学科一般~過去問私的解説&ヒント~第53回気象予報士試験

気象予報士試験過去問解説

ここでわかること

令和2年1月の第53回気象予報士試験の学科一般の晴野(はれの)だったらこう解く!という考え方や知識を共有します。

次に似たような問題を解く時の、「ヒント」となるよう目指してます!!!

問1から順番に見る

はれの
はれの

この記事は、令和2年1月の第53回気象予報士試験の学科一般の問題と解答を持っている人向けの内容です。

※私個人の試験問題を解く時の思考例です。(気象業務支援センターとは関係ございません。)

もし第53回気象予報士試験の学科一般の問題と解答を持っていなければ、まずこちらでダウンロードしてください。

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第53回気象予報士試験の学科試験・専門知識の私の解き方は、こちらで解説しています。↓

問1:大気の構造についての問題

問題文

大気中の水蒸気の密度をρv,水蒸気を除いた空気(乾燥空気)の密度をρd とするとき, ρd とρv の鉛直分布について述べた次の文(a)~(c)の下線部の正誤の組み合わせとして 正しいものを,下記の1~5の中から 1 つ選べ。

(a) ρdは,対流圏内では鉛直方向にほぼ一定とみなすことができる。

(b) 500hPa 等圧面上のρd は,熱帯域の方が極域よりも小さい傾向がある。

(c) ρvは大気下層の方が大きく,地表付近ではρvはρdよりも大きい。

④ (a)誤,(b)正,(c)誤

大気中の

  • 水蒸気の密度
  • 乾燥空気の密度(水蒸気を除いた空気)

についての問題です。

まず「密度=kg/m3(単位体積あたりの重さ)」なのを、意識してください。

一つずつヒントを書きます!

(a) 対流圏内での乾燥空気の密度

乾燥空気(水蒸気を除いた空気)って、対流圏の上層ほど密度は小さいですよね!

(b) 等圧面の熱帯域と極域の空気の密度

気圧って、そこの上にある空気の重さのことですよね。

だから「気圧=密度」じゃない。

おまけに熱帯域は極域に比べて、対流圏界面の高度が高い!

ということは〜

そもそも対流圏の乾燥空気の密度は、極域より熱帯域の方が小さい。

そして500hPaって、対流圏の真ん中辺。

じゃあ等圧面だとしても、乾燥空気の密度は熱帯域の方が小さいですよね!

(c) 水蒸気ってどこで密度高いの?!

問題文では、水蒸気の密度って

  • 大気下層で密度高いよね!→〇!
  • 地表面近くで、乾燥した空気より密度高いよね!→それって、どんな空気ですか?!

基本的に雲ができて雨が降るのは対流圏だし、水蒸気の多くは対流圏にあるから、「大気下層で水蒸気の密度が高い(水蒸気が多い)」ですよね。

はれの
はれの

では地表近くでの

  • 水蒸気の密度
  • 乾燥空気の密度

を比べるために、分子量を思い出してください。

  • 水蒸気の分子量→1モルあたり18g
  • 乾燥空気の分子量→1モルあたり29g

水蒸気の密度が乾燥空気の密度より高くなるためには、水蒸気が乾燥空気の約2倍以上の分子が必要なんですね。

だから「水蒸気の密度」が「乾燥空気の密度」より大きくなるなんて、ないことですよね。

問2:大気の熱力学(温位と相当温位は知ってるよね?問題)

問題文

大気中の空気塊の温位と相当温位について述べた次の文(a)~(d)の正誤の組み合わせ として正しいものを,下記の1~5の中から 1 つ選べ。なお,空気塊の温度,温位, 相当温位の単位は K であり,温位及び相当温位の基準気圧は 1000hPa である。

(a) 乾燥空気塊の温位は,どのような気圧においてもその空気塊の温度よりも高い。

(b) 湿潤空気塊の温位は,その空気塊の相当温位よりも常に低い。

(c) 乾燥空気塊が断熱的に上昇するとき,その空気塊の温位は高度にかかわらず一定 である。

(d) 飽和した空気塊が水蒸気を凝結させながら断熱的に上昇するとき,その空気塊の 温位は上昇するとともに高くなる。

③ (a)誤,(b)正,(c)正,(d)正

大気の熱力学で登場する「温位」と「相当温位」についての問題です。

  • 温位→その空気を1000hPaまで断熱的に移動させた時の絶対温度(K:ケルビン)。
    エマグラムで乾燥断熱線に沿って1000hPaまで移動すると値が出ますよね。
  • 相当温位→その空気の温位と、その空気に含まれる水蒸気の潜熱を足した絶対温度(K:ケルビン)。

温位について考える時のポイントは、1000hPaってところ。

それと、「相当温位=温位+水蒸気の潜熱」って覚えてればOK!

(a)乾燥空気の温位ってどう変わる?

乾燥空気塊の「乾燥」って言葉に騙されそうになりますが!

温位は「1000hPaに断熱変化させた時の絶対温度」なので、「1000hPa限定」です。

(b)湿潤空気の温位と相当温位ってどうなる?

乾燥した空気だろうと、水蒸気を含む湿潤空気だろうと、「温位」と「相当温位」の定義は変わりません〜

だから 相当温位=温位+水蒸気の潜熱 なので、相当温位は温位以上!

湿潤空気は水蒸気を持ってるので、相当温位が温位より高くなるのはわかりますよね。

(c)温位と高度、関係ないよね?

温位っていうのは「1000hPaでの絶対温度」って決まってるので、空気塊のが高いところに行こうが、低いところに行こうが変わりませんね!

(d)水蒸気が凝結すると潜熱で空気を温めるよね!

空気塊の水蒸気が凝結する時、気体だった水は液体の水になります。

気体から液体に変わる時、持っていたエネルギー(潜熱)を手放して空気を温めます。

ということは、空気の温度が上昇→そのまま1000hPaまで移動させたら、温位も上がってる!

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問3:中層大気の東西風〜夏半球&冬半球の違いを問う!

問題文

東西風の高度-緯度断面図について述べた次の文章の空欄(a)~(c)に入る適切な語句の 組み合わせを,下記の1~5の中から 1 つ選べ。

図(※ダウンロードした問題PDFをご覧ください。)は,経度平均した(a)における東西風の高度-緯度断面図である。この図に対応 する温度風の関係から,南半球中緯度の高度 20~60km では南極側ほど(b)である と推測される。この高度で南極側ほど(b)であるのは,(c)が大きいためである。

① (a)1月,(b)高温,(c)オゾンの紫外線吸収に伴う加熱,

中層大気(成層圏と中間圏)の平均的な東西風についての問題です。

はれの
はれの

私はこう解きました!

(a)冬半球では西風・夏半球では東風が卓越してる

グレーに影をつけられたところが東風ってことなので、白いところは西風です。

「冬半球の中層大気では西風が卓越してる」ってことを覚えていれば、問題の図から北半球が冬なのがわかります。(о´∀`о)

(b)南半球では温度風は暖気側を左に見て吹く

夏半球の中層大気の特徴として「温度が高い」って暗記してる方も多いと思いますが…問題には「温度風の関係から」と書かれています。

はれの
はれの

温度風の関係」とは

温度の水平傾度のために、地衡風が高度と共に変わる(強くなる)こと!

☆ヒント☆
  • 上空ほど東風が強くなっている。→温度の水平傾度が大きい。→温度の高い方から低い方へ風が吹くはず。
  • 南半球はコリオリの力が左向きに働く。→東風が吹いているということは、極側が高温・赤道側が低温。

この「温度風の関係」の話は

  • 「オンスク.jp」の6大気の運動(6-10温度風の関係)
  • 「イラスト図解 よくわかる気象学」の252ページ
  • 「一般気象学」の146ページ

で学べます。

(c)成層圏界面で気温が高い理由はオゾンと紫外線のせい!

成層圏の温度は、高度と共に高くなります。

はれの
はれの

温度が高くなるのは、太陽からの紫外線のせいです。

ではなぜ高度と共に温度が高いのか、その理由は2つ。

  • 上空ほど紫外線が多いから。
  • 上空ほど空気の密度が小さいから。

紫外線はオゾンに吸収されるので、上層ほど多いわけで。

同じエネルギーを加えた場合、空気の密度が小さい方が温度が上がりやすい。

そんな理由で、成層圏の上層ほど、温度が高いんです。

問4:大気における放射〜レイリー&ミー散乱を問う!

問題文

大気中の粒子による電磁波のレイリー散乱とミー散乱を比較した表の空欄(a)~(c)に 入る適切な語句の組み合わせを,下記の1~5の中から 1 つ選べ。

② (a)小さい,(b)短い,(c)空気分子による太陽光の散乱

はれの
はれの

次の表にあることを知ってれば解けますね。

散乱
レイリー散乱電磁波の波長>>>粒子の半径
ミー散乱電磁波の波長≒粒子の半径

空が青くて雲が白くて、朝焼け夕焼けが赤い理由ですよね!

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問5:大気の熱力学(式も計算も不要〜♪)

問題文

図は,地点 A,B,C における地上(0m)から高度 1000m までの気温の鉛直分布を示して いる。
各地点の高度 1000m の気圧がいずれも等しいとき,地点 A,B,C における地上の 気圧 P A,P B,P C の大小関係として正しいものを,下記の1~5の中から 1 つ選べ。
ただし,いずれの地点でも大気は静力学平衡の状態にあり,重力加速度は一定で水蒸気の 影響を無視できるとする。
また,図中の点 T 1,T 2 は,高度 1000m 及び高度 H (m)での 気温(各図とも同じ値)を示している。

⑤  PC<PB<PA

A,B,Cの3地点での気圧の大小を比べますが・・・

はれの
はれの

この問題、ビジュアル要素だけで解けます!

与えられている情報は

  • 高度1000mでの地点A,B,Cの気圧は同じ
  • 高度1000mでの地点A,B,Cの気温は同じ
  • 高度Hmでの地点B,Cの気温は同じ。
  • 高度0mでの地点A,Bの気温は同じ。
はれの
はれの

1番のポイントは、3地点での高度1000mの気圧と気温が同じってとこ!

ということは、高度1000m以下の気温で地上の気圧が決まるってことですよね。

そして気温が高い方が空気の密度が小さいので、気圧は低くなります。

気温が高い=気圧が低い

だから問題に出てたグラフに色付けしてみれば、ほーら簡単!

  • 右側の色付けした部分の面積が大きい→気温が低い→気圧が高い
  • 右側の色付けした部分の面積が小さい→気温が高い→気圧が低い

面積を比べるのは、グラフの右側でも左側でもOK。

自分が考えやすいようにするといいと思います!

で、上の2つの図を重ねてみると、この通り!

青い方が面積が小さいから

赤の気圧青の気圧

と、なります!

▼問6以降は次のページをご覧ください。

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