順圧不安定とは、水平方向の風速の差(水平シアー)が非常に強い場所において、その流れの偏りを解消しようとして渦(擾乱)が発生・発達する現象のことです。
「順圧」とは、大気の温度分布が一様で、等圧線と等温線が平行(または温度勾配がない)な状態を指します。
そのため、エネルギー源は温度差ではなく、背景にある流れ(風)の運動エネルギーとなります。
メカニズムと特徴
傾圧不安定との最大の違いは、「高さ方向の変化を必要としない」点です。
- エネルギー源: 強い風と弱い風の境目にある「水平シアー(風の切り替わり)」が持つエネルギーです。
- 構造: 上空へ行っても気圧の谷の軸が傾かず、垂直に立っています。
- 発生の条件: 「絶対渦度の水平勾配の符号が反転する場所があること」が必要とされます。簡単に言うと、「風速の急激な変化ポイントがあるか」が鍵です。
傾圧不安定と順圧不安定の比較表
| 特徴 | 傾圧不安定 | 順圧不安定 |
|---|---|---|
| 主なエネルギー源 | 南北の温度差(有効位エネルギー) | 風速の水平差(運動エネルギー) |
| 気圧の谷の軸 | 上空に向かって西に傾く | 上空まで垂直 |
| 主な現象 | 中緯度の温帯低気圧 | 台風の発生初期、熱帯収束帯の渦 |
| 大気の状態 | 等圧線と等温線が交差する | 等圧線と等温線が平行 |
覚え方のコツ
- 傾圧 = 「傾」いた「温度(気圧)」の構造が必要。(温度差が大事!)
- 順圧 = 構造が「順」当に垂直。(風速の差だけでOK!)
気象学では、中緯度の低気圧を考えるときは「傾圧」、熱帯地方や非常に高い上空の流れを考えるときは「順圧」という言葉がよく出てきます。
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