傾圧不安定波とは、南北の温度差(水平温度傾度)が大きい場所において、その温度差を解消しようとして発生する大気の波のことです。
この波が発達することで、北側の冷たい空気と南側の暖かい空気が入れ替わり、位置エネルギーが運動エネルギーに変換されます。これが地上では「温帯低気圧」として発達します。
なぜ「不安定」なのか?(メカニズム)
大気が「傾圧(けいあつ)」であるとは、等圧線と等温線が交差している状態を指します。この状態を分かりやすく図解のイメージで説明すると以下のようになります。
成長のステップ
- 南北の温度差: 日本付近(中緯度)では、北に寒気、南に暖気があり、上空では強い西風(ジェット気流)が吹いています。
- 擾乱(じょうらん)の発生: 何らかのきっかけで、この西風の流れに「蛇行」が生じます。
- エネルギーの変換: 蛇行によって、冷たい空気が南下(降下)し、暖かい空気が北上(上昇)します。
- 重いものが下がり、軽いものが上がるため、大気全体の「有効位エネルギー」が減少します。
- 低気圧の発達: 減少したエネルギーが風の強さ(運動エネルギー)に変わり、渦が強まって低気圧が急速に発達します。
構造上の大きな特徴:軸の傾き
試験や学習において最も重要なポイントは、「高度による気圧の谷の軸の傾き」です。
- 西への傾き: 傾圧不安定波が発達するためには、上空の気圧の谷が、地上の低気圧の中心よりも西側に位置(西に傾斜)している必要があります。
- この傾きがあることで、上空の暖気内流と寒気内流が効率よく入れ替わり、低気圧がさらに発達します。
ポイント
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発生場所 | 中緯度の偏西風帯(南北の温度差が大きい場所) |
| エネルギー源 | 南北の温度差による「有効位エネルギー」 |
| 結果 | 温帯低気圧の発達、熱の輸送(南北の温度差の解消) |
| 必須条件 | 気圧の谷の軸が上空に向かって西に傾いていること |
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