学科専門~過去問私的解説&ヒント~第55回気象予報士試験

6:高解像度降水ナウキャスト&降水短時間予報

問題文

気象庁が作成している高解像度降水ナウキャストと降水短時間予報について述べた次 の文(a)〜(c)の下線部の正誤の組み合わせとして正しいものを,下記の1〜5の中から 1 つ選べ。

(a) 高解像度降水ナウキャストは,降水域の発達・衰弱は予測するが,発生は予測して いない。

(b) 降水短時間予報の 6 時間先までの予測では,解析雨量により得られた降水分布の 移動に基づいて降水を予測しており,降水の強弱の変化は計算していない。

(c) 降水短時間予報の7時間先から15時間先までの予測では,メソモデルの予測を統 計的に処理した結果を用いて降水を予測しており,局地モデルの予測は用いていない。

⑤ (a)誤, (b)誤, (c)誤

(a)降水域発生の予測

高解像度降水ナウキャストでは、積乱雲の発生予測もしています。

▶︎▶︎▶︎用語解説「高解像度降水ナウキャスト

だから(a)の 「高解像度降水ナウキャストは,降水域の発達・衰弱は予測するが,発生は予測して いない。」は誤り!

(b)降水の強弱の変化

  • 降水短時間予報の 6 時間先までの予測では,解析雨量により得られた降水分布の移動に基づいて降水を予測しいる?
    • そうだね。
      速報版降水短時間予報は速報版解析雨量を使ってて
      降水短時間予報は解析雨量を使ってるよ。
  • 降水短時間予報の 6 時間先までの予測では、降水の強弱の変化は計算していない?
    • 計算してる!
      降水短時間予報では降水域の移動と降水の強さを予想しているから、「降水の強弱の変化」を計算してると言えるよね。

だから(b)の 「降水短時間予報の 6 時間先までの予測では,解析雨量により得られた降水分布の 移動に基づいて降水を予測しており,降水の強弱の変化は計算していない。」は誤り!

▶︎▶︎▶︎用語解説「降水短時間予報

(c)局地モデルの予測

降水量分布を作成には、数値予報モデルのうちメソモデル(MSM)と局地モデル(LFM)を統計的に処理した結果を組み合わせて使っています。(組み合わせは必要に応じて考慮される。)

だから(c)の 「降水短時間予報の7時間先から15時間先までの予測では,メソモデルの予測を統 計的に処理した結果を用いて降水を予測しており,局地モデルの予測は用いていない。」は誤り!

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7:天気予報ガイダンスについて

問題文

気象庁が作成している天気予報ガイダンスについて述べた次の文(a)〜(d)の下線部の正 誤について,下記の1〜5の中から正しいものを 1 つ選べ。

(a) 数値予報モデルでは,予報時間が⻑くなるにつれて予測値の系統誤差の傾向が変 化することがある。ガイダンスはそのような系統誤差を低減することができる。

(b) 数値予報モデルでは,海陸の区別が実際と一致していない格子点がある。ガイダ ンスは,海陸の区別の不一致に起因する予測値の誤差を低減することができる。

(c) 数値予報モデルが放射冷却による気温の低下を十分に予測できない場合は,気温 ガイダンスでもそのような予測誤差を低減することはできない。

(d) カルマンフィルターを用いた平均降水量ガイダンスは,数値予報モデルが予測し ていない大きな降水量が観測されると,それ以降のある期間にわたって降水量を実 際より多めに予測する傾向がある。

① (a)のみ誤り
② (b)のみ誤り
③ (c)のみ誤り
④ (d)のみ誤り
⑤ すべて正しい

③ (c)のみ誤り

(a)系統的誤差の低減

天気予報ガイダンスは系統的誤差を減らしてくれます♪

だから(a) の「数値予報モデルでは,予報時間が⻑くなるにつれて予測値の系統誤差の傾向が変化することがある。ガイダンスはそのような系統誤差を低減することができる。」は正しい!

わけですが!

はれの
はれの

「系統的誤差」の意味がわかっていれば、即答できる問題です。

▶︎▶︎▶︎用語解説「系統的誤差

(b)モデルの地形と実際の地形の差から

これも「系統的誤差」に含まれるものだと思います!

だから(b)の 「数値予報モデルでは,海陸の区別が実際と一致していない格子点がある。ガイダ ンスは,海陸の区別の不一致に起因する予測値の誤差を低減することができる。」は正しい!

(c)放射冷却はランダム誤差だけど…

放射冷却による気温ガイダンスの誤差は、気圧配置などのパターンで起きる誤差なので、これまでランダム誤差として「現状では補正できてはいない」と2018年の「ガイダンスの解説」には書かれていました。

でも!

気圧配置等で層別化できれば誤差を軽減できるであろう。つまり、今までランダム誤差として扱っていた誤差を系統誤差として補正できることになる。

つまり、今までランダム誤差として扱っていた誤差を系統誤差として補正できることになる。

ガイダンスは数値予報が持つ様々な要因による誤差を、学習のサンプル数を保ちながら系統付けてその誤差を見積り、補正している。

引用:ガイダンスの解説

つまり、2018年以降は徐々に補正できているってことですな!

だから(c)の「 数値予報モデルが放射冷却による気温の低下を十分に予測できない場合は,気温 ガイダンスでもそのような予測誤差を低減することはできない。」は誤り!

(d)ガイダンス利用の注意点

平均降水量ガイダンスは線形の統計的関係式を用いるカルマンフィルター(KLM)という手法を使っています。

で、線形・非線形問わず、ガイダンスは過去データを使用する統計的関係式を使っているので、稀な現象を予想するのは苦手。

そして季節の変わり目などの急な場の変化には、キビキビ対応できなかったりとかあるんです。

はれの
はれの

例えば常時にはないような大雨を観測した場合、「そっか、実際の降水は今まで予想してた量より多いんだ!」と学習してしまうってことね。

そしてその後一定期間は、それ以前より多めに降水量を予想してしまうという結果に…( ˊᵕˋ ; )

だから(d)の 「カルマンフィルターを用いた平均降水量ガイダンスは,数値予報モデルが予測し ていない大きな降水量が観測されると,それ以降のある期間にわたって降水量を実際より多めに予測する傾向がある。」は正しい!

  • ガイダンスの苦手なことは?
    • 大雨・強風などの稀な現象の予想
      気象の状況が急激に変化する場での気温などの予想
      (梅雨時期や盛夏期など)
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8:北半球の温帯低気圧の特徴(発達中)

問題文

北半球の発達中の低気圧に伴う前線の一般的な特徴について述べた次の文(a)〜(d)の正誤の組み合わせとして正しいものを,下記の1〜5の中から 1 つ選べ。

(a) 温暖前線では,寒気の上を暖気が滑昇しており,寒気と暖気の間には鉛直方向に成層が不安定な転移層が見られる。

(b) 地上天気図では,寒冷前線の転移層が地表面と交わる寒気側の境界を寒冷前線とする。

(c) 温暖前線面の傾きは寒冷前線面より緩やかで気塊がゆっくり上昇するので,温暖 前線面上では層状の雲が形成されやすい。

(d) 温暖前線のすぐ北側にある地点では,高度があがるとともに風向は時計回りに変 化している。

④ (a)誤, (b)誤, (c)正, (d)正

(a)転移層ではどうなってんの?

転移層(遷移層)は前線にできる層(前線層)のことなんだけど…。

  • 温暖前線では,寒気の上を暖気が滑昇している?
    • その通り!
  • 温暖前線では、寒気と暖気の間には鉛直方向に成層が不安定な転移層が見られる?
    • 転移層が見られるのはその通りなんだけど、「鉛直方向に安定」なんです。

だから(a) 温暖前線では,寒気の上を暖気が滑昇しており,寒気と暖気の間には鉛直方向に成層が不安定な転移層が見られる。」は誤り!

(b)前線は転移層のどっち側の縁?

前線は等温線が密集した部分(転移層)の南側の縁なので、暖気側ですね!

だから(b) の「地上天気図では,寒冷前線の転移層が地表面と交わる寒気側の境界を寒冷前線とする。」は誤り!

(c)寒冷前線より温暖前線の傾斜の方が緩やか

温暖前線は寒冷前線に比べて前線の傾きが緩やかで、層状の雲ができやすいのは、脊髄反射でわかりますよね!

だから(c)の 「温暖前線面の傾きは寒冷前線面より緩やかで気塊がゆっくり上昇するので,温暖 前線面上では層状の雲が形成されやすい。」は正しい!

おまけ

  • 温暖前線の傾き:1/100 ~ 1/200
  • 寒冷前線の傾き:1/50 ~ 1/100

(d)温暖前線の北側は〇気移流だから…

温暖前線の北側は、教科書的には上空にいくほど暖気移流になってるはず。

ということは、風向は順転(時計回り)してる。←温度風を思い出して!

だから(d) の「温暖前線のすぐ北側にある地点では,高度があがるとともに風向は時計回りに変 化している。」は正しい!

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9:気象衛星画像から解析される現象

問題文

図は,3 月のある日の 9 時の気象衛星画像(可視,赤外,水蒸気)である。図から解析 される現象について述べた次の文章の空欄(a)~(c)に入る語句および数値の組み合わせと して適切なものを,下記の1~5の中から 1 つ選べ。

発達した低気圧が日本海北部と三陸沖にあって,それぞれ北東に進んでいる。
日本海北部の低気圧の中心付近には中下層の雲渦がみられ,その北側にはバルジ状の厚い 雲域がある。
このような状況から,この低気圧は (a) と考えられる。
三陸沖の低気圧 の中心は北緯 41°東経 (b) °付近にあり,寒冷前線に対応する対流雲の雲列が南ま たは南西方向へ連なっている。
南西諸島から日本の南海上には (c) がみられ,華中方 面から日本の南海上にのびる上空の強風軸に対応している。

可視画像
赤外画像
水蒸気画像

③ (a)すでに閉塞している, (b)146, (c)Ci ストリーク

日本海北部の低気圧において

  • 中心付近に中下層の雲の渦&中心の北側にバルジがある場合、この低気圧は閉塞前?閉塞後?
    • 閉塞後!
      「中心付近に渦ができている」のがポイント。

三陸沖の低気圧において

南西諸島から日本の南海上で

  • この領域にあるのはCiストリーク?クラウドクラスター?
    • Ciストリーク!

      ちなみに〜
      Ciストリーク…巻雲系でジェット気流に対応した雲。
      クラウドクラスター…積乱雲系の雲の塊で、衛星画像では真っ白い塊。
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10:月別台風接近数

問題文

図は,地方別の台風接近数の月別平年値を表したものである。図中の A,B,C の組 み合わせとして正しいものを,下記の1~5の中から 1 つ選べ。ただし,D は「四国地 方」であり,選択肢の中の「九州北部地方」には山口県を含み,「関東地方」には伊豆諸 島および小笠原諸島を含まない。なお,ここで示した平年値は 2020 年時点での平年値 である。

② A:沖縄地方, B:伊豆諸島および小笠原諸島, C:関東地方および甲信地方

この問題は、消去法でやると楽。

まずAは台風接近数がダントツ1位!

ということは、Aは「沖縄地方」なので、④,⑤は候補から消えます。

残りは①, ②, ③ 。

沖縄地方の次に台風接近数が多いのは?

伊豆諸島および小笠原諸島 VS 関東地方および甲信地方

これは緯度が低い「伊豆諸島および小笠原諸島」の方が台風接近数は多くなります。

だから③は後方から消えます。

残りは①, ② 。

9月が台風接近数ピークって九州?関東?

台風接近時期のピークに注目。

台風の月別平均経路って、本やネットで見たことありますよね?

台風は7〜8月より9月〜10月の方が、平均すると東寄りの経路になります。(太平洋高気圧の勢力が弱まるため。)

だから9月に接近数のピークがあるのは、関東地方および甲信地方でしょう!

そんなわけで、答えは②!

▼問11以降は次のページをご覧ください。

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