学科専門~過去問私的解説&ヒント~第59回気象予報士試験

目次

4:天気予報ガイダンス

問題文

気象庁の天気予報ガイダンスについて述べた次の文(a)〜(c)の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の①〜⑤の中から1つ選べ。

(a)カルマンフィルタを用いたガイダンスにおいて、異なる初期時刻から計算された数値予報結果であっても、ガイダンスに入力される数値予報結果(入力値)が同じ値であれば、ガイダンスの予報結果(出力値)は常に同じ値になる。

(b)カルマンフィルタを用いたガイダンスは、主に説明変数(入力値)と目的変数(出力値)の関係が線形である場合に利用できるが、ニューラルネットワークを用いたガイダンスは説明変数と目的変数の関係が非線形の場合にも利用できる。

(c)数値予報モデルでは、予報対象時刻が昼と夜で予測値の系統誤差の傾向が変化することがある。ガイダンスではそのような系統誤差を低減することができる。

④ (a)誤, (b)正, (c)正

(a)カルマンフィルタの初期値

カルマンフィルタでは、前回の予測と実況の差に応じて、初期時刻ごとに最適な係数を用いて値を出力します。

はれの
はれの

つまり、初期時刻ごとに計算式で用いる係数が異なるので、初期時刻が違えば、出力される値(予測結果)は違うわけです。

だから(a)の「カルマンフィルタを用いたガイダンスにおいて、異なる初期時刻から計算された数値予報結果であっても、ガイダンスに入力される数値予報結果(入力値)が同じ値であれば、ガイダンスの予報結果(出力値)は常に同じ値になる。」は誤り。

(b)線形と非線形

カルマンフィルタは、線形である場合に利用でき、ニューラルネットワークは非線形の場合にも利用できる。

だから(b)の「カルマンフィルタを用いたガイダンスは、主に説明変数(入力値)と目的変数(出力値)の関係が線形である場合に利用できるが、ニューラルネットワークを用いたガイダンスは説明変数と目的変数の関係が非線形の場合にも利用できる。」は正しい。

ちなみに私の解釈はこれ

  • 説明変数:超簡単に言っちゃうと、「数値予報の結果、出力された予測値で、ガイダンスに入力する値」のこと。
  • 目的変数:超簡単に言っちゃうと、「ガイダンスで予測する出力値」のこと

(c)系統的誤差の低減

ガイダンスは場所や対象時刻による数値予報の系統的誤差を低減することができます。

だから(c)の「数値予報モデルでは、予報対象時刻が昼と夜で予測値の系統誤差の傾向が変化することがある。ガイダンスではそのような系統誤差を低減することができる。」は正しい。

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5:数値予報の客観解析

問題文

気象庁が行っている数値予報の客観解析について述べた次の文(a)〜(d)の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の①〜⑤の中から1つ選べ。

(a)客観解析は、数値予報モデルの予報値である第一推定値を観測データによって修正する処理であり、修正量は観測データと第一推定値のそれぞれが持つ誤差の大きさ等を考慮して決めている。

(b)全球モデルの初期値を作成する全球解析の 4 次元変分法には、アンサンブル予報から見積もられる予報誤差を組み込んだハイブリットデータ同化手法が用いられている。

(c)全球解析、メソ解析及び局地解析に取り込まれる解析データには、同じ解析対象時刻・同じ領域で比べても、違いがある。その理由の一つは、各客観解析によって、解析対象時刻から計算処理を開始するまでの時間が異なることである。

(d)4 次元変分法による解析では、数値予報モデルを実行することで大気状態の時間変化を考慮するため、3 次元変分法による解析に比べて計算量が多くなる。

① (a)正, (b)正, (c)正, (d)正

(a)客観解析

客観解析とは「過去に予報した現在時刻の予報値(第一推定値)を、現在の観測データで補正して値を決める作業」のこと。

解析の際、観測データは、格子点周辺の複数の観測値と距離の関係から、重みを加えて用います。

だから(a)の「客観解析は、数値予報モデルの予報値である第一推定値を観測データによって修正する処理であり、修正量は観測データと第一推定値のそれぞれが持つ誤差の大きさ等を考慮して決めている。」は表現の方向が違うけど…正しい。

「それぞれの関係から、重みを加えている」と「誤差の大きさ等を考慮して決めている」は、同じ意味に感じます。(ややこしいな!)

(b)全球モデルの4次元変分法

全球解析では大気の解析手法として4次元変分法が使用され、

4次元変分法をベースにアンサンブル予報から見積もられる予報誤差を組み込むハイブリッドデータ同化が用いられています。(気象庁の数値予報解説資料集より)

だから(b)の「全球モデルの初期値を作成する全球解析の 4 次元変分法には、アンサンブル予報から見積もられる予報誤差を組み込んだハイブリットデータ同化手法が用いられている。」は正しい。

ちなみに・・・

「ハイブリット同化法」とは、「従来のデータ同化システムをベースに、アンサンブル予報から見積もられる予報誤差を利用する同化システム」のことです。

(c)取り込まれる観測データ

全球解析、メソ解析、局地解析の各解析に取り込まれる観測データは、同じ時刻・同じ領域で比較しても等しい値にはなりません。

その理由の一つに、観測データの待ち受け時間の違いがあります。

この「観測データの待ち受け時間の違い」が、解析対象時刻・領域が同じでも「観測データが違う」ということに繋がっています。

問題文にある「解析対象時刻から計算処理を開始するまでの時間」は、上記の「待ち受け時間」のことでしょうから

(c)の「全球解析、メソ解析及び局地解析に取り込まれる解析データには、同じ解析対象時刻・同じ領域で比べても、違いがある。その理由の一つは、各客観解析によって、解析対象時刻から計算処理を開始するまでの時間が異なることである。」は正しい、となりますね。

もう少し詳しく

観測データの待ち受け時間は、長ければ精度の良くなりますが、迅速性を優先するなら短い方が良いわけです。

はれの
はれの

このような理由で、予報の目的別に待ち受け時間が違うのですね。

各解析の待ち受け時間です。↓(令和4年度数値予報解説資料集より)

待ち受け時間
全球解析
(速報解析)
2時間20分
全球解析
(サイクル解析)
11時間50分(初期時刻00,12UTC)
7時間50分(初期時刻06,18UTC)
メソ解析50分
局地解析30分

(d)4次元変分法と3次元変分法

4次元変分法では3次元変分法と違い、非定時における値の変化の推移も盛り込みます。

情報量が多いわけなので、予報の精度も上がります。

でも計算量が膨大になるのが難点。

だから(d)の「4 次元変分法による解析では、数値予報モデルを実行することで大気状態の時間変化を考慮するため、3 次元変分法による解析に比べて計算量が多くなる。」は正しいです。

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6:数値予報プロダクトの利用

問題文

気象庁が作成している数値予報プロダクトの利用に関して述べた次の文(a)〜(c)の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の①〜⑤の中から1つ選べ。

(a)数値予報プロダクトの格子点値は、格子の中心に対応する地点の値をピンポイントで表している。

(b)メソモデルの予測結果は、予測領域の境界を通じて全球モデルの予測結果の影響を受けるが、その影響は予報時間が長くなるほど小さくなっていく。

(c)アンサンブル予報におけるすべてのメンバーの予報を平均した予報結果では、各予報要素間の物理的な整合性は保障されていない。

④ (a)誤, (b)誤, (c)正

(a)格子点値はどこの値?(サービス問題)

よく勉強しているあなたなら、(a)の問題文が誤りであることは秒でわかりますよね。

格子点の値は、格子点の周囲の観測所から得られた値を内挿して求めています。

(b)全球モデルの影響は大きくなる

全球モデルの値は、メソモデルの側面境界値に利用されます。

だから「メソモデルの予測結果は、予測領域の境界を通じて全球モデルの予測結果の影響を受ける」はその通り。

でもその影響は予報時間が長くなるほど小さくなっていく。」は誤り。

影響は、予報時間が長くなるほど大きくなります。(第55回試験でも出題された内容です。)

(c)アンサンブル予報

問題文がわざと(?)難しい表現になっているので、私解釈の文章にすると・・・

「アンサンブル予報のにおけるすべてのメンバーの予報を平均した予報結果は、物理的に矛盾がないなんて言えません。」と読めます。

つまり、「アンサンブル予報の予報結果は、物理的に矛盾を抱えてます。」ということかな。

確かに、全てのメンバーを平均すれば、予報精度が良くなるはずなのですが…

系統的誤差を減らせるわけではないし

アンサンブルするメンバーを、増やせば増やすほど精度が良くなるわけでもありません。

だから、(c)の「アンサンブル予報におけるすべてのメンバーの予報を平均した予報結果では、各予報要素間の物理的な整合性は保障されていない。」は正しいでしょう。

はれの
はれの

それにしても、文章が意地悪というか、高尚すぎて辛いです〜

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