学科専門~過去問私的解説&考察~第62回気象予報士試験・問8

8:気象衛星画像

図は7月のある日に気象衛星ひまわりで観測された赤外画像(上)と水蒸気画像(下)である。

図中に示したA~Eの領域の雲域あるいは気象状況について述べた次の文(a)~(d)の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の①~⑤の中から1つ選べ。

なお、✕印はこの時の地上天気図における台風の中心位置を示している。

(a)Aの雲域は、華南の沿岸で発生した東西にのびる地形性巻雲とみられる。

(b)Bの雲域はCiストリークであり、上層の強風軸に対応しているとみられる。

(c)Cの領域には、大きな雲域はなく細かな対流雲しか存在しないことから、背の高い高気圧の圏内と判断される。

(d)D、Eの雲域はともに台風に伴うものであり、より発達した対流雲が存在しているEの台風の方が中心気圧が低いと推定される。

⑤ (a)誤,(b)正,(c)誤,(d)誤

(a)雲域A

Aの雲域は、赤外画像でも水蒸気画像でも明度が高く、団塊状なので、発達した対流雲だと思います。

よって(a)の「Aの雲域は、華南の沿岸で発生した東西にのびる地形性巻雲とみられる。」は誤り!

(b)雲域B

「Ci」は巻雲(シーラス)のこと。

そして「Ci(シーラス)ストリーク」は、ジェット気流の南側(北半球の場合)に沿って現れる細長い巻雲のことです。

Bの雲域の北側に水蒸気画像の暗域がありますね。

水蒸気画像では、ジェット気流(強風軸)の極側に暗域が現れる場合が多いので、Bの雲域はジェット気流に沿っていると言って良いでしょう。

よって(b)の「Bの雲域はCiストリークであり、上層の強風軸に対応しているとみられる。」は正しい!

はれの
はれの

水蒸気画像(気象衛星画像)で見られる、暖気側が明域、寒気側が暗域となった帯状の境界ラインをバウンダリーといいます。

そしてバウンダリーの少し暗域側にジェット気流があることが多いです。

(c)雲域C

Cの雲域の南側にあるジェット気流の曲がり方から見て、この領域はトラフがあるはずなので、寒気が南下していそうです。

寒気のせいで周囲より気圧が高いかもしれないですね。

・・・ということは寒冷低気圧かな。

ともかく、背の高い高気圧圏内ではないことは確かです。

よって(c)の「Cの領域には、大きな雲域はなく細かな対流雲しか存在しないことから、背の高い高気圧の圏内と判断される。」は誤り!

(d)雲域D・E

問題文より、DもEも台風の雲で、地上天気図における中心は×印のところです。

まずDですが、台風らしい点対称に近い雲域だけど、赤外画像から雲頂高度に元気がないです。

それに引き替えEは、広い範囲で雲頂高度が高く、厚みもありそう。ただ、台風中心の位置が雲域の中心付近ではないですね。

次に水蒸気画像から、Dは中〜上層の水蒸気の量に元気がなく、Eは水蒸気モリモリですね。
(表現が雑ですみません)

以上より、Dはピーク(最盛期)を過ぎた台風。

Eは発達中の台風かなと考えました。

よって問題文の「D、Eの雲域はともに台風に伴うものであり」はその通り。

次に「より発達した対流雲が存在しているEの台風の方が中心気圧が低いと推定される。」かどうかは・・・どうでしょうか。

Dは雲頂や水蒸気に元気がなくても、まだ台風らしい形状をしています。

また点対称ではないけど発達中の台風は、発達した対流雲が存在していてもまだそれほど中心気圧は低くなっていないこともありますし・・・

よって(d)は正しいとは言えず、誤りです!

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