学科専門~過去問私的解説&考察~第62回気象予報士試験・問11

11:台風の特性や影響

台風の特性や影響について述べた次の文(a)~(d)の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の①~⑤の中から1つ選べ。

(a) 北西太平洋の低緯度で発生した台風は、発生後しばらくの間、低緯度に位置するときには、太平洋高気圧の南側の偏東風に流され、西に進むことが多い。

(b)台風に伴う大気境界層内の風は傾度風で近似でき、気圧傾度力とコリオリカ及び遠心力が釣り合っている。この釣り合いにより、大気境界層では台風の中心に向かう風が現れる。

(c) 一般に、台風の進路に近い地点で、時間とともに風向が時計回りに変わったとき、その地点は台風経路の進行方向に向かって左側に位置する。

(d) 一般に、潮位偏差が大きく甚大な被害をもたらすような顕著な高潮においては、風による「吹き寄せ効果」よりも気圧低下による「吸い上げ効果」の方が、潮位上昇への寄与が大きい。

③ (a)正,(b)誤,(c)誤,(d)誤

(a)台風の進む方向

(a)の「 北西太平洋の低緯度で発生した台風は、発生後しばらくの間、低緯度に位置するときには、太平洋高気圧の南側の偏東風に流され、西に進むことが多い。」はその通りです。正しい!

(b)大気境界層での台風の風

大気境界層では地表面による摩擦を考慮しなくてはならないので、

気圧傾度力とコリオリカ及び遠心力が釣り合っている傾度風では近似できないのです。

よって(b)の「 台風に伴う大気境界層内の風は傾度風で近似でき、気圧傾度力とコリオリカ及び遠心力が釣り合っている。この釣り合いにより、大気境界層では台風の中心に向かう風が現れる。」は誤り!

(c)台風経路周辺の風向

とある地点が、台風経路の進行方向の左右どちらなのか・・・

上図より、風向が時計回りに変化するのは、台風の進行方向に向かって右側です。

よって(c) の「 一般に、台風の進路に近い地点で、時間とともに風向が時計回りに変わったとき、その地点は台風経路の進行方向に向かって左側に位置する。」は誤り!

(d)吹き寄せ効果と吸い上げ効果

台風の吹寄せ効果による潮位の上昇は、風速の2乗に比例するので・・・

風速が2倍になれば海面上昇は4倍になります。

あと、海底が浅い場所ではもっと潮位に変化があります。

海岸が湾になっているところも海水が集まってしまうので、計算上より潮位が高くなります。

一方、気圧変化による潮位の変化は、気圧が1hPa下がると、潮位は約1cm上昇すると言われています。

以上のことから、台風による潮位偏差が大きく甚大な被害をもたらすような顕著な高潮の場合、吸い上げ効果より吹寄せ効果の方が潮位上昇への寄与は大きくなります。

よって「風による「吹き寄せ効果」よりも気圧低下による「吸い上げ効果」の方が、潮位上昇への寄与が大きい。」と記されている(d) は誤り!

ちなみに、伊勢湾台風は潮岬に上陸時、929.6hPaと言われていますが、名古屋港における高潮の潮位偏差は3.55mだったそうです。

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