学科専門~過去問私的解説&ヒント~第55回気象予報士試験

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4:数値予報モデルについて

問題文

気象庁が運用する数値予報モデルについて述べた次の文(a)〜(d)の下線部の正誤につ いて,下記の1〜5の中から正しいものを 1 つ選べ。

(a) 数値予報モデルでは,一定時間(ステップ)ごとに大気の状態の計算を繰り返して将 来の状態を予測する。1 ステップの⻑さは,全球モデルでは約 30 分,メソモデルで は約 10 分である。

(b) 客観解析に4 次元変分法を導入したことにより,数値予報の初期時刻と異なる時 刻に観測されたデータをより有効に利用できるようになった。

(c) メソモデルの予報結果は,予報領域の境界を通じて全球モデルの予報結果の影響 を受けるが,その影響は予報時間が⻑くなるほど小さくなる。

(d) メソモデルは静力学近似を用いておらず,対流雲を格子スケールの現象として直 接表現できるため,格子スケールより小さな対流を扱う積雲対流パラメタリゼーシ ョンは用いていない。

① (a)のみ正しい
② (b)のみ正しい
③ (c)のみ正しい
④ (d)のみ正しい
⑤ すべて誤り

② (b)のみ正しい

(a)1ステップの長さ

この問題が言う「1ステップ」とは、予測実行回数の頻度が何分ごとか?ってことかと思います。

  • 全球モデル…400秒(約6.7分)
  • メソモデル…20秒
  • 局地モデル…8秒

だから(a)の 「数値予報モデルでは,一定時間(ステップ)ごとに大気の状態の計算を繰り返して将来の状態を予測する。1 ステップの⻑さは,全球モデルでは約 30 分,メソモデルで は約 10 分である」は誤り!

(b)四次元変分法の利点

四次元変分法とは、客観解析で格子点の値を決定する方法で、非定時の値も解析に使う。

非定時における値の変化の推移も盛り込む。・・・つまり時間の次元も盛り込む手法なので四次元変分法という。

非定時の値を解析に使うということは、初期時刻と違う時刻に観測されたデータも盛り込むってことなので…

(b) の「客観解析に4 次元変分法を導入したことにより,数値予報の初期時刻と異なる時刻に観測されたデータをより有効に利用できるようになった。」は正しい!

(c)全球モデルの影響と予報時間の関係

  • メソモデルの予報結果は,予報領域の境界を通じて全球モデルの予報結果の影響 を受ける?
    • その通り!
  • メソモデルへの全球モデルの予報結果の影響は、予報時間が⻑くなるほど小さくなる?
    • 大きくなる!
はれの
はれの

日本周辺の天気を予測するメソモデル(MSM)は、予報領域とその外側との境界の計算に側面境界値として利用している全球モデル(GSM)を使っています。

これをネスティングっていいます。(呼び名は重要ではないです。)

第49回の試験にも同じ問題が出ましたが、時間の経過と共に予測結果が現実とずれて行くわけだし

そもそもMSMとGSMは解像度が違うので、側面境界でのギャップはあるよね!

だから(c) の「メソモデルの予報結果は,予報領域の境界を通じて全球モデルの予報結果の影響 を受けるが,その影響は予報時間が⻑くなるほど小さくなる。」は誤り!

(d)積雲対流パラメタリゼーション

  • メソモデルは静力学近似を用いていない?
    • その通り!
      メソモデルや局地モデルでは非静力学モデルで、積乱雲のような擾乱の予測に適しているのです。
  • メソモデルでは、対流雲を格子スケールの現象として直接表現できる?
    • いいえ、直接表現はできません。
      (局地モデルでも直接表現はできません。)
  • メソモデルでは、格子スケールより小さな対流を扱う積雲対流パラメタリゼーションは用いていない?
    • 用いてます!

だから(d) の「メソモデルは静力学近似を用いておらず,対流雲を格子スケールの現象として直接表現できるため,格子スケールより小さな対流を扱う積雲対流パラメタリゼーションは用いていない。」は誤り!

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