学科専門~過去問私的解説&考察~第64回気象予報士試験・問7

問7:降水短時間予報

気象庁が発表している降水短時間予報について述べた次の文(a)~(c)の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の①~⑤の中から1つ選べ。

(a) 降水短時間予報では、6時間先までは1km四方の細かさで、7時間先から15時間先までは5km四方の細かさで、1時間毎の前1時間降水量を予測している。

(b)降水短時間予報の6時間先までの予測では、解析雨量により得られた降水分布の移動に基づいて降水を予測しており、降水の強弱の変化は計算していない。

(c) 降水短時間予報の7時間先から15時間先までの予測では、メンモデルの予測結果だけでなく、局地モデルや全球モデルの予測結果を組み合わせて予測している。

③ (a)正, (b)誤, (c)誤

(a)予報の細かさ

出題頻度1

降水短時間予報は、時間の経過に伴って予報の解像度(細かさ)が変わるのが特徴です。

  • 1〜6時間先1km四方の細かさで、10分間隔で発表されます。
  • 7〜15時間先5km四方の細かさで、1時間ごとに発表されます。

予報されるのは、いずれも1時間ごとの降水量です。

よって(a)の「降水短時間予報では、6時間先までは1km四方の細かさで、7時間先から15時間先までは5km四方の細かさで、1時間毎の前1時間降水量を予測している。」は正しい!

〜ここでちょっと補足〜

降水短時間予報の仕組み

なぜ時間によって解像度や発表間隔が変わるかというと、予報手法が異なるためです。

  • 短時間(6時間先まで):レーダー観測のデータ(解析雨量)を元に、雨域の動きをそのまま外挿する実況外挿予報が中心となります。
    この手法は、精度が高い反面、長時間先には使えません。
  • 長時間(7〜15時間先):より広域的な数値予報モデルを組み合わせた予報に切り替わります。
    この手法は、新たな雨雲の発生や消滅を予測できますが、短時間予報に比べて解像度は低くなります。
はれの
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6時間先までとそれ以降で予報の精度と詳細さが変わる、という点が非常に重要です。

(b)6時間先までの予測

出題頻度1

降水短時間予報の6時間先までの予測では、解析雨量を用いて降水分布の移動を予測するとともに、降水の強弱の変化も計算しています。

予測の仕組み

降水短時間予報は、主に**外挿法(がいそうほう)**と呼ばれる手法を用いています。これは、レーダーやアメダスなどの観測データ(解析雨量)から得られた直近の降水域の移動傾向を基に、その進路を予測する手法です。

よって(b)の「降水短時間予報の6時間先までの予測では、解析雨量により得られた降水分布の移動に基づいて降水を予測しており、降水の強弱の変化は計算していない。」は誤り!

〜ここでちょっと補足〜

降水の強弱変化の考慮

降水短時間予報は、降水域の移動だけでなく、以下のような要素も考慮して、降水の強弱の変化を計算しています。

  1. 地形の影響: 山岳や海、都市といった地形が、降水域の強さにどのように影響するかを考慮しています。
    たとえば、湿った風が山にぶつかると、強制的に上昇させられて降水が強まる傾向があります。
  2. 大気の不安定度: 地上付近の気温や湿度といった大気の安定度を考慮し、今後、積乱雲が発生・発達して雨が強まる可能性や、逆に弱まる可能性を計算しています。
はれの
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これらの要素を組み合わせることで、単なる雨の「移動」だけでなく、雨の「発達」や「衰弱」も予測し、より精度の高い予報を提供しています。

(c)使われている予報モデル

出題頻度2

降水短時間予報の7時間先から15時間先までの予測では、メソモデルや局地モデルの予測結果は組み合わせていますが、全球モデルの予測結果は組み合わせていません。

よって(c)の「降水短時間予報の7時間先から15時間先までの予測では、メンモデルの予測結果だけでなく、局地モデルや全球モデルの予測結果を組み合わせて予測している。」は誤り!

〜ここでちょっと補足〜

予測の仕組み

降水短時間予報は、時間の経過とともに予測手法を切り替えています。

  • 0〜6時間先: 主に外挿法を用いています。これは、レーダーやアメダスなどの観測データから得られた雨域の移動を予測する手法です。
  • 7〜15時間先: 7時間より先になると、単純な雨域の移動だけでは予測が難しくなります。
    そのため、メソモデル局地モデルの予測結果を組み合わせています。
    これらのモデルは、降水現象を引き起こす大気の物理プロセス(例:積乱雲の発達)を計算できるため、外挿法よりも長い時間の予測に適しています。

なぜ全球モデルは使わないの?

全球モデルは、地球全体を対象にしているため、メソモデルや局地モデルに比べて解像度が低いです。

降水短時間予報は、積乱雲のような局地的な現象を予測することを目的としているため、解像度の粗い全球モデルの結果を組み込むと、かえって予測の精度が落ちてしまう可能性があります。

そのため、より高解像度なメソモデルや局地モデルの結果が優先して利用されます。

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