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気象予報士試験・学科試験「予報業務に関する専門知識」の過去問の中から、最も高頻度で出題される科目「予報」についての問題のみを集めました。
今回は第52回と第51回の試験に出題された問題をまとめています。
ここでは気象予報士試験の学科試験・専門知識で出題される科目「予報」についての過去問(第52回の試験〜第51回の試験)をまとめておさらいできるようになっています。
「予報」に関する問題は、毎回4〜6問出題されます!
だからこの科目の過去問は、ぜひ集中してインプットしていきたいところ。
過去問を通して似たような問題を繰り返し解くことで、学習効率も上がりますよ〜
過去に出題された「予報」に関るる問題をまとめて解くことで、予報に関する知識を更に深めましょう!
※「予報」についてのその他の試験回の過去問まとめはこちらからどうぞ
【学科・専門】「予報」に関する過去問&解説総まとめ!
第52回出題:数値予報の運動方程式について
以下の式は,数値予報で用いられる水平方向の運動方程式である。この式の気象庁の モデルにおける取り扱いについて述べた次の文(a)〜(c)の下線部の正誤の組み合わせとし て正しいものを,下記の1〜5の中から一つ選べ。
(a) 総観規模の現象に対しては,コリオリ力と気圧傾度力がつりあう地衡風平衡近似 がよい精度で成り立つことから,それらの現象を主な予測対象とする全球モデルで は,上式の右辺の第 2 項と第 3 項を計算していない。
(b) スケールの小さい現象ではコリオリ力の効果は小さいことから,それらの現象を 主な予測対象とする局地モデルでは,上式の右辺の第 2 項を計算していない。
(c) 地表面付近における乱流の効果などの,格子間隔より小さいスケールの現象の効果は,上式の右辺の第 4 項の中で計算されている。
④ (a)誤, (b)誤, (c)正
全球モデルでは、(第2項)コリオリ力による変化と(第3項)気圧傾度力による変化を計算してます!
「総観規模の現象に対しては,コリオリ力と気圧傾度力がつりあう地衡風平衡近似 がよい精度で成り立つ」とはいえ、それは理論上の話。
だから「(a) 総観規模の現象に対しては,コリオリ力と気圧傾度力がつりあう地衡風平衡近似 がよい精度で成り立つことから,それらの現象を主な予測対象とする全球モデルで は,上式の右辺の第 2 項と第 3 項を計算していない。」は誤り!
本当のところ、コリオリ力と気圧傾度力が完全に釣り合ってるから計算しなくてOKよ!な〜んてことはありません!!!
気象庁のPDFにも記載されてます。→「全球モデルの改良と展望」
局地モデルで「コリオリ力による変化」を計算してないだと?!
局地予報と言っても、格子点の間隔2kmですからね!
表現するのは格子点間隔の5倍の10kmくらいです!
コリオリ力を無視できるはずもありません〜
だから「(b) スケールの小さい現象ではコリオリ力の効果は小さいことから,それらの現象を 主な予測対象とする局地モデルでは,上式の右辺の第2項を計算していない。」は誤り!
第4項っていうのは「物理過程による変化」のこと。
「物理過程による変化」ってなんのことかというと・・・
格子点間隔よりも小さな現象の効果のこと。
だから「(c) 地表面付近における乱流の効果などの,格子間隔より小さいスケールの現象の効果は,上式の右辺の第 4 項の中で計算されている。」は正しい。
ポイントをまとめよう
全級モデルでは、「コリオリ力による変化」と「気圧傾度力による変化」を計算しているか? | 計算している! |
局地モデルで「コリオリ力による変化」を計算しているか? | 計算している! |
地表面付近における乱流の効果などの,格子間隔より小さいスケールの現象の効果は計算しているか? | 計算している! (物理過程による変化として計算している。) |
出てきた用語 | 意味 |
---|---|
物理過程による変化 | 格子点間隔よりも小さな現象の効果のこと。 |
第52回出題:数値予報モデルの特性について
気象庁の数値予報モデルの特性について述べた次の文(a)〜(c)の正誤の組み合わせと して正しいものを,下記の1〜5の中から一つ選べ。
(a) 全球モデルとメソモデルの降水予測結果が異なるとき,その要因は,水平格子間隔 の違いによる地形性降水の違いや,データ同化に用いられる観測データの違いによる ものであり,積雲対流過程などの物理過程の違いが要因となる割合は非常に小さい。
(b) メソモデルでは,領域外の情報を得るために全球モデルの予測結果を使っているため, 全球モデルに予測誤差がある場合,メソモデルの予測はその誤差の影響を受ける。
(c) 全球モデルでは静力学平衡の近似を用いていることから,鉛直 p 速度は水平方向 の運動方程式と連続の式を用いて求めている。
③ (a)誤, (b)正, (c)正
積雲対流過程などの物理過程の違いも「パラメタリゼーション」として見積もられているので
降水予測結果が異なる場合の要因として、「割合は非常に小さい」ってことはない!
だから「(a) 全球モデルとメソモデルの降水予測結果が異なるとき,その要因は,水平格子間隔 の違いによる地形性降水の違いや,データ同化に用いられる観測データの違いによる ものであり,積雲対流過程などの物理過程の違いが要因となる割合は非常に小さい。」は誤り!
メソモデルは全球モデルの予測結果を使ってる!
だから全球モデルの予測が外れちゃうと、メソモデルも影響を受けちゃう。
だから「(b) メソモデルでは,領域外の情報を得るために全球モデルの予測結果を使っているため, 全球モデルに予測誤差がある場合,メソモデルの予測はその誤差の影響を受ける。」は正しい!
鉛直 p 速度は気圧の時間変化率のことで
- 水平方向 の運動方程式
- 連続の式(質量保存の式)
を使って計算します。
だから「(c) 全球モデルでは静力学平衡の近似を用いていることから,鉛直 p 速度は水平方向 の運動方程式と連続の式を用いて求めている。」は正しい!
ポイントをまとめよう
全球モデルとメソモデルの降水予測結果が異なる要因の中に、積雲対流過程などの物理過程の違いが要因となる割合は大きいか・小さいか? | 大きい(小さくない) |
全球モデルに予測誤差がある場合,メソモデルの予測はその誤差の影響を受けるか? | 影響を受ける! (メソモデルでは全球モデルの予測結果を使ってるから) |
全球モデルでは、鉛直 p 速度は水平方向 の運動方程式と連続の式を使っているか? | 使ってる! |
第52回出題:天気予報ガイダンスについて
気象庁が作成している天気予報ガイダンスについて述べた次の文(a)〜(c)の正誤の組 み合わせとして正しいものを,下記の1〜5の中から一つ選べ。
(a) 天気予報ガイダンスは,数値予報モデルの系統誤差を統計的に補正することがで きるが,初期値の誤差に起因するランダム誤差を補正することは困難である。
(b) カルマンフィルターを用いたガイダンスでは,実況の観測データを用いて予測式 の係数を逐次更新しており,局地的な大雨など発生頻度の低い現象でも適切に予測 することができる。
(c) ニューラルネットワークを用いたガイダンスは,目的変数と説明変数が非線形関係 をもつ場合にも適用できる一方で,予測結果の根拠を把握することは困難である。
② (a)正, (b)誤, (c)正
天気予報ガイダンスは
- 数値予報モデルの系統誤差を統計的に補正することができる
- 初期値の誤差に起因するランダム誤差を補正することは困難
「数値予報モデルの系統誤差」っていうのは、数値予報のくせみたいなもので、例えば地形のモデルが実際とはちょっと違うことだったりします。
ランダム誤差っていうのは、例えば「数値予報の前線の位置ずれ」とか。
他には、「数値予報の天気(晴れ、曇り、雨)が外れてる」、はたまた「数値予報が短時間強雨をまったく表現していない」とか。
そもそも初期値に誤差があると、そりゃあ「くせ」の問題でもないんだし、修正は難しいですよね。
だから「(a) 天気予報ガイダンスは,数値予報モデルの系統誤差を統計的に補正することがで きるが,初期値の誤差に起因するランダム誤差を補正することは困難である。」は正しい!
簡単に言うと、カルマンフィルターを使うガイダンスでは
- 発生頻度の高い現象を予測するのが得意(実況の観測データを用いて予測式 の係数を逐次更新するから)
- 発生頻度の低い大雨や強風などは苦手(たまに大きな数値が組み込まれると、その後の予測の精度が悪くなる)
ややこしいけど、昔から度々出題されてることなので、頑張って覚えましょう!
だから「(b) カルマンフィルターを用いたガイダンスでは,実況の観測データを用いて予測式 の係数を逐次更新しており,局地的な大雨など発生頻度の低い現象でも適切に予測 することができる。」は誤り。
ニューラルネットワークを用いたガイダンス
ニューラルネットワークは、説明変数(数値予報モデルの予測要素)と目的変数(予測したい天気要素)の関係が線形じゃなくてもOK。
また、予測式が複雑なせいで、説明変数と予測結果との関係を把握することが難しいんです。▶︎▶︎▶︎気象庁(第5章 ガイダンス)
だから「(c) ニューラルネットワークを用いたガイダンスは,目的変数と説明変数が非線形関係 をもつ場合にも適用できる一方で,予測結果の根拠を把握することは困難である。」は正しい!
このへんの説明をきっちり書いてる参考書が少ない・・・
というより、試験が参考書の穴をついてくるみたい。
このへんの勉強は難しいけど、過去問を有効に使って頑張ろー!
ポイントをまとめよう
天気予報ガイダンスは,数値予報モデルの系統誤差を統計的に補正できるか? | 系統誤差を補正できる! |
天気予報ガイダンスは,初期値の誤差に起因するランダム誤差を補正することはできるか? | ランダム誤差を補正することは難しい! |
カルマンフィルターを用いたガイダンスでは,局地的な大雨など発生頻度の低い現象でも適切に予測 することができるか? | カルマンフィルターでは,発生頻度の低い現象は適切に予測できない。(不得意) |
ニューラルネットワークを用いたガイダンスは,予測結果の根拠を把握することはできる? | ニューラルネットワークは予測式が非線形なので、説明変数と予測結果との関係を把握することは難しい!(予測式が変化するために予測特性を把握することは難しい) |
出てきた用語 | 意味 |
---|---|
系統誤差 | 偶然じゃない、一定の傾向を持つ誤差のことで 予測値と実測値の差のこと。 「バイアス」とも言う。 |
ランダム誤差 | 規則性がない雑音(ノイズ)的な誤差のこと。 特定の傾向を持たない誤差であるため、軽減することができない。 |
カルマンフィリター(KLM) | 統計的関係式は線形。 MOS方式の代替となる、数値予報による予報値を修正する方法の一つ。 |
ニューラルネットワー(NRN) | 統計的関係式は非線形。 人のようにパターンや重みを学習し、数値予報モデルの変更に柔軟に対応できる手法。 |
第52回出題:台風情報について
気象庁が発表する台風情報に関して述べた次の文(a)〜(c)の正誤の組み合わせとして 正しいものを,下記の1〜5の中から一つ選べ。
(a) 台風の暴風域とは,台風の直接の影響を受ける範囲の中で,10 分間平均風速が 25m/s 以上の暴風が吹いているか,地形の影響などがない場合に吹く可能性のある 領域のことである。
(b) 台風が予報円の中心を通りながら接近しているときは,台風の暴風域に入る確率 は,時間が経過しても変わらないと考えてよい。
(c) 台風の「上陸」とは,台風の中心が北海道,本州,四国,九州の四つの島の海岸 に達した場合をいう。ただし,半島などを横切って短時間で再び海に出る場合やそ の他の島の海岸に達した場合は「通過」という。
② (a)正, (b)誤, (c)正
台風の暴風域の定義は
台風の周辺で、平均風速が25m/s以上の風が吹いているか、地形の影響などがない場合に、吹く可能性のある領域。通常、その範囲を円で示す。
引用:気象庁
「風速」というのは、そもそも「10分間平均風速」のことです。
だから「(a) 台風の暴風域とは,台風の直接の影響を受ける範囲の中で,10 分間平均風速が 25m/s 以上の暴風が吹いているか,地形の影響などがない場合に吹く可能性のある 領域のことである。」は正しい!
台風が予報円の中心を通ってるとして・・・
「台風の暴風域に入る確率」は「時間が経過しても変わらない」???
「台風の暴風域に入る確率」は「暴風警戒域に入る確率」のことかな?
「時間が経過しても変わらない」って、台風の発達や衰退を無視?
だから「(b) 台風が予報円の中心を通りながら接近しているときは,台風の暴風域に入る確率 は,時間が経過しても変わらないと考えてよい。」は誤り!
ものすごく違和感あるので、「この問題文は間違いだ」とすぐわかると思います!
そのまんまなので、暗唱して覚えちゃいましょう!
「台風上陸」の定義 | 台風の中心が 北海道,本州,四国,九州の四つの島の海岸に 達した場合。 |
「台風通過」の定義 | 半島などを横切って 短時間で再び海に出る場合や その他の島の海岸に達した場合。 |
だから「(c) 台風の「上陸」とは,台風の中心が北海道,本州,四国,九州の四つの島の海岸 に達した場合をいう。ただし,半島などを横切って短時間で再び海に出る場合やそ の他の島の海岸に達した場合は「通過」という。」は正しい!
ポイントをまとめよう
台風の暴風域の定義 | 台風の周辺で、平均風速が25m/s以上の風が吹いているか、地形の影響などがない場合に、吹く可能性のある領域。通常、その範囲を円で示す。 |
台風の暴風域に入る確率 は,時間が経過しても変わらない? | 時間の経過と共に変わる! |
台風の「上陸」とは? | 台風の中心が 北海道,本州,四国,九州の四つの島の海岸に 達した場合。 |
台風の「通過」とは? | 半島などを横切って 短時間で再び海に出る場合や その他の島の海岸に達した場合。 |
第52回出題:高温注意情報について
熱中症への注意を促す高温注意情報について述べた次の文(a)〜(c)の正誤の組み合わ せとして正しいものを,下記の1〜5の中から一つ選べ。
(a) 高温注意情報は,市町村単位で発表される。
(b) 高温注意情報が発表された場合,北日本等の一部地域を除き,対象となる地域内の翌日または当日の最高気温が 35°C以上になると予想される。
(c) 高温注意情報は,季節あるいは地域を問わず発表される。
⑤ (a)誤, (b)正, (c)誤
高温注意情報についての〇Xクイズです〜!
先に高温注意情報の詳細をまとめておきますね。↓
高温注意情報 | 詳細 |
---|---|
発表単位 | 関東甲信地方以外は、都道府県別で発表される |
発表時期 | 4月第四水曜日から10月第四水曜日 |
対象となる地域内の 翌日または当日の最高気温 | 35°C以上 北日本や南西諸島では33℃や31℃ |
ではサクサク解いていきます!
高温注意情報は関東甲信地方以外は、都道府県別で発表されるので、「市町村単位」ってのは間違いです。
だから「(a) 高温注意情報は,市町村単位で発表される。」は誤り!
高温注意情報は、35°C以上の猛暑日が予想される時に発表されます。
だから「(b) 高温注意情報が発表された場合,北日本等の一部地域を除き,対象となる地域内の翌日または当日の最高気温が 35°C以上になると予想される。」は正しい!
ただし、北日本や南西諸島では33℃や31℃でも高温注意情報が発表されます。
高温注意情報はは、4月第四水曜日から10月第四水曜日を対象とした期間に発表されます。
「季節・地域を問わず」じゃないです。
だから「(c) 高温注意情報は,季節あるいは地域を問わず発表される。」は誤り!
ポイントをまとめよう
高温注意情報とは | 対象となる地域内の翌日または当日の最高気温が 35°C以上になると予想される。 (※北日本や南西諸島では33℃や31℃でも高温注意情報が発表される。) |
高温注意情報が発表される単位 | 都道府県別で発表される。 (※関東甲信地方以外) |
高温注意情報の発表される季節 | 4月第四水曜日から10月第四水曜日 |
第51回出題:数値予報における客観解析について
気象庁の数値予報における客観解析について述べた次の文(a)〜(c)の正誤の組み合わ せとして正しいものを,下記の1〜5の中から一つ選べ。
(a) 大気の初期値を求める客観解析においては,第一推定値として数値予報モデルの 予報値を用い,それを観測データによって修正する。修正の重みは,観測データの 持つ誤差と第一推定値の持つ誤差の大きさ等を考慮して決めている。
(b) 3 次元変分法は,数値予報モデルで用いられる物理法則を活用し,いろいろな時刻 において観測されるデータを効果的に活用できる一方,数値予報モデルを用いた繰 り返し計算が必要であるため,計算量が膨大になるという欠点がある。
(c) GPS衛星からの電波を地上で受信するときの,電波伝播の速さの違いに基づいて 算出される積算水蒸気量(可降水量)は,気象庁における数値予報モデルの予報変数 ではないことから,客観解析では利用されていない。
③ (a)正, (b)誤, (c)誤
(a)の「 大気の初期値を求める客観解析においては,第一推定値として数値予報モデルの予報値を用い,それを観測データによって修正する。」
は正しい!
第一推定値は数値予報モデルの「予報値」だし
この第一推定値と観測値(周囲の観測結果から内挿された値)から「解析値」が決まります。
「修正の重みは,観測データの 持つ誤差と第一推定値の持つ誤差の大きさ等を考慮して決めている。」も正しくて…
観測データの少ない海上などでは、観測データの誤差が大きくなることを考慮されます。
(b)は「数値予報モデルを用いた繰り返し計算が必要であるため,計算量が膨大になるという欠点がある。」という部分が誤りです。
3次元変分法は、客観解析が行われる定時以外の観測値を、定時の観測値として客観解析する方法です。
4次元変分法と違って時間情報を加味しないので、相対的に計算量は少なくなるというわけです。
この問題は、GNSS(Global Navigation Satellite System)の話ですね。
GNSS解析による大気遅延量から推定した鉛直積算水蒸気量(可降水量)を、数値予報初期値解析に利用しています。
ここで登場するのが(b)で登場した「変分法」!
「変分法」の中でも「4次元変分法」のおかげで、気象庁における数値予報モデルの変数ではない物理量の観測データも、直接客観解析に利用できるのです!と、このpdfに書いてありました( ̄^ ̄)ゞ GNSSによる大気計測と気象学への応用
ポイントをまとめよう
客観解析の格子点値(解析値)を求める際の修正の重み | 観測データの 持つ誤差と第一推定値の持つ誤差の大きさ等を考慮して決めている。 |
3次元変分法と4次元変分法の計算量 | 4次元変分法は計算量が膨大。 相対的に3次元変分法の方が計算量は少ない。 |
GPS衛星を利用した積算水蒸気量と客観解析 | GPS衛星を利用した積算水蒸気量は、直接客観解析に利用できる。 |
出てきた用語 | 意味 |
---|---|
客観解析 | 数値予報において、第一推定値を観測値で修正して解析値を求めること。▶︎▶︎▶︎用語解説 |
第一推定値 | 数値予報モデルの予報値。▶︎▶︎▶︎用語解説 |
客観解析で使う観測値 | 周囲の観測所で観測された値を格子展の位置に内挿した値。▶︎▶︎▶︎用語解説 |
4次元変分法 | 客観解析で格子点の値を決定する方法で、非定時の値も解析に使う。 非定時における値の変化の推移も盛り込む。・・・つまり時間の次元も盛り込む手法。▶︎▶︎▶︎用語解説 |
3次元変分法 | 客観解析で格子点の値を決定する方法で、非定時の値も解析に使う。 非定時における観測値も定時の観測値として客観解析する手法。▶︎▶︎▶︎用語解説 |
第51回出題:数値予報モデルの物理過程について
気象庁の数値予報モデルの物理過程について述べた次の文(a)〜(d)の正誤の組み合わ せとして正しいものを,下記の1〜5の中から一つ選べ。
(a) 大気中における降雪の融解や降水の蒸発の効果は予測結果への影響が小さいこと から,数値予報モデルでは計算されていない。
(b) メソモデルは格子間隔が5kmであり,個々の積雲の振る舞いを十分表現できるこ とから,積雲対流パラメタリゼーションは使われていない。
(c) 積雪の有無は地上気温に大きな影響を与えることから,数値予報モデルにおける 積雪の有無が現実と異なる場合,地上気温の予測における誤差の原因となりうる。
(d) 大気境界層過程では,境界層中にある様々な渦による,運動量・熱・水蒸気の輸 送の効果を扱う。これらの効果は定常的であり日変化は小さい。
④ (a)誤, (b)誤, (c)正, (d)誤
そもそも「物理過程」や「パラメタリゼーション」というワードの意味はわかりますよね?
わからない方はこちら▶︎▶︎▶︎「物理過程」,「パラメタリゼーション」
「降雪の融解」や「降水の蒸発」の効果は計算されます!
だから「(a) 大気中における降雪の融解や降水の蒸発の効果は予測結果への影響が小さいこと から,数値予報モデルでは計算されていない。」は誤り。
予測結果への影響が小さくないってことですね!
パラメタリゼーションで代表的なものと言えば!「積雲対流」じゃー!!!!
台風における積雲対流とかですね。
というわけで「(b) メソモデルは格子間隔が5kmであり,個々の積雲の振る舞いを十分表現できるこ とから,積雲対流パラメタリゼーションは使われていない。」は誤り。
積雪があった場合、なかった場合と比べて地表が太陽のエネルギーを受け取る量が変わってきますから・・・
予測と現実が異なる場合は「気温の予測」の誤差につながります。
だから「(c) 積雪の有無は地上気温に大きな影響を与えることから,数値予報モデルにおける 積雪の有無が現実と異なる場合,地上気温の予測における誤差の原因となりうる。」は正しい!
大気境界層の乱流(乱渦)はパラメタリゼーションで見積もられています。
パラメタリゼーションで見積もられるのは、これらの乱流(乱渦)による効果が小さくないからですね。
だから「(d) 大気境界層過程では,境界層中にある様々な渦による,運動量・熱・水蒸気の輸送の効果を扱う。これらの効果は定常的であり日変化は小さい。」は誤り!
ポイントをまとめよう
物理過程 | |
---|---|
降雪の融解&降水の蒸発は数値予報モデルで計算されるのか? | 計算される! |
積雪の有無が予想と現実で異なる場合、予想される地上気温の誤差に繋がるか? | 誤差に繋がる。 |
大気境界層過程では,境界層中にある様々な渦による効果は大きいか小さいか? | 大きい。 |
出てきた用語 | 意味 |
---|---|
(数値予報の)物理過程 | 格子点間隔よりも小さな現象の効果 |
パラメタリゼーション | 数値予報モデルの格子間隔スケールの現象による効果の見積もりのこと。 |
大気境界層 | 大気の最下層のこと。 |
第51回出題:気温ガイダンスで誤差軽減が期待される具体例について
気象庁の気温ガイダンスによって数値予報の誤差軽減が期待される具体例について述 べた次の文(a)〜(c)の正誤の組み合わせとして正しいものを,下記の1〜5の中から一 つ選べ。
(a) 数値予報のモデル地形の分解能が粗いため,小さな島のある地点がモデル地形で は海となっている。このためその地点の気温の日変化が実際よりも小さく予測され た。気温ガイダンスはこの誤差を軽減することが期待される。
(b) 数値予報のモデル地形で谷を解像できないため,急峻な谷の中のある地点のモデ ルの標高が現実よりも高くなっている。このため,逆転層のないときのその地点の 気温予測が実際よりも低くなった。気温ガイダンスはこの誤差を軽減することが期 待される。
(c) 数値予報モデルが寒冷前線の進行を現実よりも遅く表現したため,前線通過後の 寒気移流によるある地点の気温低下の予測が実際よりも遅くなった。気温ガイダン スはこの誤差を軽減することが期待される。
① (a)正, (b)正, (c)誤
気温ガイダンスによって、数値予報の誤差軽減が期待される具体例について〜
気温ガイダンスは、モデルの不完全さによる誤差の補正をしています。
だから「(a) 数値予報のモデル地形の分解能が粗いため,小さな島のある地点がモデル地形で は海となっている。このためその地点の気温の日変化が実際よりも小さく予測された。気温ガイダンスはこの誤差を軽減することが期待される。」は正しい!
(a)の繰り返しになりますが、数値予報モデルの地形の分解能が実際の地形に追いついてないので、細かい谷を表現できないこともあります。
だから「実際の地形の標高」より「モデルの地形の標高」の方が高いと、実際の気温より低い気温が予想されるってことになります。
でもこれって、予想するたびに起きる現象ですから、誤差が軽減するように気温ガイダンスは行われてるわけですよ。
というわけで「(b) 数値予報のモデル地形で谷を解像できないため,急峻な谷の中のある地点のモデルの標高が現実よりも高くなっている。このため,逆転層のないときのその地点の 気温予測が実際よりも低くなった。気温ガイダンスはこの誤差を軽減することが期待される。」は正しい!
数値予報で予想された前線の位置が、実際の前線の位置とずれているっていうのは、毎回起きるパターンでもないですよね。
これはいわゆる「ランダム誤差」って言います。
ガイダンスでは、この「ランダム誤差」の修正はできないんです。
だから「(c) 数値予報モデルが寒冷前線の進行を現実よりも遅く表現したため,前線通過後の 寒気移流によるある地点の気温低下の予測が実際よりも遅くなった。気温ガイダン スはこの誤差を軽減することが期待される。」は誤り!
ポイントをまとめよう
ガイダンスでは、モデルの地形による誤差を修正できるか? | 修正できる! |
ガイダンスでは、予想された前線の位置が実際の前線の位置とずれていた場合、修正できるか? | 修正できない! 前線にまつわる気温の修正もできない。 |
ガイダンスではランダム誤差を修正できるか? | 修正できない! |
出てきた用語 | 意味 |
---|---|
ランダム誤差 | 規則性がない雑音(ノイズ)的な誤差のこと。 特定の傾向を持たない誤差であるため、軽減することができない。▶︎▶︎▶︎ランダム誤差についてもっと詳しく! |
第51回出題:雷ナウキャストについて
気象庁が発表している雷ナウキャストについて述べた次の文(a)〜(d)の正誤について, 下記の1〜5の中から正しいものを一つ選べ。
(a) 雷ナウキャストは,雷の激しさや雷の可能性を1km格子単位で解析し,1時間後 まで予測するもので,10 分毎に更新される。
(b) 雷の解析は,雷監視システムによる雷放電の検知,気象レーダー観測などを基に している。
(c) 雷の激しさや雷の可能性は活動度1〜4で表される。活動度1は,現在雷は発生し ていないが,今後落雷の可能性があることを示す。
(d) 雷の予測については,雷雲の移動方向や雷雲の盛衰の傾向を考慮している。
⑤ すべて正しい
雷ナウキャストについて〜
雷ナウキャストは、雷の激しさや雷の可能性を1km格子単位で解析し、その1時間後(10分~60分先)までの予測を行うもの。
雷ナウキャストは、雷の激しさや雷の可能性を1km格子単位で解析し、その1時間後(10分~60分先)までの予測を行うもので、10分毎に更新して提供します。
引用:気象庁
だから「(a) 雷ナウキャストは,雷の激しさや雷の可能性を1km格子単位で解析し,1時間後 まで予測するもので,10 分毎に更新される。」は正しい!
雷の解析は、雷監視システムによる雷放電の検知及びレーダー観測などを基にして活動度1~4で表します。
引用:気象庁
だから「(b) 雷の解析は,雷監視システムによる雷放電の検知,気象レーダー観測などを基に している。」は正しい!
引用:気象庁
だから「(c) 雷の激しさや雷の可能性は活動度1〜4で表される。活動度1は,現在雷は発生し ていないが,今後落雷の可能性があることを示す。」は正しい!
予測については、雷雲の移動方向に移動させるとともに、雷雲の盛衰の傾向も考慮しています。
引用:気象庁
だから「(d) 雷の予測については,雷雲の移動方向や雷雲の盛衰の傾向を考慮している。」は正しい!
ポイントをまとめよう
雷ナウキャストの格子点単位と更新頻度 | 格子単位は1km 1時間後(10分~60分先)までの予測を10分毎に更新して発表。 |
雷の解析 | 雷の解析は、雷監視システムによる雷放電の検知及びレーダー観測などを基にしている。 |
活動度の意味 | ▶︎▶︎▶︎活動度の意味まとめはこちら |
雷の予測で考慮していること | 雷雲の移動方向に移動させるとともに、雷雲の盛衰の傾向も考慮している。 |
活動度 | 意味 |
---|---|
活動度1 | 雷可能性あり (現在は神アナリは発生していないが、今後落雷の可能性がある。) |
活動度2 | 雷あり (雷光が見えたり雷鳴が聞こえる。落雷の可能性がたかくなっている。) |
活動度3 | やや激しい雷 (落雷がある。) |
活動度4 | 激しい雷 (落雷が多数発生している。) |
気象予報士試験第52回・第51回で出題された「予報」についての問題をお伝えしました。
第50回・第49回で出題された「予報」についての問題はこちら