「南半球の夏の成層圏の高度約20~50kmでは、ほぼ全域で東風が卓越している。」は正しい。

地球のことなのに、まるで別の星のような現象ですね。
夏の北半球では、北極に高気圧が現れるし
アリューシャン高気圧は冬の風物詩じゃないけど、冬に現れるのもだし・・・
だから(c)の「北半球の夏には、北極周辺に低気圧が位置し、アリューシャン列島の上空には高気圧が形成される。」は誤り!
夏でも冬でも、赤道付近の成層圏は中緯度や高緯度より気温が低いんですよね。
赤道付近の成層圏下層で気温が低くなる理由は、低緯度ほど対流圏界面が高くなっているからです。
だから(d)の「北半球の夏の下部成層圏で気温が最も高いのは赤道付近である。」は誤り。

問11:エルニーニョ現象
エルニーニョ現象発生時の平均的な海洋や大気の特徴について述べた次の文(a)〜(d)の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の①〜⑤の中から1つ選べ。
(a)インドネシア近海から日付変更線付近にかけての太平洋赤道域で、海面水温が平年に比べて上昇する。
(b)太平洋の赤道域で吹いている東風が、平年に比べて強くなる。
(c)太平洋赤道域のインドネシア近海で対流活動が強まり、この領域の降水量が平年に比べて多くなる。
(d)オーストラリア北部のダーウィンでは海面気圧が平年に比べて高く、南太平洋東部のタヒチでは平年に比べて低くなる。

⑤ (a)誤,(b)誤,(c)誤,(d)正
通常は降水量の多いインドネシア近海では、エルニーニョ現象発生時に降水量が減少します。


これは海面水温の低下により、雨雲が減少するからと考えられますよね。
だからエルニーニョ現象発生時のインドネシア近海では、海面水温は平年より高くないと言えるので、(a)は誤り。
エルニーニョ現象発生時、赤道域で吹いている東風は弱くなります。
だから(b)の「太平洋の赤道域で吹いている東風が、平年に比べて強くなる。」は誤り。
(a)でも書きましたが、エルニーニョ現象発生時、インドネシア近海では通常より対流活動が弱まり降水量が減ります。
だから(c)の「太平洋赤道域のインドネシア近海で対流活動が強まり、この領域の降水量が平年に比べて多くなる。」は誤り。
南方振動として、「一般気象学」でも紹介されています。
南方振動は、ダーウィンで気温が高い年はタヒチ島で気温が低いという、東西方向に大気が振動している現象のことです。
この南方振動とエルニーニョ現象は深く関係していて、エルニーニョ現象が強い時は、南方振動も明瞭になります。(ダーウィンの気温が高くなり、タヒチ島の気温が低くなります。)
だから(d)の「オーストラリア北部のダーウィンでは海面気圧が平年に比べて高く、南太平洋東部のタヒチでは平年に比べて低くなる。」は正しい。
ちなみにダーウィンとタヒチ島の大まかな位置はここです。

問12:予報業務を行うために必要なこと
気象の予報業務を行おうとする者が気象庁長官の許可を受けようとする際に、要件として求められる項目(a)〜(d)の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の①〜⑤の中から1つ選べ。
(a)当該予報業務に必要な予報資料の収集の施設と要員。
(b)当該予報業務に必要な予報資料の解析の施設と要員。
(c)当該予報業務の目的および範囲に係る気象庁の警報事項を迅速に受け取ることができる施設と要員。
(d)当該予報業務における予報を迅速に利用者に伝達する施設と要員

① (a)正,(b)正,(c)正,(d)誤
気象業務法 第十八条に、「気象庁長官は、前条第一項の規定による許可の申請書を受理したときは、次の基準によつて審査しなければならない。」とあり、
第十八条の一より
「当該予報業務を適確に遂行するに足りる観測その他の予報資料の収集及び予報資料の解析の施設及び要員を有するものであること。」とあります。
だから(a)の「当該予報業務に必要な予報資料の収集の施設と要員。」は正しい。
気象業務法 第三章 第十八条の一
(a)で述べた内容と被りますね。
だから(b)の「当該予報業務に必要な予報資料の解析の施設と要員。」は正しい。
気象業務法 第三章 第十八条の一
第十八条の二より
「当該予報業務の目的及び範囲に係る気象庁の警報事項を迅速に受けることができる施設及び要員を有するものであること。」とあります。
だから(c)の「当該予報業務の目的および範囲に係る気象庁の警報事項を迅速に受け取ることができる施設と要員。」は正しい。
気象業務法 第三章 第十八条の二
「当該予報業務における予報を迅速に利用者に伝達する施設と要員。」は、法第三章(許可の基準)第十八条に記載がありません。
だから(d)は誤り。
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