目次
問7:積雪の解析
気象庁が作成している解析積雪深・解析降雪量について述べた次の文章の中の下線部(a)〜(d)の正誤について、下記の①〜⑤の中から正しいものを1つ選べ。
解析積雪深は、解析雨量や数値予報モデルの気温や日射量などを積雪変質モデルに与えて積雪の深さを計算し、(a)アメダスの積雪深計の観測値で補正することにより作成される。積雪変質モデルでは、新たに積もる雪の量、とける雪の量を計算することで積雪の深さを求めており、(b)時間の経過とともに積雪が沈み込む深さは計算されていない。また、解析降雪量は、(c)解析積雪深が1時間に増加した量を1時間降雪量(cm)として算出しており、解析積雪深が減少した場合の1時間降雪量は0cmとしている。
解析積雪深・解析降雪量は(d)約5km四方の平均的な値のため、これより狭い局地的な降雪の多寡は表現できない。

② (b)のみ誤り
積雪深に限りませんが、数値予報の初期値は「第一推定値」を観測値を用いて客観解析して導いた値を、解析値として初期値に当てています。
解析積雪深についても同様の作業をします。
解析雨量や局地数値予報モデルなどの降水量、気温、日射量などを用いる
だから(a)の「アメダスの積雪深計の観測値で補正することにより作成される。」は正しい。
積雪変質モデルでは以下の要素等を計算することで積雪の深さを求めます。
- 新たに積もる雪の量
- 融ける雪の量
- 時間の経過により積雪が沈み込む深さ
だから(b)の「時間の経過とともに積雪が沈み込む深さは計算されていない。」は誤り。
解析降雪量とは、 1時間前から現在までに増加した解析積雪深を推定するプロダクトです。
もし 1時間前から現在までに増加した量がマイナス(積雪が減ってる)の場合、1時間降雪量はマイナス表記ではなく「0cm」と表します。
だから(c)の「解析積雪深が1時間に増加した量を1時間降雪量(cm)として算出しており、解析積雪深が減少した場合の1時間降雪量は0cmとしている。」は正しい。
解析積雪深・解析降雪量、降雪短時間予報は約5km四方の平均的な値です。
局地的な降雪の多寡は表現できないので、利用の際には気をつけましょう。
だから(d)の「約5km四方の平均的な値のため、これより狭い局地的な降雪の多寡は表現できない。」は正しい。

気象庁の知識・解説「解析積雪深・解析降雪量、降雪短時間予報」参照
問8:前線・温帯低気圧
日本付近に現れる前線や温帯低気圧について述べた次の文(a)〜(d)の正誤について、下記の①〜⑤の中から正しいものを1つ選べ。
(a)寒冷前線がある地点を通過する場合、一般にその地点では、風向は時計回りに変化し、気温や露点温度は下降する。
(b)温暖前線と寒冷前線の間の暖域に寒冷前線と平行に積乱雲の雲列が見られることがあり、これが通過すると寒冷前線が通過した時と似た風向変化をすることがある。
(c)発達中の温帯低気圧の進行方向後面では、下層への強い寒気の流入に伴って層厚が減少し、500hPa面など中層における等圧面高度が下降する一方、地上の気圧は上昇する。
(d)一般に、温帯低気圧に閉塞前線が形成され始めたときは、低気圧の一生の中で中心気圧が最も低く、最盛期の段階にあたる。

⑤ すべて正しい または ④(d)のみ誤り
寒冷前線が通過する時、教科書的には「風向は南西から北西に変化する」ので
(a)の「寒冷前線がある地点を通過する場合、一般にその地点では、風向は時計回りに変化し、気温や露点温度は下降する。」は正しい。

温帯低気圧の暖域に、寒冷前線に沿って発生する積乱雲の雲列…「ロープクラウド」のことでしょうか。
ロープクラウドは、寒冷前線の進行方向で前線に沿って発生する、衛星画像で見たらロープのように見える雲列です。
このロープクラウドは寒冷前線の対流雲から出た冷気が、下層の風と収束して発生する下層のミニ寒冷前線のような雲です。(参照:今月の気象衛星(2004年4月))
寒冷前線のようなスケールではないですが、現象としては寒冷前線と同じなので、通過時の現象は寒冷前線と似ています。
というわけで、(b)の「温暖前線と寒冷前線の間の暖域に寒冷前線と平行に積乱雲の雲列が見られることがあり、これが通過すると寒冷前線が通過した時と似た風向変化をすることがある。」は正しい。
発達中の温帯低気圧の進行方向後面…しっかりした寒気が南下していそうですね。
気温が低いと密度が高くなるので、層厚は減りますよね。
500hPa面など中層における等圧面高度が下降する一方、地上の気圧は上昇するのは、2023年1月28日00UTCの12時間予想天気図を見るとわかりやすいです。↓

だから(c)の「発達中の温帯低気圧の進行方向後面では、下層への強い寒気の流入に伴って層厚が減少し、500hPa面など中層における等圧面高度が下降する一方、地上の気圧は上昇する。」は正しい。
温帯低気圧の最盛期は、低気圧中心に寒気が入り込み、地上では閉塞前線が形成されます。
閉塞前線が形成した後も、さらに発達し、中心気圧が下がる低気圧もありますが、おおむね「閉塞前線形成」=「最盛期」=「最も中心気圧が低い期間」であるので…
(d)の「一般に、温帯低気圧に閉塞前線が形成され始めたときは、低気圧の一生の中で中心気圧が最も低く、最盛期の段階にあたる。」は、私だったら「正しい」とすると思います。
閉塞前線が形成され始めたときの「とき」が曖昧な表現だということで、④でも⑤でも正解になるようです。

問9:衛星画像
図は6月のある日の午前9時に観測された気象衛星の可視画像(上)・赤外画像(下)および、その時の地上天気図である。図にA〜Dで示した各領域で見られる雲域について述べた次の文(a)〜(d)の正誤について、下記の①〜⑤の中から正しいものを1つ選べ。
(a)領域Aの雲域は、地上低気圧の進行方向前面に位置し、可視画像では灰白色に見え、赤外画像では灰色であることから、中層雲あるいは中・下層雲と考えられる。
(b)領域Bには、可視画像では灰色の雲域が見え、赤外画像では暗い領域として表現されているので、この雲域は霧または層雲である。
(c)領域Cは、地上天気図で停滞前線の南側に位置し、可視画像では灰白色だが、赤外画像では白く輝く団塊状の雲域が見られることから、この雲域は発達した積乱雲である。
(d)領域Dには、中国山地を発生源とする地形性の巻雲が東へのびている。




④ (d)のみ誤り
領域Aの雲域は・・・
地上低気圧の進行方向前面に位置し→その通り。
可視画像では灰白色に見え→ある程度の厚みがある。
赤外画像では灰色→中層か下層の雲。
だから(a)の「中層雲あるいは中・下層雲と考えられる。」は正しい。
領域Bは
可視画像では灰色→あまり厚みはない。
赤外画像では暗い領域→雲頂が低い。→下層の雲か霧
だから(b)の「この雲域は霧または層雲である。」は正しい。
領域Cは
地上天気図で停滞前線の南側に位置し→その通り。
可視画像では灰白色→そこそこの厚みがある雲。
赤外画像では白く輝く団塊状の雲域→雲頂高度は高い&対流雲
だから(c)の「この雲域は発達した積乱雲である。」は正しい。
領域Dは
中国山地を発生源とする地形性の→こんな広範囲でそれはないんじゃない?
巻雲が東へのびている。→その通り。
だから(d)の「領域Dには、中国山地を発生源とする地形性の巻雲が東へのびている。」は誤り!
▼問10以降は次のページをご覧ください。