学科専門~過去問私的解説&考察~第62回気象予報士試験・問5

5:数値予報の誤差とアンサンブル予報

数値予報の誤差とアンサンブル予報について述べた次の文章の下線部(a)~(d)の正誤について、下記の①~⑤の中から正しいものを1つ選べ。

数値予報には、数値予報モデルやその初期値が完全でないことなどに起因する誤差が含まれる。地球大気を扱う数値予報モデルでは、格子間隔より小さなスケールの現象によって生じる効果を、(a)格子点における物理量を用いて近似的に評価しているので、実際の現象とは厳密に一致せず、誤差が生じる要因の一つとなっている。

(b)仮に数値予報モデルが完全であり、初期値に含まれる誤差が微小であったとしても、大気の持つカオス的な性質により、予報時間が長くなるにしたがって予報誤差は急速に増大することが知られている。

数値予報の誤差を予め把握するため、気象庁のメソアンサンブル予報では、(c)初期値と側面境界値に少しずつ異なった誤差(摂動)を加えた複数の予測を行っており、さらに2023年3月からは、数値予報モデルの物理過程の不確実性を考慮するために、

モデルアンサンブル手法の一つである確率的物理過程強制法が導入されている。

アンサンブル予報を利用する際の留意点として、メンバー間のばらつきが大きい時は、(d)気象要素の日々の変動が大きくなる予測であることを示している。

① (a)のみ誤り

② (b)のみ誤り

③ (c)のみ誤り

④ (d)のみ誤り

⑤ すべて正しい

④ (d)のみ誤り

地球大気を扱う数値予報モデルでは、格子間隔より小さなスケールの現象によって生じる効果を、パラメタリゼーションで取り込んで評価しています。

よって(a)の「格子点における物理量を用いて近似的に評価している」は正しい!

また、仮に誤差0の初期値であったとしても、予報モデルが現実と100%完全一致する大気を表現することは不可能です。

そして・・・

大気はカオス性があるため、将来をはっきりと予測することはできません。

そのためいくら予報技術が向上しても、大気のカオス性による誤差をなくすことはできないのです。

よって(b)の「仮に数値予報モデルが完全であり、初期値に含まれる誤差が微小であったとしても、大気の持つカオス的な性質により、予報時間が長くなるにしたがって予報誤差は急速に増大する」は正しい!

次に…気象庁のメソアンサンブル予報では、初期値と側面境界値に摂動(小さなズレ)を加えることで不確実性を考慮してきました。

よって(c)の「初期値と側面境界値に少しずつ異なった誤差(摂動)を加えた複数の予測を行っており」は正しい!

さらに2023年3月からは、摂動を加える方法に確率的物理過程強制法(SPPT 法)が取り入れられました。

また、アンサンブル予報を利用する際の留意点として、メンバー間のばらつきが大きい時は

日々の変動が大きくなるのではなく、その予報精度は下がります

よって(d)の「気象要素の日々の変動が大きくなる予測である」は誤り!

ここに書いてあるよ

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