目次
問11:日本の竜巻
日本付近の⻯巻に関する次の文(a)〜(d)の正誤の組み合わせとして正しいものを,下 記の1〜5の中から 1 つ選べ。
(a) ⻯巻のろうと雲は,気圧の低い⻯巻渦の中心付近に空気塊が吹き込むとともに, 断熱膨張により気温が低下して水蒸気が凝結することにより形成される。
(b) ⻯巻の地面近くの部分では,風が渦の中心に向かって吹き込むため,北半球中緯 度に位置する日本付近ではコリオリの力により常に反時計回りの渦となっている。
(c) ⻯巻の被害域は,一般的に幅は数十mから数百mで⻑さは数kmの範囲に集中す るが,⻑さが数十 km に達することもある。
(d) 気象庁が⻯巻の突風の強さ(風速)の評定に用いている日本版改良藤田スケール(JEF スケール)は,0 から 5 まで 6 階級あり,数字が大きくなるに従って風速は大きくなる。
② (a)正, (b)誤, (c)正, (d)正
竜巻の「ろうと雲」の正体は、水や氷の粒(ホコリなどのゴミもあるだろうけど)です。

竜巻って透明な空気の渦なんですが、「ろうと雲」として目に見える部分は、水蒸気が凝結してるんですよ。
渦の中心付近はとっても気圧が低いので、吸い込まれた空気は断熱膨張して気温が下がります。
すると水蒸気が凝結するので、私たちがみることができる「ろうと」の形になるわけです。
だから(a)の 「⻯巻のろうと雲は,気圧の低い⻯巻渦の中心付近に空気塊が吹き込むとともに, 断熱膨張により気温が低下して水蒸気が凝結することにより形成される。」は正しい!
竜巻は渦の水平スケールが小さく、働いている力は気圧傾度力と遠心力。
コリオリの力は無視できます!
だから(b)の 「⻯巻の地面近くの部分では,風が渦の中心に向かって吹き込むため,北半球中緯 度に位置する日本付近ではコリオリの力により常に反時計回りの渦となっている。」は誤り!

とはいえ…日本でもアメリカでも、竜巻は反時計回りが多いようです。
おまけ:非常に珍しい北半球の時計回り竜巻の映像
2019年4月1日にマレーシアのペナン島の海上で発生した竜巻だそうです。
気象庁が発表している日本での竜巻による被害の平均的な規模は次のようになってます。
竜巻 | スケール | 平均スケール |
---|---|---|
幅 | 103m(そのほとんどが160m以下、最大1.6km) | 数十m〜数百m |
長さ | 3.3km(そのほとんどは5km以下、最大50.8km) | 数km |
だから(c)の 「⻯巻の被害域は,一般的に幅は数十mから数百mで⻑さは数kmの範囲に集中するが,⻑さが数十 km に達することもある。」は正しい!
日本版の藤田スケールは、F0〜F5までの6段階。
F〇の数字が大きいほど、竜巻の風速が大きいです。
だから(d)の [
気象庁が⻯巻の突風の強さ(風速)の評定に用いている日本版改良藤田スケール(JEF スケール)は,0 から 5 まで 6 階級あり,数字が大きくなるに従って風速は大きくなる。」は正しい!
問12:台風に関する気象情報
気象庁が発表している台風に関する気象情報について述べた次の文(a)〜(c)の正誤の 組み合わせとして正しいものを,下記の1〜5の中から 1 つ選べ。
(a) 台風が弱まって熱帯低気圧に変わった後,再び発達して台風になった場合には, 別の台風として新たな番号が付けられる。
(b) 熱帯低気圧が,24時間以内に台風になり,日本に影響を及ぼすおそれがある場 合には,「発達する熱帯低気圧に関する情報」が発表される。
(c) 台風予報では,最⻑で5日先までの進路予報(予報円の中心と半径,進行方向と 速度)と強度予報(中心気圧,最大風速,暴風警戒域など)が発表される。

④ (a)誤, (b)正, (c)正
熱帯低気圧→台風→熱帯低気圧→台風
みたいに台風の風速が変化場合、「台風〇号」の番号は同じものを使います!
(a) 台風が弱まって熱帯低気圧に変わった後,再び発達して台風になった場合には, 別の台風として新たな番号が付けられる。」は誤り!
「台風」と「24時間以内に台風になりそうな熱帯低気圧」が発生した場合・・・
台風情報が更新されます。(2005年6月1日〜)
で、「24時間以内に台風になりそうな熱帯低気圧」の情報は「発達する熱帯低気圧に関する情報」という標題で情報を発表するんです。
だから(b) の「熱帯低気圧が,24時間以内に台風になり,日本に影響を及ぼすおそれがある場 合には,「発達する熱帯低気圧に関する情報」が発表される。」は正しい!
気象庁が予報する内容は、次の項目。
- 各予報時刻の台風の中心位置(予報円の中心と半径)
- 進行方向と速度
- 中心気圧
- 最大風速
- 最大瞬間風速
- 暴風警戒域
だから(c)の「台風予報では,最⻑で5日先までの進路予報(予報円の中心と半径,進行方向と 速度)と強度予報(中心気圧,最大風速,暴風警戒域など)が発表される。」は正しい!
問13:週間天気予報および早期注意情報
気象庁が発表している週間天気予報および早期注意情報(警報級の可能性)について 述べた次の文(a)〜(d)の下線部の正誤の組み合わせとして正しいものを,下記の1〜5 の中から 1 つ選べ。
(a) 予報期間の2日目から7日目について,各々の日の予想降水量を発表している。
(b) 予報期間の3日目から7日目について発表している降水の有無の予報の信頼度は, 「予報が適中しやすい」ことと「予報が変わりにくい」ことを表す情報で,A,B, Cの3 段階で示す。
(c) 予報期間の 2 日目から 7 日目の最高・最低気温の予想値には,予測範囲が示され ており,実況の気温がこの範囲に入る確率はおよそ 80%である。
(d)予報期間の 5 日先までについて発表している早期注意情報(警報級の可能性)は, 「高」と「中」の 2 段階あり,「高」は警報級の現象の発生する可能性が高いこと を表し,「中」は注意報級の現象の発生する可能性が高いことを表している。

③ (a)誤, (b)正, (c)正, (d)誤
早期注意情報は警報級の可能性の予報をするものだし
週間天気予報で予報してるのは予想降水量じゃなくて「降水確率」と「降水量の7日間合計」。
そんなわけで(a)の 「予報期間の2日目から7日目について,各々の日の予想降水量を発表している。」は誤り!

降水量は1日程度先までの「天気概況」でも予報されることもあるよ。
(b)の 「予報期間の3日目から7日目について発表している降水の有無の予報の信頼度は, 「予報が適中しやすい」ことと「予報が変わりにくい」ことを表す情報で,A,B, Cの3 段階で示す。」はその通り、正しい!
週間天気予報で、こんな感じで予報されています。

(c) の「予報期間の 2 日目から 7 日目の最高・最低気温の予想値には,予測範囲が示され ており,実況の気温がこの範囲に入る確率はおよそ 80%である。」はその通り、正しい!
週間予報で見ると、こんな感じになってます。

()で囲まれた部分が 予測範囲(予想される気温の範囲)ですね。
予測範囲の誤差幅の中に実際の最高気温又は最低気温が入る確率は、約80%というのもその通りです!
早期注意情報の[高]・[中]の意味は次の通り。
- [高]:対象区域内のいずれかの市町村で警報発表中、または警報を発表するような現象発生の可能性が高い状況。
- [中]:[高]ほど可能性が高くはないが、対象区域内のいずれかの市町村で警報を発表するような現象発生の可能性がある状況。
(d)予報期間の 5 日先までについて発表している早期注意情報(警報級の可能性)は, 「高」と「中」の 2 段階あり,「高」は警報級の現象の発生する可能性が高いこと を表し,「中」は注意報級の現象の発生する可能性が高いことを表している。」は誤り!

[高]・[中]の意味は「警報」・「注意報」じゃなくて、どちらも警報についてだからね!
問14:予報精度評価
図は,ある民間気象会社が開発した真夏日となる確率を予測するガイダンスについ て,10 日間のガイダンスの値と実況(●:真夏日,×:真夏日でない)の経過を示した ものである。この図について述べた次の文章の下線部(a)~(c)の正誤の組み合わせとして 正しいものを,下記の1~5の中から 1 つ選べ。ただし,適中率,空振り率,見逃し率 は,全予報数に対する割合とする。
この 10 日間について,真夏日になるか・ならないかをガイダンスの値を判定基準と して用いて予想することとし,判定基準を変更した場合の予想精度を比較する。判定 基準を 50%から 45%に変更して予想した場合,変更前と比べて,「真夏日」か「真夏日で ない」かの予想の適中率は (a) 改善し,空振り率は (b) 増加する。また,見逃し率を下げる には,判定基準を (c) 高くすればよい。


④ (a)誤, (b)正, (c)誤
「適中率」・「空振り率」・「見逃し率」を50%と45%の場合で計算すると、次の表のようになりますよね。
判定基準50% | 真夏日になる予報 | 真夏日にならない予報 | 合計 |
---|---|---|---|
真夏日になった | 3 | 2 | 5 |
真夏日にならなかった | 1 | 4 | 5 |
合計 | 4 | 6 | 10 |
判定基準45% | 真夏日になる予報 | 真夏日にならない予報 | 合計 |
---|---|---|---|
真夏日になった | 5 | 0 | 5 |
真夏日にならなかった | 3 | 2 | 5 |
合計 | 8 | 2 | 10 |
判定基準 | 適中率 | 空振り率 | 見逃し率 |
---|---|---|---|
50% | 7/10 | 1/10 | 2/10 |
45% | 7/10 | 3/10 | 0/10 |
↑上の表から言えるのは
- 適中率は改善してない。
- 空振り率は増加してる。
- 見逃し率は減った。→見逃し率を下げるためには、判定基準を低くすれば良いことがわかる。
だから
- (a)の「改善し」は誤り!
- (b)の「増加する。」は正しい!
- (c)の「高く」は誤り!
です!
用語解説「予報精度の評価方法」
問15:月平均天気図
図A~Cは,ある年の12月の大気の循環場を表した図である。これらの図について述 べた次の文章の下線部(a)~(c)の正誤の組み合わせとして正しいものを,下記の1~5の 中から 1 つ選べ。
図 A では,太平洋赤道域中部は外向き長波放射量 OLR が正偏差で対流が不活発, インドネシア周辺は OLR が負偏差で対流が活発となっており,(a) エルニーニョ現象 時の特徴がみられている。図 A の OLR の分布に対応して,図 B では,200hPa の大 気の流れはインドシナ半島から中国付近で高気圧性循環の偏差となっており,日本付 近から日本の東海上で低気圧性循環の偏差となっている。これは,(b) 亜熱帯ジェット 気 流 が 日 本 付 近 で 平 年 に 比 べ 北 に 大 き く 蛇 行 し て い る こ と に 対 応 し て い る 。図 C で は , 500hPa 高度がシベリア北部で正偏差,日本付近で負偏差となっている。これは,(c) 寒 帯前線ジェット気流の蛇行により日本付近に寒気が南下しやすいことに対応している。



⑤ (a)誤, (b)誤, (c)正
インドネシア周辺(太平洋熱帯域の西部)で対流活動が活発ってことは、「平常時」または「ラ・ニーニャ時」なので、(a)の「エルニーニョ現象 時の特徴がみられている。」は誤り!
図Bで日本付近は負偏差。
亜熱帯ジェット気流が日本付近で北に大きく蛇行してるってことは、正偏差になるはずだから、(b)の「亜熱帯ジェット気流が日本付近で平年に比べ北に大きく蛇行している」は誤り!
図Cで日本付近は負偏差。
等高度線を見ても、日本付近でジェット気流が南側に蛇行しているのがわかります。
だから(c) の「寒帯前線ジェット気流の蛇行により日本付近に寒気が南下しやすい」に対応してて正しい!
さいごに
第55回の気象予報士試験の学科試験の「予報業務に関する専門知識」を私・晴野の解き方を紹介しました!
試験の内容も、気象業務支援センターに一報入れて、書かせてもらってます。
※解説内容は気象業務支援センターとは関係ありません。晴野独自のものです。

どんな風に説明したら私の考えが伝わるのか、試行錯誤中。
一旦公開してますが、見直して、修正していく予定です。
それと、この過去問解説はどの機関のチェックも受けていないので、もしかしたら間違った内容になっているものもあるかもしれません。
もし「ここおかしいよ!」というのを見つけたら、遠慮せずに「お問い合わせ」からご連絡いただけたら嬉しいです。m(*_ _)m
題55回気象予報士試験の学科・一般知識の解説はこちら

第54回気象予報士試験【実技試験1】【実技試験2】の過去問解説はこちら