学科専門~過去問私的解説&考察~第64回気象予報士試験・問6

問6:気温、風、発害確率のガイダンス

気象庁が作成している気温、風、発雷確率のガイダンスについて述べた次の文(a)~(d)の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の①~⑤の中から1つ選べ。

(a)数値予報モデルは、季節によって予測誤差の傾向が変化することがある。気温ガイダンスはそのような場合にも気温の系統誤差を軽減することができる。

(b)風ガイダンスは、数値予報モデルに組み込まれている地形と実際の地形の違いによって生じる風向風速の予測誤差を軽減することができる。

(c) 風は地形の影響を受けることや、日中と夜間で数値予報モデルの風の予測の誤差特性が異なることから、風ガイダンスの予測式は予報対象時刻や風向で層別化されている。

(d) 発雷確率ガイダンスは、対象域内での発雷数の多寡を予測するガイダンスである。

① (a)正, (b)正, (c)正, (d)誤

(a)気温の系統誤差

出題頻度1

気温ガイダンスは、季節によって予測誤差の傾向が変化する場合でも、気温の系統誤差を軽減するのに役立ちます。

🌡️ 気温ガイダンスの仕組み

気温ガイダンスは、数値予報モデルが持つ系統誤差を補正するために使用される統計的手法です。

系統誤差とは、モデルが特定の条件下で常に同じような予測誤差を出す傾向のことで、たとえば、「冬のある時期には気温を常に低めに予測する」といったものです。

気温ガイダンスは、過去の膨大なモデル予測データと、そのときの実際の観測データを比較し、その誤差のパターンを統計的に学習します。

この学習データは、季節ごとの気象状況(例:夏の熱い日、冬の寒い日、梅雨の湿度の高い日など)を含むため、季節によって変化する誤差の傾向も取り込むことができます。

そんなわけなので、特定の季節にモデルが持っている予測の「癖」をガイダンスが学習していれば、その季節の予報を行う際に、その癖を修正してくれるんです。

よって(a)の「数値予報モデルは、季節によって予測誤差の傾向が変化することがある。気温ガイダンスはそのような場合にも気温の系統誤差を軽減することができる。」は正しい!

はれの
はれの

この気温の系統誤差の軽減のおかげで、季節を問わず、より精度の高い気温予報を提供することが可能になります。

(b)地形と風の予測差

出題頻度1

風ガイダンスは、数値予報モデルに組み込まれている地形と実際の地形の違いによって生じる風向風速の予測差を軽減するのに役立ちます。

風ガイダンスは、過去のモデル予測データと実際の観測データを比較し、統計的にその誤差のパターンを学習します。

この学習データには、モデルの地形表現が不完全なことによって生じる誤差も含まれます。

例えば、モデルの格子が粗すぎて表現できていない谷間や局地的な起伏による風向風速のずれを、ガイダンスは学習し、予報を修正します。

よって(b)の「風ガイダンスは、数値予報モデルに組み込まれている地形と実際の地形の違いによって生じる風向風速の予測差を軽減することができる。」は正しい!

はれの
はれの

この手法により、より精度の高い風の予報を提供することが可能になります。

(c)風ガイダンスの予測式

出題頻度1

風ガイダンスの予測式は、予報対象時刻や風向によって層別化されています。

ではなぜ層別化が必要なのでしょうか?

数値予報モデルが持つ予測誤差は、常に一定ではありません。
風の予測誤差は、以下のような要因で系統的に変化します。

  • 日中と夜間: 日中は、太陽の熱によって地面が温められ、対流が発生します。
    これにより、地表付近の風が上空の風と混ざり合い、風速が強まりやすくなります。
    一方、夜間は放射冷却によって地表付近が冷やされ、風が弱まる傾向があります。
    モデルは、これらの複雑な過程を完璧に再現できないため、日中と夜間で異なる誤差を生じさせます。
  • 風向: 風向によって、風が山や谷、建物にぶつかる角度が変わり、その影響の仕方も異なります。
    特定の風向(例:谷沿いの風)でモデルが特定の誤差を出しやすい場合があります。
  • 地形: 風は地形の影響を強く受けます。モデルが表現できない小さな起伏や谷、都市部のビル群などが、実際の風の流れを大きく変えるため、場所によって予測誤差の傾向が異なります。

これらの誤差の特性に合わせて、より精度の高い補正を行うために、予測式を予報対象時刻(日中/夜間)、風向、そして場所(地点)ごとに層別化して適用します。

これにより、風ガイダンスは、よりきめ細かくモデルの系統誤差を軽減できるのです。

よって(c) の「風は地形の影響を受けることや、日中と夜間で数値子報モデルの風の予測の誤差特性が異なることから、風ガイダンスの予測式は予報対象時刻や風向で層別化されている。」は正しい!

(d)発雷数の多寡

出題頻度2

発雷確率ガイダンスは、対象域内での落雷の発生確率を予測しています。

より具体的には、落雷を引き起こす雷雲(積乱雲)が対象のエリアに出現する確率を、時間帯別に予測するガイダンスです。

よって(d)の「 発雷確率ガイダンスは、対象域内での発雷数の多寡を予測するガイダンスである。」は誤り!

このガイダンスは、落雷の危険性を事前に把握し、安全確保のための行動を促すことを目的としています。

発雷確率ガイダンスは、特定の区域内で雷が発生する可能性の高低を予測するもので、雷の強さや雷の数そのものを予測するものではありません。

はれの
はれの

危険度以外は、降水確率と同じですね!

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