学科一般~過去問私的解説&ヒント~第52回気象予報士試験

ここでわかること

令和元年8月の第52回気象予報士試験の学科一般の問題を、晴野(はれの)だったらこう解く!という考え方や解き方をまとめています。

あなたが次に似たような問題を解く時、「ヒント」となるような内容を目指してます!!!

問1から順番に見る

はれの
はれの

この記事は、令和元年8月の第52回気象予報士試験の学科一般の問題と解答を持っている人向けの内容です。

※私個人の試験問題を解く時の思考例です。(気象業務支援センターとは関係ございません。)

もし第53回気象予報士試験の学科一般の問題と解答を持っていなければ、まずこちらでダウンロードしてください。

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問1:大気の構造についての問題

ここ数年、学科・一般の問1は、「大気の構造」についての問題が出てますね。

第53回の学科・一般も問1に「大気の構造」の問題が出てたので、しっかり理解して覚えておきましょう!

問題文

大気圏各層における国際標準大気の気温と気圧の特徴および層内で起きる現象について 整理した,下の表の空欄(a)〜(d)に入る適切な語句と数値の組み合わせを,下記の1〜5の 中から一つ選べ。

答えは・・・

  • (a)低い
  • (b)高い
  • (c)200
  • (d)紫外線による解離

ダウンロードした問題の選択肢を見ながら考えてくださいね。

まず(a)と(b)は対流圏・成層圏・中間圏・熱圏の温度分布は基礎中の基礎知識なので、絶対覚えてね。

鉛直方向の気温分布
対流圏では上空へ行くほど気温が下がる
成層圏では上空へ行くほど気温が上がる
中間圏では上空へ行くほど気温が下がる
熱圏では上空へ行くほど気温が上がる

(c)の気圧についての問題は、あまり注目されないところで「ここが出るんか?!」って思いました。

でも基本的なことを知ってたら解けちゃいます。

はれの
はれの

問題では「成層圏の最下層の気圧」を問われているので、答えは「対流圏界面付近の気圧」に近いですよね!

例えば馴染みのある高層天気図の300hPa面の天気図は、高度9000mくらいの天気図です。

対流圏界面の高度は8000m〜16000m。

ということは〜

選択肢にある「10hPa」は明らかにおかしくて、約200hPaが正解!

表にしておきます〜

大気圏各層最下層の気圧
熱圏約0.01hPa
中間圏約1hPa
成層圏約200hPa
対流圏約1000hPa
各圏の下層における気圧

続いて(d)!

問題に登場した用語は、この3つ。

  • 準2年周期振動
  • 紫外線による光電離
  • ブリューワー・ドブソン循環

それぞれ、どこのどんな現象のことか表にまとめます。

現象の名前どこで起こる?どんな現象?
準2年周期振動赤道付近の成層圏下部26ヶ月で東風と西風が交互に吹く現象
紫外線による光電離熱圏太陽からの紫外線(波長0.1μm以下)が原子から電子を叩き出して原子がイオン化する現象
ブリューワー・ドブソン循環下層成層圏下層成層圏の子午面で見られる、低緯度から高緯度への風が吹いている現象

中層大気の子午面の流れを表した模式図、覚えてますか?

「一般気象学(第2版)」 p254にある図9.4です。

ブリューワー・ドブソン循環って、ブリューワーさんとドブソンさんの研究でわかった循環だからの名前ですが・・・

もっとわかりやすい名前だったらなぁ…と思わずにはいられません〜

はれの
はれの

そんなわけで、答えは④でしたね。

2:熱力学の仮温度についての問題!

問題文

湿潤空気について述べた次の文章の空欄(a)〜(c)に入る適切な語句の組み合わせを, 下記の1〜5の中から一つ選べ。ただし,大気は静力学平衡の状態にあるものとする。

ある湿潤空気に対して,同じ圧力,同じ(a)をもつ乾燥空気の温度を仮温度と定義 することにより,湿潤空気の状態を表す式として,乾燥空気に対する状態方程式を用いる ことができる。ある気圧における湿潤空気の温度と仮温度とを比べると,仮温度の方 が(b)。ある地点において高度 H から大気上端までの空気の仮温度が高いほど, 高度 H での気圧は(c)

(a)は、仮温度の定義について問われていますね。

仮温度は、乾燥空気で「湿潤空気の密度そのままの空気」を同じ圧力下で作ろうと思ったら、気温〇℃になったよ!っていう温度のことです。

「仮想温度」の方がしっくりくる!

だから(a)は密度が正解。

(b)は、湿潤空気の温度と仮温度の温度、どっちが高いの?っていう問題です。

そもそも湿潤空気は乾燥空気より密度が小さいわけで。

密度の小さい湿潤空気と同じものを、乾燥空気で作った時の温度が「仮温度」なんだから、絶対に湿潤空気の温度より「仮温度」の方が高くなります!

(c)は「仮温度が高い」ってどういう意味なのか?!がわかっていれば解けますよね。

仮温度が高い

空気の密度が小さい

空気の重さは軽い

その下の気圧は低くなる

はれの
はれの

だから答えは

  • (a)同じ密度
  • (b)絶対仮温度の方が高い
  • (c)気圧は低くなる

なので①!

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3:フェーン現象の基本のき!

問題文

図 A~C のように,山の西側の麓で温度 15°Cの空気塊 A~C が,山を越えて東側の 麓まで断熱的に移動する場合を考える。それぞれの空気塊は,西側斜面を上昇する間に 図に示された高度で飽和に達する。その高度から山頂まで雲が発生し,凝結した水分は 落ちるものとする。また,空気塊は,山頂から東側斜面を下降し始めると,すぐに未飽和 となり雲は消散するものとする。

このとき,空気塊 A~C の東側の麓における温度 T A,T B,T C の大小関係として正しい ものを,下記の1~5の中から一つ選べ。ただし,湿潤断熱減率は一定とする。

フェーン現象の時のゴール地点の気温を計算する問題は、本当によく出題されます!

この第52回の試験では、細かい計算は不要ですね。

ポイントは「水蒸気がどれだけ凝結したか」です。

スタート地点の気温がa,b,c全て同じなので、山の高さは関係ありません

めちゃくちゃ大事なことなので、もう一度言います。

はれの
はれの

ポイントは「どれだけ水蒸気が凝結したか」です!

水蒸気が凝結した高度
A500m(1500m〜2000m)
B1000m(1000m〜2000m)
C750m(1000〜1750m)

水蒸気が凝結した分だけ、空気は潜熱をもらえるので

1000m>750m>500m

Tb>Tc>Ta

はれの
はれの

こういうサービス問題は、確実に解けるようになりたいですね!

4:ステファン・ボルツマン〜ウイーンの変位則!

問題文

黒体放射について述べた次の文章の空欄(a)~(c)に入る適切な数式,語句および数値の 組み合わせを,下記の1~5の中から一つ選べ。

絶対温度T の黒体の単位面積から単位時間に放射されている波長別のエネルギー量を, すべての波長について積算した全エネルギー量は(a)に比例し,単位波長あたりの放射 強度が最も強くなる波長は T に(b)する。放射強度の最大値は,地球の放射平衡温度 255K の黒体放射では波長約 11μm のところにあり,太陽の表面温度約 6000K の黒体 放射では波長約(c)μm のところにある。

この問題は、黒体放射の問題。

この「放射強度は何の何乗に比例するのか?」という問題は、定番問題です。

I=σT4

  • I:放射強度
  • σ:ステファン・ボルツマン定数(5.67×10-8W/m2•K4
  • T:絶対温度
はれの
はれの

この問題では「全エネルギー量(a)に比例する」なので、「T4に比例する」が正解ですね。

(b)と(c)は、「ウイーンの変位則」で解ける問題です。

  • λmax:最大となる波長(μm)
  • T:絶対温度(K)

単位波長あたりの放射強度が最大となるのは、上の「ウイーンの変位則」の式から、Tに反比例しますね。

Tに太陽の表面温度6000Kを代入すると

2897 ÷ 6000 = 0.48283333333……

はれの
はれの

答えは「0.5μm」!

※0.5μmの電磁波は、青〜緑あたりの可視光です♪

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5:降水過程の問題!

問題文

大気中の水蒸気が凝結して雲粒が生成され成⻑していく過程について述べた次の文 (a)〜(d)の正誤について,下記の1〜5の中から正しいものを一つ選べ。ただし,生成 される雲粒は純水の水滴とする。

(a) 表面張力のために,雲粒が小さいほど低い過飽和度で生成される。→

(b) 雲粒が凝結過程によって成⻑するとき,周囲の空気の過飽和度が同じであれば,雲粒の半径が小さいほど一定時間内での半径の増加量が大きい。→

(c) 雲粒の落下の終端速度は,雲粒の大きさによらない。→

(d) 雲粒の併合過程では,雲内の雲粒の大きさが不ぞろいの場合よりも,大きさが一様な 場合の方が雲粒は速く成⻑する。→

純粋の水って設定もポイントですね。

水滴は表面張力のせいで、小さい水滴ほど成長するのにエネルギーが必要です。

つまり水滴が小さいほど過飽和度が大きくないと成長できないってこと。

だから(a)は間違い。

(b)は〇ですね。

過飽和度が同じ空気中で…大きい雲粒と小さい雲粒の成長する「半径の増加量」はどっちが大きくなるか?ですね。

はれの
はれの

雪玉をイメージするとわかりやすいですよ。

小さな雪玉と大きな雪玉を、雪の上で同じ時間転がした場合・・・

小さな雪玉の方が元サイズと比べたら、「増加量(割合)」は大きくなりますね。

では(c)の問題!

雲粒の落下の終端速度を求める式はこれ↓

mg=6πrηV

  • m:水滴の質量
  • g:重力加速度
  • π:円周率
  • r:水滴の半径
  • η(エータ):粘性係数
  • V:落下速度

もうこの式見ただけで、落下終端速度に水滴の大きさが絡んでいることはわかりますが〜

一応、目に見える数式にしちゃいますね。

mは水滴の質量なので、球の体積×密度から質量を求める式に変えちゃいます。↓

この水滴の質量を、さっきの終端速度を計算できる式にぶちこむと〜

はれの
はれの

終端速度は「水滴の半径の2乗に比例する」ってはっきり言えますね!

だから(c)は間違い!

(d)は、雲粒→雨粒の併合過程の問題です。

はれの
はれの

これさっきの終端速度がめっちゃ関係してます!

「併合過程」は水滴の落下速度の違いで、水滴同士が衝突して併合し成長する過程のことです。

つまり、水滴同士の落下速度に差があることが大事。

水滴同士の落下速度に差がつくためには、水滴の大きさが違うことが必須!

というわけで、(d)も間違い!

水蒸気から雨粒ができる過程は、「一般気象学」や「よくわかる気象学」などの参考書を読み込んでおきましょう〜!

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