第65回気象予報士試験実技試験解説

学科専門~過去問私的解説&考察~第65回気象予報士試験・問6

6:天気予報ガイダンス

気象庁が現在運用している天気予報ガイダンスについて述べた次の文(a)~(d)の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の①~⑤の中から1つ選べ。

(a) 天気予報ガイダンスの主な役割として、数値予報モデルによる予測値を補正することや、数値予報モデルが直接予測していない要素を予測することが挙げられる。

(b) 降水、気温、風のガイダンスでは、数値予報結果に含まれている系統誤差とランダム誤差の両方を統計的に補正することができる。

(c) 数値予報モデルでは海陸の区別が実際と一致していない格子点がある。降水、気温、風のガイダンスは、海陸の区別の不一致に起因する数値予報モデルの予測誤差を低減することができる。

(d) 数値予報モデルの改良等によりその予測特性が変化した場合でも、カルマンフィルタに基づく天気予報ガイダンスでは、予測と観測を繰り返すことでガイダンスに用いる予測式の係数が変化するので、数値予報モデルの変更に柔軟に対応することができる。

② (a)正,(b)誤,(c)正,(d)正

はれの
はれの

「数値予報モデルの『クセ』を直し、私たちが知りたい具体的な天気に変換する技術」、天気予報ガイダンスについての問題です。

(a)天気予報ガイダンスの主な役割

ガイダンスの主な役割は以下の2つ。

  • 数値予報が予測していない要素を作成する
  • 数値予報の系統誤差を補正する

いわば、数値予報という「生の材料」を、ガイダンスという「調理工程」を経て、私たちが使いやすい「天気予報という料理」に仕上げているイメージです。

よって(a) の「天気予報ガイダンスの主な役割として、数値予報モデルによる予測値を補正することや、数値予報モデルが直接予測していない要素を予測することが挙げられる。」は正しい!

参考資料:数値予報解説資料集の第1章基礎編「ガイダンス」 – 気象庁

(b)系統誤差とランダム誤差の補正

ガイダンスができるのは「過去のデータから見える『いつものズレ』を直す」ことまでです。

ランダム誤差(その時々の偶然のズレ)については、統計的に「平均的な値」に丸めて極端なハズレを目立たなくさせることはできても、その誤差自体を「なかったこと」にはできません。

特に以下のようなケースでは、ガイダンスの限界が浮き彫りになります。

  • 過去に例がない異常気象: 統計データがないため、補正がうまく働きません。
  • 急激な気圧配置の変化: ランダムなゆらぎが大きくなり、計算が追いつかなくなります。

結局、「どれくらいランダムにズレそうか(予測のバラつき)」を把握するために、最近ではアンサンブル予報の結果を組み合わせて、「予測の信頼度」として提示する工夫がされています。

よって(b)の「降水、気温、風のガイダンスでは、数値予報結果に含まれている系統誤差とランダム誤差の両方を統計的に補正することができる。」は誤り!

(c)海陸の不一致による数値予報モデルの予測誤差

降水、気温、風のガイダンスによって、海陸の区別の不一致に起因する誤差を低減することは可能です。

これはガイダンスが持つ「地点ごとの統計的補正」という機能が、まさにそのズレを埋める役割を果たすからです。

ただし、モデルが「海」と認識していることで降水域そのものが大きくズレてしまっている場合(ランダムな位置誤差)などは、ガイダンスでも修正しきれないことがあります。

このように、ガイダンスはモデルの「解像度の限界」を統計的な知恵で補っているわけですね。

よって(c)の「数値予報モデルでは海陸の区別が実際と一致していない格子点がある。降水、気温、風のガイダンスは、海陸の区別の不一致に起因する数値予報モデルの予測誤差を低減することができる。」は正しい!

(d)カルマンフィルタに基づく天気予報ガイダンス

カルマンフィルタを用いたガイダンスの最大の強みは、その「自己学習機能(逐次更新)」にあります。

数値予報モデルが改良されて予測の特性(クセ)が変わっても、カルマンフィルタは柔軟に対応します。

カルマンフィルタは常に「今のモデルの出し方のクセ」を監視して調整し続ける、賢いチューナーのような役割を果たしています。

よって(d)の「数値予報モデルの改良等によりその予測特性が変化した場合でも、カルマンフィルタに基づく天気予報ガイダンスでは、予測と観測を繰り返すことでガイダンスに用いる予測式の係数が変化するので、数値予報モデルの変更に柔軟に対応することができる。」は正しい!

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