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問11:日本付近で発生する積乱雲
日本付近で発生する積乱雲について述べた次の文(a)~(d)の下線部の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の①~⑤の中から1つ選べ。
(a) 積乱雲の成長期において雲が上方に発達していくとき、雲の内部は上昇流となっており、雲の中の温度はまわりより高くなっている。
(b)夏季に地表付近が高温となることにより発達する積乱雲では、降水過程に氷粒子が関わらない「暖かい雨」であることが多い。
(c) 積乱雲からの降水粒子は落下する時に周囲の空気を引きずり降ろし、下降気流が生じる。落下途中に乾燥した気層があると降水粒子は蒸発し、空気が冷えて重くなり下向きの力が働くため、下降気流はより強化される。
(d)マルチセル型あるいはスーパーセル型と呼ばれる積乱雲が数時間にわたって維持されるためには、環境場の風の鉛直シアーの存在が重要である。

② (a)正, (b)誤, (c)正, (d)正
出題頻度・・・初めてかも?
積乱雲の成長期において、雲が上方に発達していくとき、雲の内部は上昇流となっており、その内部の温度はまわりの空気よりも高くなっています。
これは、雲が形成される際に潜熱(凝結熱)が放出されるためです。
よって(a)の「積乱雲の成長期において雲が上方に発達していくとき、雲の内部は上昇流となっており、雲の中の温度はまわりより高くなっている。」は正しい!
潜熱と上昇流のメカニズム
- 上昇と冷却: 地表付近の暖かく湿った空気が上昇すると、気圧が低くなるため膨張し、温度が下がります(断熱膨張)。
- 凝結と潜熱: 空気の温度が露点に達すると、水蒸気が水滴や氷の結晶に変わり、雲が形成されます。このとき、水蒸気が持っていた潜熱(凝結熱)が周囲の空気に放出されます。
- 浮力の発生: 放出された潜熱によって雲の中の空気が温められるため、周囲の空気よりも軽くなります。この温度差によって浮力が発生し、雲はさらに上空へ向かって加速しながら発達します。
このプロセスが積乱雲の成長期を通して繰り返し起こることで、雲は巨大な塔のように発達していきます。
出題頻度2
夏季に地表付近の高温によって発達する積乱雲では、降水過程に氷粒子が関わらない「暖かい雨」であることは少ないです。
よって(b)の「夏季に地表付近が高温となることにより発達する積乱雲では、降水過程に氷粒子が関わらない「暖かい雨」であることが多い。」は誤り!
降水過程と積乱雲
夏季に地表付近が高温になることで発達する積乱雲は、非常に背が高く、対流圏の上部まで達することが多いです。
この積乱雲の大部分は、上層の気温が氷点下になる高度をはるかに超えて成長します。
このため、雲の内部では、氷の結晶や過冷却水滴が生成され、これらが成長して降水になる「冷たい雨」(氷晶過程)が主な降水メカニズムとなります。
氷粒子は、水蒸気を効率的に集めて大きくなる能力が高く、急速に成長して雪や霰となり、解けて雨として降ってきます。
一方で、氷粒子が関わらない「暖かい雨」(併合過程)は、雲の底から頂上までがすべて0℃以上である場合に起こります。
熱帯地域の海上で発生する背の低い積雲などで見られることがありますが、夏季に地表付近の高温で発達するような、背の高い積乱雲では稀です。
したがって、日本の夏季の積乱雲は、上層に氷の粒を含むため、「冷たい雨」の過程で降水が生成されることがほとんどです。
出題頻度3
積乱雲からの降水粒子が落下する際に生じる下降気流は、特に落下途中に乾燥した気層を通過するとより強く強化されます。
よって(c)の「 積乱雲からの降水粒子は落下する時に周囲の空気を引きずり降ろし、下降気流が生じる。落下途中に乾燥した気層があると降水粒子は蒸発し、空気が冷えて重くなり下向きの力が働くため、下降気流はより強化される。」は正しい!
🌧️ 下降気流の強化メカニズム
積乱雲から降る雨粒や雹(ひょう)などの降水粒子は、落下する際に周囲の空気を引きずり降ろし、摩擦抗力によって下向きの力を生み出します。
さらに、この降水粒子が雲の下にある乾燥した空気の層を通過すると、水分が蒸発します。
この蒸発には、周囲の空気から熱を奪う気化熱が必要なため、空気が冷やされて重くなります。
重くなった空気は、より強い浮力(負の浮力)によって下向きに加速され、もともとあった下降気流をさらに強力に押し下げます。
この強化された下降気流が地上に達すると、ダウンバーストやガストフロントと呼ばれる強い突風を引き起こし、大きな被害をもたらすことがあります。
出題頻度3
マルチセル型やスーパーセル型と呼ばれる積乱雲が数時間にわたって維持されるためには、環境場の風の鉛直シアーの存在が非常に重要です。
よって(d)の「マルチセル型あるいはスーパーセル型と呼ばれる積乱雲が数時間にわたって維持されるためには、環境場の風の鉛直シアーの存在が重要である。」は正しい!
風の鉛直シアーの役割
風の鉛直シアーとは、高度によって風向や風速が変化する現象です。
これが存在することで、積乱雲は「自己破壊」を避け、ライフサイクルを延長することができます。
- 上昇流と下降流の分離
シアーがない場合、積乱雲の発達を支える上昇流と、降水が引き起こす下降流が同じ場所に発生します。
下降流が上昇流を遮断し、雲は短命に終わってしまいます。 - 新しいセルの発生
シアーがあると、下降流が上昇流から離れた場所に押し出されます。
これにより、上昇流が維持され、さらに下降流のガストフロント(突風域)が新しい上昇流のきっかけとなり、新しいセル(積乱雲の塊)を次々と形成し、全体として長続きします。
特にスーパーセルは、シアーが特定の形で存在することで、上昇流が回転し始め、非常に効率的なエネルギー供給システムを形成するため、単一のセルが長時間維持されます。
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