学科一般~過去問私的解説&ヒント~第59回気象予報士試験

4:降水粒子の成長

問題文

雲の中の降水粒子の成長について述べた次の文(a)〜(d)の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の①〜⑤の中から1つ選べ。

(a)雲内での水滴の併合過程では、単位体積に含まれる水滴の質量の合計が同じであれば、大きさの異なる水滴が多数存在している場合よりも、大きさが一様な水滴が多数存在している場合の方が、水滴が速く成長する。

(b)過冷却水滴を含む雲内に生成された氷晶は、過冷却水滴と衝突・併合する過程がないと雪に成長して地上に降ってくることはできない。

(c)凝結核を持たずに形成された純水の微小水滴では、表面張力の作用により、水滴が小さいほど、より小さな過飽和度で水蒸気が凝結する。

(d)水溶性のエーロゾルを凝結核として形成された微小水滴は、同じ大きさの純水の微小水滴よりも、水滴の表面に対して平衡する水蒸気圧が低いため、凝結による成長が起こりやすい。

⑤ (a)誤,(b)誤 (c)誤 (d)正

(a)併合過程と水滴の大きさ

水滴の併合過程では、大きさと落下速度の違う水滴たちが衝突することで水滴が成長します。

落下速度は水滴の大きさに影響され、大きさが異なる水滴が存在している方が、併合過程で水滴が成長しやすいです。

だから(a)の「雲内での水滴の併合過程では、単位体積に含まれる水滴の質量の合計が同じであれば、大きさの異なる水滴が多数存在している場合よりも、大きさが一様な水滴が多数存在している場合の方が、水滴が速く成長する。」は誤り。

(b)雪

過冷却水滴を含む雲内ということは、気温は氷点下です。

また過冷却水滴と衝突・併合してたら・・・もうそれ雪というより霙か霰か?

だから(b)の「過冷却水滴を含む雲内に生成された氷晶は、過冷却水滴と衝突・併合する過程がないと雪に成長して地上に降ってくることはできない。」は誤り!

(c)純水の水滴

凝結核を持たない純水の水滴は、水滴が小さいほど表面張力により成長が妨げられます。

だから(c)の「凝結核を持たずに形成された純水の微小水滴では、表面張力の作用により、水滴が小さいほど、より小さな過飽和度で水蒸気が凝結する。」は誤り。

(d)水滴が成長しやすい条件

凝結核に水溶性のエーロゾルを持っている水滴は、純水の水滴より水滴の表面に対して平衡する水蒸気圧が低く、成長しやすいです。

だから(d)の「水溶性のエーロゾルを凝結核として形成された微小水滴は、同じ大きさの純水の微小水滴よりも、水滴の表面に対して平衡する水蒸気圧が低いため、凝結による成長が起こりやすい。」は正しい!

ここに書いてあるよ
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5:アルベドと放射平衡

問題文

地球と同じ大きさで放射平衡温度も等しい惑星が、太陽から地球までの距離の半分の距離に位置しているとする。地球のアルベドを 0.30 としたとき、この惑星のアルベドとして適切なものを、下記の①〜⑤の中から1つ選べ。なお、地球及びこの惑星は球形の黒体とする。

④ 0.83

はれの
はれの

問題の惑星X(勝手に名付けました。)は地球とそっくりで、放射平衡温度も等しいけど、太陽からの距離が地球の半分ですか…。

放射強度は距離の自乗に反比例するので、惑星Xへの太陽放射は、地球への太陽放射の4倍です。

また、放射平衡の状態は、太陽からの放射と地球からの放射が平衡してるので、等しくなります。

つまり地球の場合、こういうことですね。

この時の(1-AE) は、地球が受け取る放射の割合で、( 1 – 0.3 ) だから 0.7 です。

では次に惑星Xの場合。

惑星Xと地球の放射平衡温度は等しいので、

惑星Xからの放射 = 地球からの放射

以上の結果、惑星Xのアルベドを計算すると、0.825 でした。

だから一番近い④の「0.83」が正解ですね。

ここに書いてあるよ
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6:地上付近の風

問題文

北半球中緯度にある平坦な地域において、一定の気圧間隔で描かれた地上の等圧線の分布が、図のように東西に一様で北にいくほど間隔が狭くなっており、相対渦度の鉛直成分が図の範囲でどこでも正になっているとする。このとき地上付近の空気塊に働くコリオリ力の向きを示す矢印として適切なものを、図の①〜⑤の中から1つ選べ。ただし、コリオリパラメータは一定とし、空気塊に働く水平方向の力は気圧傾度力、コリオリ力、摩擦力のみで、摩擦力の大きさは風速に比例し、その向きは風向と反対の向きに働くとする。

はれの
はれの

求めるのは「地上付近のコリオリ力の向き」。

問題で与えられた条件は

  • 北半球である
  • 地上の等圧線である
  • 等圧線の間隔は北へいくほど狭い
  • 図のどこでも相対渦度の鉛直成分が正
  • コリオリパラメータは一定
  • 空気塊に働く水平方向の力は気圧傾度力、コリオリ力、摩擦力のみ
  • 摩擦力は風向と反対の向きに働く

ここからわかることは・・・

  • 北半球である→コリオリ力は風向の直角右向き
  • 等圧線の間隔は北へいくほど狭い→北へいくほど風速が大きい
  • 図のどこでも相対渦度の鉛直成分が正→東寄りの風→北へいくほど気圧が高い

もし地上付近ではなく、上層の風だったら、風は等圧線に平行な地衡風なんだけど・・・

地上付近なので、上記の図に摩擦力が加わります。(問題文中にもありますね。)

すると、摩擦力のぶんだけ、風速が減少します。

そして風速の減少に伴い、コリオリ力も減少します。

すると、気圧傾度力とのバランスが崩れて(変わって)、風向が等圧線に平行ではなくなります。

というわけで、答えは①ですね

ここに書いてあるよ

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