メソアンサンブル予報とは、アンサンブル(集団)予報という数値予報の手法を用いて、メソモデルの不確かさや信頼度などの付加情報を得るために、メソモデルと同じ領域を対象に計算された予測値のこと。
簡単に言うと、通常の数値予報は一つの予測結果(決定論的予報)を出すのに対し、アンサンブル予報は、初期値(計算開始時の大気の状態)やモデルの物理過程にわずかな誤差(摂動)を与えて、複数の予測計算(アンサンブルメンバー)を行い、その予測結果のばらつきから、現象の発生確率や予測の信頼度を評価する手法です。
メソアンサンブル予報は、特に数時間から1日先の大雨や暴風などの災害をもたらす現象の予報に用いられ、気象庁では水平解像度5kmメッシュのメソスケールモデル(MSM)を運用し、防災気象情報や天気予報の作成支援に活用しています。
気象庁では、メソアンサンブル予報システム(MEPS)を運用しており、21メンバーの計算を実施しています。これにより、決定論的なメソ数値予報モデルGPV(MSM)に対して、複数の客観的な予測結果を得ることで、気象現象の発生を確率的に捉えることが可能になっています。
MEPSから得られるデータには、海面更正気圧、風、気温、積算降水量、日射量などの要素が含まれ、防災気象情報や航空気象予報などに活用されています。
メソアンサンブル予報は、その特性(予測の不確実性や確率情報が得られること)から、特に防災に関わる気象情報の作成や、より詳細な予報が求められる分野で具体的に活用されています。
以下に主な用途を挙げます。
- 大雨、暴風、竜巻などの災害をもたらす現象の予測:
- 特定の降水強度(例: 1時間降水量50mm以上)や風速(例: 20m/s以上)の出現確率を算出することで、気象庁が発表する警報・注意報の発令判断の重要な材料となります。
- アンサンブルメンバーのばらつきを見ることで、ある地域で大雨や暴風が発生する可能性の高さや、どの程度の強さになるか、どの範囲に影響が及ぶかを詳細に評価できます。
- 特に、局地的な豪雨や線状降水帯の発生予測において、複数のシナリオを提示することで、その発生可能性をより的確に判断し、防災対応に役立てられています。
- 短期予報(数時間先~1日先)の精度向上:
- 従来の決定論的予報では捉えきれない、小さなスケールの現象や、予測が難しい突発的な現象について、アンサンブル予報が提供する確率情報によって、よりきめ細やかな予報が可能になります。
- 防災対応・避難判断の支援:
- 自治体や防災機関が、住民への避難勧告や指示を出す際の判断材料として活用されます。例えば、「何時間後に、どの程度の確率で、どの地域に、どのくらいの雨が降る可能性があるか」といった具体的な情報を提供することで、早期の意思決定を支援します。
- 航空機の運航は気象条件に大きく左右されるため、メソアンサンブル予報は、空港周辺の風、降水、視程、雷雨などの予測に利用されます。
- パイロットや航空管制官が、フライトプランの決定や、離着陸の判断、迂回ルートの検討などを行う上で、予測の信頼度や発生確率の情報は非常に重要です。
- 再生可能エネルギーの出力予測:
- 太陽光発電の発電量は日射量に、風力発電の発電量は風速に大きく依存します。メソアンサンブル予報を用いることで、これらの気象要素の予測の不確実性を考慮した発電量予測が可能になり、電力系統の安定運用に貢献します。
- 電力需要予測:
- 気温や湿度などの気象要素は、冷暖房の需要に直結します。メソアンサンブル予報を活用して、気温予測の不確実性を評価することで、より正確な電力需要予測が可能となり、発電計画の最適化に役立ちます。
- 農業: 降水量や気温の確率予測は、作物の生育管理や収穫時期の判断に役立ちます。
- 建設業: 強風や大雨の確率予測は、工事計画の立案や作業の中止判断に利用されます。
- イベント開催: 野外イベントの開催可否判断や、来場者の安全確保のための情報として活用されます。
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