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気象予報士試験・学科試験「予報業務に関する専門知識」の過去問の中から、最も高頻度で出題される科目「予報」についての問題のみを集めました。
今回は第54回と第53回の試験に出題された問題をまとめています。
ここでは気象予報士試験の学科試験・専門知識で出題される科目「予報」についての過去問(第54回の試験〜第53回の試験)をまとめておさらいできるようになっています。
「予報」に関する問題は、毎回4〜6問出題されるので、ぜひ過去問を集中してインプットしていきたいところです。
似たような問題を繰り返し解くことで、学習効率も上がりますしね!
過去に「予報」に関してどんな問題が出ていたのかがわかり、受験勉強がサクサク進みますよ!
※「予報」についてのその他の試験回の過去問まとめはこちらからどうぞ
【学科・専門】「予報」に関する過去問&解説総まとめ!
第54回出題:全球モデルの初期値を作成する客観解析について
気象庁の全球モデルの初期値を作成する客観解析について述べた次の文(a)~(c)の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の①~⑤の中から1つ選べ。
(a)ラジオゾンデによる高層気象観測データは大気を直接観測しており精度が高いため、観測地点の直近の格子点では、この観測データそのものを解析値としている。
(b)台風周辺の初期値の精度向上のため、台風の中心気圧や強風半径の情報に基づいて推定された台風周辺の気圧や風の分布が、擬似的な観測データとして客観解析に利用されている。
(c)観測データは第一推定値と比較され、その差が定められた基準を超える場合は客観解析には利用されない。
③ (a)誤, (b)正, (c)正
数値予報モデルの格子点の直近に観測地点があったとしても!観測データそのものを解析値とすることはありません!(大気のカオス的性質のため)
だから(a)の「ラジオゾンデによる高層気象観測データは大気を直接観測しており精度が高いため、観測地点の直近の格子点では、この観測データそのものを解析値としている。」は誤り!
「台風の中心気圧や強風半径の情報に基づいて推定された台風周辺の気圧や風の分布」とは、「台風ボーカス」のことですね。
この「台風ボーカス」は、台風周辺の全球モデルの客観解析に使われています。
だから(b)の「台風周辺の初期値の精度向上のため、台風の中心気圧や強風半径の情報に基づいて推定された台風周辺の気圧や風の分布が、擬似的な観測データとして客観解析に利用されている。」は正しい!
▶︎全球モデル(GSM)における台風の進路予測精度の向上について~
客観解析では、観測データが第一推定値よりかけ離れているとReject(排除)となります。
だから(c)の「観測データは第一推定値と比較され、その差が定められた基準を超える場合は客観解析には利用されない。」は正しい!
ポイントをまとめよう
ラジオゾンデの観測データ | そのままの値をモデルの初期値にはしない! |
台風周辺の初期値 | 台風ボーカスを使って、台風の中心気圧や強風半径の情報に基づいて推定された台風周辺の気圧や風の分布が、擬似的な観測データとして客観解析に利用されている。 |
客観解析で観測データが第一推定値よりかけ離れている場合 | Reject(排除)となる。 |
第54回出題:アンサンブル予報について
アンサンブル予報について述べた次の文(a)~(d)の下線部の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の①~⑤の中から1つ選べ。
ただし、アンサンブル予報は同一の数値予報モデルを用いているものとする。
(a)初期値に含まれる誤差によって生じる予測の不確実性の情報を得るため、アンサンブル予報では、摂動を加えた少しずつ異なる多数の初期値について、予測を行っている。
(b)予報結果のアンサンブル平均をとることで、数値予報モデルが持つ系統的な誤差を除去することができる。
(c)アンサンブル予報のスプレッドが大きい場合は、小さい場合に比べて予報の信頼度が高い。
(d)アンサンブル予報などによる確率予報の評価指標の1つであるブライアスコアは、現象の気候学的出現率の影響を受けるため、出現率の異なる現象に対する確率予報の精度の比較には適さない。
③ (a)正, (b)誤, (c)誤, (d)正
予報の精度が時間と共に低くなるのは、初期値に誤差が含まれるからです。
だから初期値に含まれる誤差の範囲内で、少しずつ違う値を用意することができますね。
「摂動」っていうのは「小さな攪乱(かくらん)・ずれ」という意味だから…
(a)の「初期値に含まれる誤差によって生じる予測の不確実性の情報を得るため、アンサンブル予報では、摂動を加えた少しずつ異なる多数の初期値について、予測を行っている。」の下線部は正しい!
予測の結果を平均することで、個々のアンサンブルメンバー(予測結果の値)に含まれる誤差が打ち消されて、予測精度が向上します。
「系統的な誤差」というのは「偶然じゃない、一定の傾向を持つ誤差のこと」。
今のアンサンブル予報では、実況との差に系統的な誤差(バイアス)が少なからず存在します。
つまり「除去できてない」。
だから(b)の「予報結果のアンサンブル平均をとることで、数値予報モデルが持つ系統的な誤差を除去することができる。」の下線部は間違い!
「アンサンブル予報のスプレッドが大きい」ということは、わずかな初期値の違いで個々の予測結果が大きく違うということです。
大きな差がある予測結果を平均すれば、精度が下がることは想像できますよね?
だから(c)の「アンサンブル予報のスプレッドが大きい場合は、小さい場合に比べて予報の信頼度が高い。」の下線部は間違い!
ブライアスコアは、現象の気候学的出現率の影響を受けます。
だから「異なる標本」や「出現率の異なる現象」に対する予測の精度を比較するのには適しません。
(d)の「アンサンブル予報などによる確率予報の評価指標の1つであるブライアスコアは、現象の気候学的出現率の影響を受けるため、出現率の異なる現象に対する確率予報の精度の比較には適さない。」の下線部そのまんまなので、正しい!
ポイントをまとめよう
アンサンブル予報の初期値 | 摂動を加えた少しずつ異なる多数の初期値について、予測を行っている。 |
今のアンサンブル予報では、実況との差に系統的な誤差(バイアス)は存在するか | 少なからず存在する。 |
系統的な誤差を除去できるか | 予報結果のアンサンブル平均をとることでは、数値予報モデルが持つ系統的な誤差を除去できない。 |
アンサンブル予報のスプレッドが大きい場合の予測結果の精度 | 予測結果の精度は下がる |
アンサンブル予報のスプレッドが大きい場合の予報の信用度 | 小さい場合に比べて予報の信頼度が低い。 |
ブライアスコアは「異なる標本」や「出現率の異なる現象」に対する予測の精度を比較するのには適しているのか? | 適していない。 |
出てきた用語 | 意味 |
---|---|
系統的な誤差 | 偶然ではない一定の傾向を持つ誤差のこと |
ブライアスコア (BS) | ブライアスコアとは、降水確率予報の精度を表すスコア |
第54回出題:天気予報ガイダンスについて
気象庁の天気予報ガイダンスについて述べた次の文(a)~(c)の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の①~⑤の中から1つ選べ。
(a)数値予報モデルで予想された降水域の位置が実際の位置から外れている場合、降水量ガイダンスにより、その位置のずれを修正し誤差を大幅に減らすことは困難である。
(b)風ガイダンスにより、数値予報の風速の予測誤差を低減することはできるが、風向の予測誤差を低減することは困難である。
(c)発雷確率ガイダンスは、対象領域内での発雷数の多寡を予想するガイダンスである。
③ (a)正, (b)誤, (c)誤
降水量ガイダンスに「降水域の位置のずれを修正し、誤差を大幅に減らす」ことができるのか?
この「降水域の位置のずれ」っていうのは「系統的な誤差」ではなく、「ランダム誤差」にあたります。
で、この「ランダム誤差」は、まだ修正不可能なんです。
だから(a)の「数値予報モデルで予想された降水域の位置が実際の位置から外れている場合、降水量ガイダンスにより、その位置のずれを修正し誤差を大幅に減らすことは困難である。」は正しい!
風ガイダンスの
- 風速の予測誤差を低減できる?
- 風向の予測誤差を低減できる?
という問題です。
風向・風速の予測誤差は、モデルと実際の地形が違うなどの系統的誤差なので、誤差は低減できます。
だから(b)の風ガイダンスにより、数値予報の風速の予測誤差を低減することはできるが、風向の予測誤差を低減することは困難である。」は誤り!
風向も風速も誤差は修正してますよ〜
発雷確率ガイダンスが「発雷数の多寡を予想する」ガイダンスなのか?という問題です。
「発雷確率ガイダンス」は降水確率と同じで、発雷数が多いか少ないかではなく、発雷するかどうかの確率を予測するガイダンスです。
だから(c)の「発雷確率ガイダンスは、対象領域内での発雷数の多寡を予想するガイダンスである。」は誤り!
ポイントをまとめよう
降水域のずれは修正可能か? | 「降水域の位置のずれ」っていうのは「系統的な誤差」ではなく、「ランダム誤差」にあたり、まだ修正不可能。 |
風ガイダンスの風向・風速の予測誤差を低減できるか? | 風向・風速の予測誤差は、モデルと実際の地形が違うなどの系統的誤差なので、誤差は低減できる。 |
発雷確率ガイダンスは発雷の多寡を予想できるか? | 発雷確率ガイダンスは、発雷の「ある or なし」を予想するものだから、発雷の多寡は予想できない。 |
出てきた用語 | 意味 |
---|---|
ランダム誤差 | ランダム誤差とは、規則性がない雑音(ノイズ)的な誤差のこと。 ▶︎ランダム誤差についてもっと詳しく! |
系統的誤差 | 系統的誤差とは、偶然じゃない、一定の傾向を持つ誤差のことで「予測値と実測値の差」のこと。 ▶︎系統的誤差についてもっと詳しく! |
第54回出題:解析雨量について
解析雨量について述べた次の文(a)~(d)の下線部の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の①~⑤の中から1つ選べ。
(a)解析雨量は、気象レーダーと雨量計の観測データを組み合わせ、降水量分布を1km四方の細かさで解析したもので、面的に雨量を推定できる気象レーダーと、正確な雨量を観測できる雨量計の両方の長所を活かしたものである。
(b)海上の解析雨量は、陸上の雨量計から得られた情報を用いて気象レーダーの観測データを補正しているため、陸上よりも一般に誤差が大きい。
(c)解析雨量は実測値ではないことから、土壌雨量指数や表面雨量指数の算出の際の入力データとしては利用されない。
(d)解析雨量には、30分ごとに1時間雨量を算出するものと、10分ごとに1時間雨量を算出する速報版がある。後者は前者より、利用する雨量計データの数が少ないため精度は若干低いが、更新頻度が高く、観測から提供まで要する時間が短い。
② (a)正, (b)正, (c)誤, (d)正
では個別に「正しい」「誤り」の根拠をお伝えします!
解析雨量は、「面的に雨量を推定できる気象レーダー」と「正確な雨量を観測できる雨量計」の両方の長所を活かしたものである。
はいまったくその通り!
だから(a)の「解析雨量は、気象レーダーと雨量計の観測データを組み合わせ、降水量分布を1km四方の細かさで解析したもので、面的に雨量を推定できる気象レーダーと、正確な雨量を観測できる雨量計の両方の長所を活かしたものである。」の下線部は正しい!
海上では、陸上のような実際の雨量を観測するって難しいですよね。
だから陸上の「レーダーのデータを実際の雨量で補正」と同じことを「実際の雨量の値」がないけど補正してます。
するとどうしても、陸上の解析雨量より誤差は大きくなります。
というわけで(b)の「海上の解析雨量は、陸上の雨量計から得られた情報を用いて気象レーダーの観測データを補正しているため、陸上よりも一般に誤差が大きい。」の下線部は正しい!
解析雨量は、土壌雨量指数、表面雨量指数、流域雨量指数の算出や、これらを用いた大雨・洪水警報の危険度分布を求めるためにも利用されます。▶︎気象庁
だから(c)の「解析雨量は実測値ではないことから、土壌雨量指数や表面雨量指数の算出の際の入力データとしては利用されない。」の下線部は誤り!
解析雨量には以下のものがあります。
- 10分ごとに1時間雨量を算出→速報版解析雨量図
- 30分ごとに1時間雨量を算出→解析雨量図
速報版解析雨量は算出処理の所要時間を短縮しているので、雨量の算出に利用できる雨量計の数に制限があります。
だから算出処理の所要時間がより長くより多くの雨量計を用いて雨量を解析している速報版じゃない「解析雨量」の方が精度が高くなります。
というわけで(d)の「解析雨量には、30分ごとに1時間雨量を算出するものと、10分ごとに1時間雨量を算出する速報版がある。後者は前者より、利用する雨量計データの数が少ないため精度は若干低いが、更新頻度が高く、観測から提供まで要する時間が短い。」の下線部は正しい!
参考資料 ▶︎速報版解析雨量・速報版降水短時間予報
ポイントをまとめよう
気象レーダー | 画的に雨量を推定できる。 |
雨量計 | 正確な雨量を測定できる。 |
海上の解析雨量 | 気象レーダーで観測したデータを陸上の雨量計から得られたデータで修正しているので、陸上の解析雨量より誤差が大きい。 |
解析雨量を利用している指数等 | 土壌雨量指数 表面雨量指数 流域雨量指数 大雨・洪水警報の危険度分布 |
出てきた用語 | 意味 |
---|---|
解析雨量図 | 気象レーダーと雨量計を組み合わせ、1時間雨量を1kmメッシュで解析した雨量図。 |
速報版解析雨量 | 10分ごとに1時間雨量を発表。(更新頻度が高い) 利用する雨量計のデータが少ないことから、相対的に精度が低い。 |
解析雨量 | 30分ごとに1時間雨量を発表。 |
第53回出題:数値予報の計算手法について(CFL条件)
数値予報の計算手法について述べた,数式を含む次の文章の空欄(a)~(d)に入る語句 の組み合わせとして正しいものを,下記の1~5の中から 1 つ選べ。
数 値 予 報 に お い て ,安 定 な 計 算 を 行 う た め の 条 件 に C F L 条 件 と 呼 ば れ る も の が あ り , 以下の式で表される。
この条件によると,例えば,格子間隔が 2km で風速が 50 m/s の風が吹く場合,積 分時間間隔は (c) より短くする必要がある。また,計算領域や鉛直方向の層数などの 他の条件を変えずに水平分解能を2倍にするためには, (d) の計算量が必要となる。
(d)鉛直方向の分解能が高いので、接地境界層内の風の詳細な鉛直構造を把握するのに適している。
⑤
- (a)格子間隔
- (b)積分時間間隔
- (c)40秒
- (d)8倍
CFL条件・またはクーラン条件と言いまして・・・コンピュータが安定な計算をするための条件のことです。
- ΔX:格子点間隔
- Δt:タイムステップ(積分時間間隔)
- C:流れの速さ
コンピュータで安定な計算をするために、このCFL条件を満たさなければなりません。
CFL条件で言えること | タイムステップに上限がある。 ΔX/ΔtはCより大きくなければならない。 |
CFL条件の式で出来ること | タイムステップの大きさを求めることができる。 |
(a)と(b)はそのまんま答えれるとして、(c)は算数の問題です。
答えは40秒より小さいって出ましたね。
単純に水平分解能が2倍になった時、3次元だとどうなるか?って問題ですよね。
縦×横×高さが2倍ずつ増えるので、私は
2×2×2=8
と計算しました!
ポイントをまとめよう
CFL条件で言えること | タイムステップに上限がある。 ΔX/ΔtはCより大きくなければならない。 |
CFL条件の式で出来ること | タイムステップの大きさを求めることができる。 |
出てきた用語 | 意味 |
---|---|
CFL条件とは | クーラン条件のこと。 コンピュータが安定な計算をするための条件。 {ΔX(格子点間隔)/Δt(タイムステップ)}>C(流れの速さ) |
第53回出題:天気予報ガイダンスについて
気象庁の天気予報ガイダンスについて述べた次の文(a)〜(c)の下線部の正誤の組み合 わせとして正しいものを,下記の1〜5の中から 1 つ選べ。
(a) 天気予報ガイダンスの主な役割として,数値予報による予測値を補正することや, 数値予報が直接予測しない要素の予測値を作成することが挙げられる。
(b) 降水量ガイダンスでは,頻度バイアス補正と呼ばれる手法により,予測降水量の 頻度分布が実況降水量と同様の頻度分布になるように予測値を補正している。その 効果が期待できるのは主に,激しい雨のような発生頻度の少ない現象に対する補正 についてである。
(c) ガイダンスを作成する際に利用される手法の 1 つである層別化は,時刻,季節な どにデータを分けて学習して,係数を求め,予測に利用する手法である。これによ り,例えば数値予報モデルが昼と夜で異なるバイアスを持つ場合も,そのバイアス 特性に応じた適切な誤差の補正が期待できる。
① (a)正, (b)正, (c)正
天気予報ガイダンスとは、「予報支援資料」のこと。
例えば・・・
- 降水量
- 降水確率
- 最高(最低)気温
などです。
天気予報ガイダンスの特徴は
- 数値予報では十分表現できない地形的な効果を、関係式の中に取り込むことができる。
- 天気の予報(カテゴリー予報)だけでなく、気温や降水量の予報(量的予報)にも十分利用できる。
- 数値予報では直接予測できない「降水確率」などを計算できる。
要するに、「予測値と観測値の誤差」を取り入れていくことで、予報値を修正できるし、数値予報が直接予報できないような確率予想の計算だってできちゃうってこと。
「バイアス」は「偏り」のことですが・・・
降水量ガイダンスの頻度バイアスとは、発生頻度は低い大雨などの重要な予報の精度を上げるために、発生頻度が他と同じになるように補正すること。
この気象庁のpdfに記載されています。→高解像度全球モデル
層別化は
- 場所
- 対象時刻
- 予報時間
- 季節
などで起きる数値予報の誤差をいい感じの精度にするために、予測式の係数を変えることを言います。
「昼と夜でバイアス(偏り)があっても補正できる」ってことですね!
気象庁の資料にも書いてあります。→ガイダンス
ポイントをまとめよう
天気予報ガイダンスの主な役割 | 数値予報による予報値を補正する役割。 数値予報が直接予報しない要素の予測値を作成する役割。 |
激しい雨のような発生頻度の低い現象へのバイアス補正 | 降水量ガイダンスでは、頻度バイアス補正をし、予測値を補正している。 |
層別化によりできること | バイアスの特性に応じた適切な誤差の補正ができる。 |
出てきた用語 | 意味 |
---|---|
頻度バイアス補正 | 発生頻度の少ない現象に対する補正。 予測値を補正している。 |
層別化 | 時刻・季節などにデータを分けて学習する手法。 |
第53回出題:数値予報プロダクトの利用について
気象庁の数値予報プロダクトの利用にあたって留意すべき事項について述べた次の文 (a)〜(c)の正誤の組み合わせとして正しいものを,下記の1〜5の中から 1 つ選べ。
(a) 数値予報モデルで計算される地上気温は,水平解像度にあわせたモデルの地形に 応じて算出されるため,実際の気温に対して系統的な誤差をもつ場合がある。
(b) 水平解像度2kmの局地モデルは,発達した積乱雲による大雨などの局地的な現象 をある程度表現できるが,予測結果については,位置のずれや時間のずれを考慮す る必要がある。
(c) アンサンブル予報におけるすべてのメンバーの予報を平均した予報結果は,個々の メンバーのどの予報結果よりも常に精度が良い。
② (a)正, (b)正, (c)誤
数値予報プロダクトっていうのは、「数値予報の結果できあがったもの」ってことです。
例えば
- 週間予報ガイダンス
- 降水ガイダンス
- 気温ガイダンス
などのことを「プロダクト」だと思ってOK。
問題をわかりやすい言葉に変えると
色々ある数値予報ガイダンスについて、留意すべき事項→気にした方が良いことって何でしょうか?
ですね。
数値予報は、実際の地形に近い…でも実際の地形とは違うモデルを使って計算するので、どうしても実際に観測される気温とは違ってきますよねー。
答えは気象庁の資料の中にある!→局地モデルの特性と利用乗の留意点
アンサンブル予報は、初期値の少しずつ違う予報をたくさん集めて、結果と統計的に処理した予報のことです。
問題で問われているのは、たくさんある予報結果の平均値は、個々の予報値より「いつも精度の良い予報ができる!」というのが正しいのか?ってことです。
平均値は、たくさんある予報値の誤差を修正して予報としての精度が向上したとしても、必ず実際の観測値に近くなるわけではないです。
ポイントをまとめよう
数値予報での地形 | 実際の地形を再現できていない。→誤差になる。 |
水平解像度2kmの局地モデルのねらい | 高解像度な予報(積乱雲などを表現できる。) 高頻度予報(1日24回) |
局地モデルの注意点 | 積雲対流の発生・発達・衰弱アンサンブル予報に関する時間・位置・強度の予想が実況からずれることがある。 |
アンサンブル予報の予報結果は常に精度が高いか? | 常に精度が高いとは限らない。 |
出てきた用語 | 意味 |
---|---|
数値予報プロダクト | 「数値予報の結果できあがったもの」のこと。 |
アンサンブル予報 | 初期値の少しずつ違う予報をたくさん集めて、結果と統計的に処理した予報のこと。 |
第53回出題:降水短時間予報について
気象庁は,2018 年 6 月,降水短時間予報の予報時間を 6 時間先までから 15 時間先 までに延⻑した。この降水短時間予報について述べた次の文(a)〜(c)の正誤の組み合わせ として正しいものを,下記の1〜5の中から 1 つ選べ。
(a) 15 時間先までの降水短時間予報は,夜間から明け方に大雨となる見込みを暗くなる 前の夕方の時点で提供することから,早めの防災対応につながることが期待される。→正
(b) 降水短時間予報は,1時間ごとの1時間降水量を,6時間先までは1km四方で, 7〜15 時間先までは 5km 四方で予報している。→正
(c) 7〜15 時間先の降水短時間予報は,メソモデルと局地モデルを統計的に処理した結 果を組み合わせて作成している。→正
① (a)正, (b)正, (c)正
降水短時間予報が6時間から15時間に変わって、朝出かける時も夜寝る時も、予定を立てられるようになって助かります!
台風等により夜間から翌日の明け方に大雨となる可能性がある地域を夕方の時点で把握できるようにすることなどにより、現状より早い段階で市町村長の避難準備・高齢者等避難開始や住民の自主避難の判断を支援するため・・・
引用:気象庁
もう「答えそのまんま」ですね!
夕方の4時に15時間っていうと、翌日の朝7時までのことなので、早い段階で避難所にいく判断もできるわけです。
だから(a)は〇!
降水短時間予報では
1時間ごとの1時間降水量を予想している→〇
気象庁の今後の雨(降水短時間予報)のページに書かれています。
15時間先までの1時間ごとの降水量分布を予測したものを表示します。
引用:気象庁
6時間先までは1km四方で予報している→〇
2018年3月5日から、やってます。
10 分毎更新・1km 格子で 6 時間先までの「速報版降水短時間予報」
引用:気象庁
7〜15時間先までは5km四方で予報している→〇
2018年6月20日から、やってます。
1 時間毎更新・5km 格子で 7~15 時間先までの「降水 15 時間予報」の運用を開始した。
引用:気象庁
こういう情報って、参考書だけから学ぶのは難しいことも多いです。
日頃から気象庁の発信に注目したり、過去問は新しいもの順にかたっぱしから解くと良いですよ。
この問題の答えは「イラスト図解 よくわかる気象学 専門知識編(202ページ)」にそのまんま書かれています。
7~15 時間先までの「降水 15 時間予報」にはメソモデルと局地モデルを、組み合わせて使っている。
降水短時間予報が予報しているもの | 1時間ごとの1時間降水量 |
降水短時間予報の解像度 | 6時間先まで→1kmメッシュ 7~15時間先まで→5kmメッシュ |
7~15時間先の予報作成に用いられるもの | 数値予報…メソスケールモデル(MSM)・局地モデル(LFM) 700hPaの風・900hPaの風・地形データ |
出てきた用語 | 意味 |
---|---|
降水短時間予報 | 降水短時間予報とは、気象庁のHPで「今後の雨」という表示で発表されている15時間先まで予想している「今後の雨の予報」のこと。 ▶︎降水短時間予報(今後の雨) |
メソモデル(MSM) | 格子点間隔5kmのモデル。 25km~40km以上のスケールでないと表現できない。 |
局地モデル(LFM) | 格子点間隔2kmのモデル。 10km以上のスケールでないと表現できない。(個々の積乱雲は表現できない。) |
第53回出題:竜巻発生確度ナウキャスト&竜巻注意情報について
⻯巻発生確度ナウキャストおよび⻯巻注意情報について述べた次の文(a)〜(d)の正誤 の組み合わせとして正しいものを,下記の1〜5の中から 1 つ選べ。
(a) ⻯巻発生確度ナウキャストは,⻯巻等の激しい突風が今にも発生する(または発生 している)可能性の程度を推定するもので,発生確度を 10km 格子単位で解析し,1 時間後までの予測を 10 分毎に更新して発表する。→正
(b) 発生確度2は,発生確度1と比べると適中率は高いものの捕捉率は低く,見逃し が多いため,⻯巻注意情報は発生確度 1 が現れた地域に対して発表する。→誤
(c) ⻯巻発生確度ナウキャストは,気象ドップラーレーダーによるメソサイクロンの検 出結果を利用している。→正
(d) 気象庁の現業数値予報モデルは,⻯巻やメソサイクロンのような小さなスケール の現象を予測することができないため,⻯巻発生確度ナウキャストは数値予報の結 果を利用していない。→誤
③ (a)正, (b)誤, (c)正, (d)誤
「竜巻発生確度ナウキャスト」は、「レーダー・ナウキャスト」でみれます。
「イラスト図解 よくわかる気象学 専門知識編」の195ページにも記載がありますが、気象庁でも詳しく解説されています。
竜巻発生確度ナウキャストは、竜巻の発生確度を10km格子単位で解析し、その1時間後(10~60分先)までの予測を行うもので、10分ごとに更新して提供します。
引用:気象庁
ついでに「発生確度1と2について、おさらいしよう!
発生確度1とか2って、表にするとわかりやすいです。
発生確度 | 予測の適中率 | 捕捉率 |
---|---|---|
発生確度1 | 1~7%程度 | 80% |
発生確度2 | 7~14%程度 | 50~70% |
- 「適中率」→竜巻などが発生すると言う予測を出した時に、実際に竜巻などの激しい突風が発生した割合
- 「捕捉率」→実際に竜巻などの激しい突風が発生した場合に、事前に竜巻注意情報が発表されていた割合
ややこしいけど、ちゃんと理解できるところまで落とし込んでくださいね!
この問題で問われているのは、竜巻発生確度ナウキャストという予報は、データに気象ドップラーレーダーのメソサイクロン 検出結果を使っているのか?です。
答えは〇!
気象庁によると、気象ドップラーレーダーから、竜巻が発生しそうな「可能性」のデータを使っているとのことです。
竜巻発生確度ナウキャストでは、数値予報の結果を利用しています。
数値予報では、竜巻のようなスケールの小さい予想はできません。
でも竜巻が発生しやすい条件(発達した積乱雲が発生しやすい)の予想はできるわけです。
だから、竜巻発生確度ナウキャストでは、数値予報の結果を利用しています。
ポイントをまとめよう
予報する内容 | 竜巻などの激しい突風の可能性 |
メッシュ | 10km |
何分刻みの予報か | 10分 |
何時間先までの予報か | 1時間先まで |
何分ごとの更新か | 10分毎 |
予報に利用しているもの | ・ドップラーレーダーによるメソサイクロンの検出結果 ・数値予報 |
発生確度1 | 発生確度2 | |
---|---|---|
適中率 | 1~7%程度 | 7~14%程度 |
捕捉率 | 80%程度 | 50~70%程度 |
特徴 | 竜巻などの突風の見逃しが少ない | 竜巻注意情報が発表される |
出てきた用語 | 意味 |
---|---|
確度 | 確かさの度合い |
気象予報士試験第54回・第53回で出題された「予報」についての問題をお伝えしました。
次は第52回・第51回に出題された「予報」についての問題も学習してみましょう!